- 髪
- 黒
- 瞳
- 白
- 肌
バックボーンまとめ
・父親は日本人、ゆきずりで生まれて戦場育ち、初めての記憶は銃を握る記憶。
・独自の傭兵集団に所属、難民等の無辜の人々を守ることが多く、必要とあれば戦う程度だった。
・敵の策にハマり、守ってきた無辜の人々に裏切られ、仲間を失い、覚醒、その場にいた全てを殺す。
・全てを喪くし、FHに所属、救いの願いで手に入れた力で、望まれるままに殺した。
・FHセル解体に伴い日本に渡る、以降傭兵として活動。
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久しぶりに、正面から幼い子供の顔を見た気がする。
子供とは、無辜の代表。
あの頃の想い出の中にも、守ってきた記憶の中にも、何十何百と同じように笑う顔がある。
そうだ、あの頃が輝いていたとかそういう訳では決してないが、今よりも前を向いて生きていた。
あの時から、手からは全てが零れ落ち、比べてひどく汚れたように思う。
今更、それらを取り返せるとも、あの時の戻れるとも到底思っていない。
それでも、前を向いて生きていきたかった。
この力を手にして、初めて救おうと考えた。
少しでも、前を向けて生きていけるように。
記憶の仲間に、想い出の中の人々に、
あの子供の笑顔に誓って/再び笑えるように。
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↓以下読む必要はなし
戦争なんてどこにでもある話。
俺と親父がいた傭兵部隊の仕事は、そんなどこにでも生まれることとなる難民や孤児たちを守ることだった。
決して綺麗な仕事だけではなかったが、人を守り感謝されることには誇りがあった。
戦うだけが仕事ではなかった。時には双方に矛を収めさせることも仕事だった。
各地を転々とし、そういったことを続けて数年。
あの日、全てが変わった。
簡単に言えば、守るべき無辜の人々に紛れて敵の内通者が居た。
敵からすれば、自分たちは戦争の火種を抑え込んでいる厄介な奴らだ。
自分たちが外に出て、敵と相対しているときに全てが始まった。
ゲリラ部隊が疎開街に現れて襲撃された。
外の敵は、手薄にするための罠だった。
敵を無視して、俺が疎開街へ一足先に戻ることになった。
辿り着いた疎開街からは炎があがっていた。
警護のために残っていた部隊の残りは、多勢に無勢、全員殺されていた。
逃げ惑う人々を守りつつ疎開街の外へと誘導する。
屍の上を歩きながら。
疎開街の中心部に行けば生き残った人々と、襲ったであろう敵が居た。
敵はニヤニヤと卑下た笑いを向け、生き残った人々はこちらに銃を向けていた。
何かの冗談だろうと思ったが、これが現実だった。
内通者どころの話ではなかった。
膝から崩れ落ちたような感覚、立ち尽くすことしかできなかった。
思考能力さえ奪われるような、強い倦怠感と痛み。
だが、もう自分に道はないことだけはわかった。
銃声が響く。
強烈な炎で、目の前が眩む。目を強く閉じて痛みに耐える。
五感が支配されて、だんだんと曖昧になっていくような感覚。
…、不思議だ。
何故、痛みが来ない。
目を開けると、遅れてきていた部隊の面々が血を流し膝をついていた。
肩から胴体、顔、足──無事な箇所を探すのが難しいほどに。
銃が再び構えられる、まだ倒れないしぶとい小隊の息の根を止めるため。
最後まで盾として立ち上がったのは、父親だった。
何の小説の一節だったろうか。
I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes
何も見たくはなかった。
何も聞きたくはなかった。
言葉さえも出したくはなかった。
or shoud I ?
違う、そんなことはできなかった。
「なんで…」
──撃て、と。号令に従って数えるのも馬鹿らしくなるほどの矢が貫いて、皆を殺した。
ただ一人、自分一人だけを守って。
頭痛がする。
目の奥が痛い。
体の奥から湧き上がってくるものを感じた。
風が、吹く。
銃声が聞こえた。
何も聞こえないはずなのに、響く。
暴風が弾を巻き上げる。
何も見えないはずなのに、分かる。
慟哭を上げる。
言葉も出ないはずなのに、叫ぶ。
嵐が、炎を巻き上げる。
歩く。
あの襲撃から数日が経った。
荷物を抱えた生き残った人々とすれ違う。大規模な戦闘により、ここにはいられなくなったためだ。
人々と遠巻きにすれ違いながら、歩く。
あの戦闘の折、強い負荷がかかったためか、髪は白く抜け落ちた。
自分が戦闘して唯一の生き残りであることも加え、突然の変容に不気味がられた。
街の中心へと、歩く
あの戦闘のまま、放置されていた。
敵も味方も、あの嵐で全てが焼け落ちた。
街の中心部に見かけたことのない、知らない奴らがいる。
こちらをまっすぐと見ている。
否、観察されている。
血の匂い、しかし戦場では嗅いだことのない異質な匂い。
けれど、不思議と親近感のある匂いだ。
奴らは自分のことを誘いに来たといった。
超常の力に目覚めし者、"オーヴァード"を集めていると。
俺はそのオーヴァードとして覚醒をしたらしい。
奴らは自分たちのことを、"FH"と名乗っていた。
"その力は素晴らしい!是非我らの仲間に入って欲しい!"と言われる。
誰も彼も、俺の力しか見ない、薄っぺらい勧誘文句だ。
それでも今の俺には頼れる居場所がない、渡りに船だった。
FHに入ってからは、誰か守るでなく誰かを殺すことが仕事になった。
戦う場は同じでも、無駄な血は流れ、手は薄汚れた。
程なくして、日本へと移ることになった。
理由は単純、所属していたFHセルが戦場で壊滅的な被害を被った。
セルは合併吸収され、俺は実質的には解雇、半分くらいはFH専属の傭兵という立場に収まった。
日本のような国家の枠の中で傭兵だけをやっているわけにもいかず、とりあえずは年頃通り学校に通うことにした。
人はハヌマーンを、"最速"のシンドロームと呼ぶ。
あの日、俺は間に合わなかった。
俺がもっと速ければ、あの時もっと速くに辿り着いていれば、残っていた部隊と合流して、敵を蹴散らせただろうか。
その願いで、俺がこの力に目覚めたとするならば、
今度は取りこぼさない。