ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

サラ・トリニティ - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

“トリニティ”サラ・トリニティ

プレイヤー:輝美店長

貴方のために、祈りを」

年齢
17
性別
星座
身長
164cm
体重
55kg
血液型
ワークス
UGNエージェントA
カヴァー
修道女
ブリード
クロスブリード
シンドローム
ノイマン
バロール
HP最大値
27
常備化ポイント
10
財産ポイント
4
行動値
9
戦闘移動
14
全力移動
28

経験点

消費
+60
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自
待ち望まれた子
経験
消せない傷
邂逅
幼子
覚醒 侵蝕値
生誕 17
衝動 侵蝕値
闘争 16
その他の修正9
侵蝕率基本値42

能力値

肉体1 感覚2 精神5 社会2
シンドローム0+0 シンドローム0+1 シンドローム3+2 シンドローム1+1
ワークス1 ワークス ワークス ワークス
成長0 成長1 成長0 成長0
その他修正 その他修正 その他修正 その他修正
白兵+9=11 射撃 RC1 交渉
回避1 知覚 意志 調達3
運転: 芸術: 知識:レネゲイド2 情報:UGN5
知識:暗殺2 情報:裏社会3

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 秘密兵器 EXパスファインダー取得
織田 正義 好意 不信感 貴方が隣にいてくれるだけで、私は進めます
アリオン 信頼 恐怖 私を家族と、思ってくれますか?

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
コンセントレイト 3 2
CT値-[Lv]
コントロールソート 1 2
【精神】置換
コンバットシステム 3 3
ダイス+[Lv+1]
瞬足の刃 3 3
ダイス+[Lv+1]
武芸の達人 3
白兵達成値+[Lv*3]、EB無し
フェイタルヒット 3 4 100↑
ダメージ+[Lv]D
時の棺 1 10
いつもの
ドクタードリトル 1
あらゆる言語を扱え、動物とも意思疎通が出来る
帝王の時間 1
周囲の時間の流れを遅く出来る
偏差把握 1
周囲の物体の位置や移動ベクトルを把握する
謁見の魔 1
重力を高め周囲の人間をひれ伏せさせる

コンボ

混沌なる者の槍

組み合わせ
タイミング
技能
白兵
難易度
対象
射程
至近
侵蝕値
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
5+3
11+4
12
100%以上
5
11

長大な回転ノコギリ

Logos

組み合わせ
タイミング
技能
白兵
難易度
対象
射程
至近
侵蝕値
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
5+11
11+4
12
100%以上
5
11

得物でシンプルに斬りかかる

Logos(60)

組み合わせ
タイミング
技能
白兵
難易度
対象
射程
至近
侵蝕値
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
5+12
11+4
12
100%以上
5
11

Logos(80)

組み合わせ
タイミング
技能
白兵
難易度
対象
射程
至近
侵蝕値
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
5+13
11+4
12
100%以上
5
11

Logos(100)

組み合わせ
タイミング
技能
白兵
難易度
対象
射程
至近
侵蝕値
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
5+16
11+6
12
100%以上
5
11

Logos(130)

組み合わせ
タイミング
技能
白兵
難易度
対象
射程
至近
侵蝕値
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
5+17
11+6
12
100%以上
5
11

Logos(160)

組み合わせ
タイミング
技能
白兵
難易度
対象
射程
至近
侵蝕値
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
5+20
11+8
12
100%以上
5
11

Zeus

組み合わせ
タイミング
技能
難易度
対象
射程
視界
侵蝕値
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
100%以上

一瞬の時間停止による行動阻害

武器常備化経験点種別技能命中攻撃力ガード
射程解説
混沌なる者の槍 白兵 8 12 4 至近
防具常備化経験点種別行動ドッジ装甲値解説
EXパスファインダー 防具 12 神父が聖骸布と呼んでいたEXレネゲイド
一般アイテム常備化経験点種別技能解説
ウェポンケース 1 コントラバスのケースに偽造してある
コネ:UGN幹部 1
コネ:情報屋 1
専門家:レネゲイド 1
思い出の一品 2 ロザリオ

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
10 17 163 0 0 190 0/190
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

北欧系

▼メモリー
・HEEL-O:私が肯定します。だから、貴方は確かに"ヒーロー"です。

 答えは得た


「闘争こそ我が祈り」

ハイランド地方の農村出身。
元々捨て子であり、教会の神父に拾われ村ぐるみで大事にされ、愛情を一身に受けて育った。
だが村の実態はFHのエージェント養成所であり、サラは愛情と共にありとあらゆる殺しの技術を教えられた。本人も物心ついたころからそうであったため疑問など抱かず、その全てを幸福に感じスポンジのように技術を吸収していったのである。

そしてその果てに、村のFHエージェント全員を討ち倒したことで完成した。

これによって秘められていた闘争欲が完全に目覚めてしまい、彼女は放浪の旅に出る。
その後偶然出会ったUGNエージェントにスカウトされ、本部所属のエージェントとなった。
派閥としては穏健派であり、その任務は各支部の支援がメイン。ベクトルは違えど自分同様幼い頃から非日常に足を踏み入れ、今も子供でありながら毅然と戦い続けているテレーズのことは何かと気にかけている。しかし自分のような存在は余り関わるべきではないとも考えているため直接手を出すことはなく、サジェスや近しいエージェント経由で匿名の贈り物をする程度である。その悪目立ちする風評的に隠せているかどうかは不明だが。
改革派に対しては否定的。穏健派の戦力ということもあって改革派の先鋒であるアッシュ・レドリックと関わることも0ではなく、その守護者としてのプライドには共感しているが共存を不可能にしかねない姿勢には異を唱えている。

OPP17

神父曰く、相棒であるアリオンは赤子であったサラが握りしめていたらしい。その為双子の兄妹のように感じているが、口に出したことは無い。それは、もしその感情を否定されたら、というサラが持つ数少ない恐怖心故だろうか。

マスターレギオンとの邂逅は幼少期に遡る。神父に連れられてとあるセルの主催した晩餐会に出席し、そこで出会ったのがかつての彼である。彼がそれを覚えているかは分からないが、サラは欠けることなく記憶している。
いずれ戦場で相対した時、必ずこの手で討ち取るべき強者として。


サラはまごうこと無き戦闘狂である。その点については間違いない。彼女は楽しくて戦っている。闘争は彼女を育てた糧であり、彼女が生を実感出来る手段であり、しかし同時に主へ捧ぐ祈りでもあるのだ。
研鑽し、己を高め、やがて主に付き従う戦列へと加わるための宣誓。それが彼女にとっての祈りであり、その方法が闘争なのである。
だが、そんな意味も失われて久しい。今の彼女は、ただただ贖罪の為に戦っている。歓喜と悲嘆の間で痛みを感じながら。

バトルジャンキーとしての噂ばかりが先走るせいで誤解されているが、彼女はただの戦闘マシン的な人間ではない。普段から豊かに感情を見せ、任務で立ち寄る各所での観光も楽しんでいる。闘争を日常として育ったせいで価値観にズレはあるが、彼女もオシャレに興味を持ったり恋を夢見る年相応の少女な一面もある。

ある程度の教育を神父から受けてはいたが、現代社会での生活は数年ほどな上一般的な生活と縁がないせいで常識はかなり欠如している。学力という面で見るなら、ノイマンなこともあり高い理解力を持つ。
またその出自と一所に留まらないという役割から友達がいない。ので友達を欲しがっている。アリオンを除けば話し相手は人間以外の動物ばかりである。

◆ ◆ ◆

物心ついた時からそれが日常だった。
朝目覚め祈りを捧げ、土を撫でて種を蒔き、風に揺られ牧歌を口ずさみ動物達と語らい。

――命を奪う手法を学ぶ。

時には傭兵として、時には暗殺者として、幼き身でありながら幾度も人を殺した。

「貴方は使命を持って生まれ落ちたのです。祈り、研鑽し、強者を打ち破って価値を示し、やがて主の戦列へと加わるという使命を持って」

訓練の前に、神父は必ずそう言った。だから自分もそれを誇りに思い、ひたむきに打ち込んだのだ。
それを、村人たちは温かく見守ってくれた。

日々笑い、悲しければ共に泣き、悪いことをすれば怒り、最後には抱きしめて愛を与えてくれる人々。
愛と温もり、そして闘争。それが、自分の日常だった。それだけが、自分の知る世界だった。それ以外を、知らなかった。
だからこそ、それを、理解出来なかった。

「サラ。遂に、最後の試練の日が来ました。私達が教えた全てを宿した貴方であれば、きっと、乗り越えられるでしょう」

何時ものように祈りを終えた後、神父はそう言って自分を村の中央へと連れて行く。
村人全員が、そこにいた。何かを中心に円を描き、静かに自分を待っていた。最後の試練とはなんなのだろうか。そんな疑問を抱く自分の手を引き、神父は円の中心へと進む。

「これは餞別です。私達が、これから自らの足で歩んでゆく貴方へ送る、最後の愛です」

そこにあったのは一本の長大な骨と、それに巻かれた一枚のボロ布。
これは一体なんなのだろうか。最後の愛とは、どういうことなのだろうか。

「さあ、聖槍を手に取り聖骸布を纏うのです」

神父が自分の背を押した。何故だろうか。その瞬間何かが切れたような、失ったような、そんな感覚がした。

「例えどんな結果になろうとも、私達は貴方を愛しています。ですからどうか、為すべきことを、為すのです」

皆の頬に伝った光の意味を、理解することは出来なかった。それでも――

皆が皆、己の得物を構え、力を解放し、その切っ先を自分へと向けている。

であれば、やるべきことだけは、理解出来た。
聖槍と呼ばれたそれを握れば、ボロ布は自分を覆ってトゥニカと成る。ただの骨であった槍も、あるべき姿へと形を変えた。

「最後の試練です。――私達を、討つのです」

刃が廻り、火花を散らし――赤い、赫い、花を咲かせる。

――――

風が煙を晴らしていく。雲の切れ間から陽光が照らした。
家屋の崩れる音と肉の焼ける不快な臭い、赤と黒に染まった村があった場所。
その中央で、私は、太陽を見上げ息を吐いた。

「……ぁ」

疲労と痛みに声が漏れる。先ほどまで感じていなかった感覚が、体中を走った。
それが可笑しかったのか、自然と、込み上げてきた。

「ぁ……は、……ふっ……フフ…………」

ああ、私は生きている。確かに命が輝いている。それを感じられる、感じさせてくれる。
――闘争こそ、私の生。
楽しくて、楽しくて楽しくてしょうがない。技術を高めることが、試すことが、生きるか死ぬかの駆け引きが。どうしようもないほど、楽しいのだ。

「あはっ……アハハ……ハハッ、ハハ……、……?」

なのに、何故だろう。

「ねえ、教えてアリオン。どうして?こんなに楽しいのに、嬉しいのに――

頬を水滴が伝う。空は、晴れ渡っている。

「どうして、こんなにも、悲しいの?」

その答えは、時を経た今も、返って来ていない。


◆ ◆ ◆

とある実験を考えた男がいた。

”愛と闘争を与え続けることで育てた人間に己の手で愛を破壊させた時、出来上がったモノはナニになるのか”

そうして彼は実行した。己に賛同する者達を集め、扇動し、舞台を整えた。そして肝心の被検体も適当な赤子を奪い手に入れた。
実験は無事始まり、進み、最終段階を迎える。

男は、感動に打ち震えた。完成したのである。望んだ以上のモノが。
闘争に生き、闘争を好み、しかして誰よりも苦しみ、悲しみ、感情に突き動かされる誰よりも人間らしい戦闘マシンが。
これこそが求めていたものだ。自分は人なのだと主張する、人の皮を被ったバケモノだ。
何よりも美しく、何よりも鮮烈で、何よりも――滑稽な人形だ。
折角完成したのだから、その行く末を見守ろうではないか。

――足掻き、もがき、叫び、何処までも堕ちていくその様を。

https://charasheet.vampire-blood.net/4707925

◆ ◆ ◆

酷く歪んでいる。誰よりも闘争を愛しながら、同じぐらい闘争を忌み嫌っているその様は。
彼女が最も欲するものは手に入らない。手に入れられるはずがない。進んでしまった時計の針を、誰が戻せると言うのか。
知りたくなかったと叫ぼうと、心は歓喜し痛みに嘆く。

本当に送るはずだったこれまでも、これからも、彼女は二度と手にすることは無い。

◆ ◆ ◆

カツンカツンカツン

小気味いい足音が廊下に響く。

ギャリッギッ

金属の擦れ合う音が後に続く。
行く手を阻んだ者達の血に染まった得物を引きずりながら、サラは暗い廊下を歩いている。重なり過ぎて黒くすらなっていた返り血はその全てが身に纏うEXレネゲイドに吸い尽くされ、刃の痕をなぞる赤だけが殺戮を証明している。

――本当に、一人で行かれるのですか。

最後に顔を合わせた男の声が頭を過った。

――貴方の人生を狂わせたFHの居場所を突き止める代わりに、貴方はその力を我々に貸す。そして戦いの邪魔をしない。
――そういう契約だったのは分かっています。
――けれど相手は相当の戦力を有するマスターエージェントです。せめて露払いをする仲間だけでも。

必要ありません。

――相棒のビーイングすら置いて行くのですか。唯一の家族なのでしょう。

これは私の戦いです。私だけの、私がやるべきことです。例えアリオンであっても、関わることは許しません。

――……10時間。それだけ待って貴方が戻って来なかった時は、部隊を突入させます。

どうぞご自由に。

はっきり言ってサラは彼、霧谷雄吾のことが嫌いである。大嫌いと言っても過言ではない。何も知らないくせに、知らないなりに知ろうとしてくる。理解しようとしてくる。その在り方が、どうしようもなく嫌だった。
彼は善人だ。悪を許さず、しかし自分の正義が他者にとっての悪であることを理解し、だからこそ"善く"あろうとしている。
自分が正しくないという事実をこれでもかと見せ付けられるからこそ、忌み嫌っている。

「……理解なんて、いらない」

足を止める。目の前に現れた扉は何かをするより先に開き始め、薬品と血の匂いが空気に乗って流れ出てくる。

「やあ、ようこそ"トリニティ"。僕のラボはお気に召したかな?」

暗がりから男の声が響き、続いて光が照らす。オーヴァード同士が十全に戦えるほどの空間。その中央に、それは座していた。
心労で老けて見える霧谷と同じぐらいにみえることから、歳は40前後か。
口角を上げたままこちらから目を離さない男――"マスタードクトル"アルベルト・シュミット。赤子のサラを誘拐し、あの村で育てさせた張本人。

そんな彼に向かって、言葉を交わすことなく、サラは得物を振りかぶって突っ込んだ。

変身しない、熱が変化しない、重力場に影響が無い、発光しない、流血は確認出来ない、放電も起きていない、体捌きは肉体のそれ、影に動きは無い、物質への干渉無し、目線はこちらを追い切れていない。
距離を詰めるほんの一瞬で、サラは相手のシンドロームをソラリスとオルクスに絞り切った。その上で、攻撃に適した能力でないことまで当たりを付ける。
防御の兆候は無い。当たる。殺せる。

――しかし、その刃は彼以外を切り裂いた。

真っ二つになったそれを蹴り飛ばし、その勢いで距離を取る。
見ればそれは、白い、顔の無い獣だった。

「挨拶にしては少し物騒じゃないか?検体が一つ潰れてしまったよ」

「……それも、無関係などこかの誰かなのでしょう」

自分と同じような。言葉にせずとも、マスタードクトルはそれを理解している。

「君の言う通り、これは元々ただの一般人だ。手に入れたのはたしか……17年前だったかな?」

彼の言葉に、一瞬、体が震えた。

「そう、そうだよ。これも君と同じだ。君のようなものを作ろうとした実験の被検体。君と言うものが完成したことで価値の無くなった、ある意味で君の兄弟とも言える者"達"だ!」

言うと同時、空間が歪み無数の白い獣が現れる。その全てが同じように顔が無く、しかし元は人間であったことを証明するように髪や人の手足が見て取れた。
マスタードクトルは座したまま楽しそうに語る。

「輪廻の獣って知ってるかい?一部のウロボロスシンドロームが持つ特別な因子をそう呼ぶんだけどね、それをどうにか量産出来ないかと考えていたんだよ。そしたらどうだい?失敗作の中に運良くいるじゃないか!早速回収して遺伝子サーバーに組み替えて、そのレネゲイドを他の失敗作達に投与してみたのさ。……まあ、結果はご覧の通り失敗だけどね。本当なら他のレネゲイドを打ち消すような力を発揮するはずなんだけど、どれもこれも姿しか似なかったよ。それどころか投与したレネゲイドが元のレネゲイドを食い荒らしてしまうせいでシンドロームが消えてオーヴァードもどきになってしまうと来た。失敗は成功のもととは言うが、君と言う大きな成功の後にこうも失敗が続くと気が滅入ってしまうよ」

心底残念そうに、心からそう思っているように、――人を人などと思っていないように、男は語る。

「そうだちょうどいい!どうだい、君も投与してみないか?最高傑作である君ならきっとウロボロスシンドロームに覚醒するはずだ!まあ失敗してしまったら勿体ないけど……」

瞬間、サラの中で、何かが切れる音がした。

「ッ――アルベルトォォォォォ!!」

感情に呼応して刃が火花を散らす。

「貴方はそうやって、どれだけ苦しめてきた……奪ってきた!」

彼は座したままだ。それを守るように立ちはだかる獣たちを潰し、切り裂き、肉薄する。
だが、

「数えているわけがないだろう」

突如頭上から獣が現れ、その爪が鎧の間隙を縫って肌を裂く。咄嗟に払いのけたおかげで傷は浅い、戦いに支障は無い。
そう判断し再び進もうとした時、視界が歪んだ。一瞬で力が抜け鋼鉄の床が体を叩いた。

「僕は成功例の数は覚えているよ。だが失敗など多くてとても覚えきれない。まあ原因や再発防止の対策ぐらいはちゃんと考えているがね」

そう言って、彼は初めて立ち上がる。そのまま倒れ伏したサラの前に進み出た。

「そもそもだ」

見下ろしたまま、彼は言う。

「経費の処理や在庫の管理は僕の仕事じゃあない。素材をいくつ使っただとか、ゴミをどれだけ出したかだとかなんて記録するはずがないだろう」

感情が身を揺らし、その勢いでせり上がってきた血液が口の中を染める。

「人、を……人間を、なんだと、思って……!」

それを聞いたマスタードクトルの顔が、初めて変化した。口角は下がり、キョトンとしている。

「あー……そりゃまあ、心が痛んだよ。ごめんよ、でも発展のためだから許してってさ」

「そんなっ、心にも無いことを……それで許されると…………私が、許すとでも!」

それを聞いた彼はしばし考えたのち、合点がいったように手を打つ。

「そっかそっかそういうことね!なんだか会話が噛み合ってないと思ったんだよ」

彼は出会ってからこれまでで、一番楽しそうに、笑った。

「君は人間じゃなくて、化け物でしょ」

当然だと言わんばかりに、心をからそう思っているのが分かるように、彼は言った。

「笑いながら自分の家族切り刻んで、その癖家族が死んで悲しいよー……なんて、異常だよ異常。とても人間の精神構造じゃない、れっきとした化け物だ。それが君、人間の皮を被ったモンスター、まごうことなき僕の最高傑作で、飽きない玩具さ。感謝してるよ?君の行動一つ一つが滑稽で滑稽で……くふっ……今だって笑うのを我慢してるんだから。ほんっと良い娯楽だ」

マスタードクトルは尚も言葉を続けている。しかし一言として、サラの耳には入らない。
玩具。自分が?娯楽。ならあの村は?この手で行った殺戮は?その全てが――この男にとっては、遊びだった。

「ふ、ざ……けるなあああああ!!」

肉体を蝕む痛みを抑え込み、無理矢理立ち上がって得物を振り下ろす。マスタードクトルは一瞬驚きを顔に浮かべるが、次の瞬間には横合いから獣の突進を受け再びサラが地に伏す。
それでも彼女は立ち上がった。血を吐きながら、急速に侵蝕を進めながら、獣を薙ぎ、吹き飛ばされ、肉薄しながら叫び続ける。

「私から全部奪っておきながら!!こんなものに気付かせて、押し付けておきながら!!」

進めど振るえど、刃は届かない。

「押し付けるなんて人聞きの悪い!それは元から君の中にあったじゃないか。遅かれ早かれ君はそうなっていた!」

「貴方が、私を巻き込んだから!あんなことがなければ私は気付かなかった!知ることはなかった!この歓喜も、悲嘆も、怒りも!!」

家族を一人切り裂く度、同じだけ心も切り刻まれた。
楽しくなる程、悲しくなった。
達成感と同等の絶望が、胸を埋め尽くした。

「貴方さえいなければ私は!」

限界が迫るほど、マスタードクトルとの距離が縮む。

「平凡に生きていられた!武器を取らず学んで、友達と遊んで、家に帰れば家族と過ごして……有象無象の一人で、いられたのに!!」

マスタードクトルが、初めて後ずさった。届く。刃が、怒りが。

「返せっ、私の本当の昨日を!本当の今日を、本当の明日を!!――返せえええええええええ!!!!」

火花が散る、肉が削れる、赫が咲く。
刃がマスタードクトルの体を切り裂き。
――彼は、心底うんざりした様子で。

「残念だよトリニティ。君も、失敗作だ」

瞬時に傷が再生し、脱力したサラを獣の群れが飲み込んだ。

「やれやれ、僕は非戦闘員だと言うのに……痛いなぁ、血が止まっただけじゃないか。と言うか君に飽きてなかったら死んでたよこれ」

お気に入りの服にシミが出来てしまった時のような気楽さで、彼はため息をつく。
彼にとって実験で被る怪我など日常茶飯事だ。普通、なのだ。
――だからこそ、そこ止まりだった。

最初に金属音が響いた。どうせ畜生の爪が床に当たったのだとマスタードクトルは決めつける。
次に肉の裂ける音が響いた。きっとサラが食い散らかされているのだろうとマスタードクトルは決めつける。
次に破裂音が響き、マスタードクトルはふと振り向き――バラバラになり捻じ曲げられた獣達と、自分に向かって得物を振り下ろすサラを見た。
マスタードクトルは当然回避を選んだ。もう獣はいない。領域を操り、香りで判断力を鈍らせ、自らの足で回避を試みた。自分は侵蝕の影響を受けづらいのだ、出し惜しみの必要はない。どの道目の前の失敗作は限界で、これが最後の一撃だ。回避に特化した自身のレネゲイドなら脅威にすらならないと結論を出す。
――その時にはもう、体は三分割されていたが。

「……へ?」

映像をコマ送りしたように、振り上げられていたはずの丸鋸が床と擦れあって火花を散らしていた。
侵蝕が進んで尚再生出来るような力も、自分を蘇らせる絆も、彼には無い。それを理解する前に、彼の意識は、途切れた。





トリニティの突入から7時間、3時間後には自分達の番だ。
部隊と共に現場に出た霧谷そんなことを考えていた時、施設の扉が開き部隊全体に緊張が走った。
鋼鉄が作り出した暗がりから現れたのは――血塗れで長大な丸鋸を引き摺る、見るからに満身創痍のサラだった。

「っ、すぐに医療班を!戦闘部隊は施設内へ突入!状況開始!」

霧谷は即座に指示を飛ばし、彼が選んだ精鋭たちもそれに応える。
サラはフラフラと歩いており、焦点は定まっていない。他に誰かいることなど、気付いていないのだろう。
段差に躓き倒れる彼女を、霧谷は咄嗟に受け止める。

「ぁ……」

そこで初めて周囲の状況を把握したのだろう。サラの手から力が抜け、手放した得物がガラガラと音を立てる。

「……勝ったんですね、貴方一人で」

強大な敵を打ち倒した。UGNであれば、それはとても喜ばしいことである。だと言うのに霧谷の顔は暗く、悔しさをにじませていた。

「すみません」

何故謝るのか、とは聞かなかった。それが彼の在り方だと、分かっていたから。
一体、どれだけその言葉を、自分のような子供たちに投げかけてきたのだろう。どれだけ多くの苦痛を背負っているのだろう。どこまで彼らを理解したのだろう。いつまで理解し続けようとするのだろう。
"リヴァイアサン"の名にふさわしく、きっと彼の戦いに底は無い。この男はどこまでも、自分の信じる"善い"を為し続ける。
だからこそ、やはり、サラは霧谷雄吾という男が嫌いだ。
理解なんて、いらない。
知ってほしいなんて、思わない。
それよりもずっと欲しいものがあるから。
アリオンも知らない、家族も知らない、マスタードクトルも、リヴァイアサンでさえも、見えていない。


――彼女はずっと、ずっと、求めている。どれだけ歪んでいようと醜かろうと、それが自分の在り方だと。人間性なのだと。
――その叫びに対する、たった一つの、肯定の言葉を。

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 30
-20
混沌なる者の槍
4
イージーエフェクト
32
エレウシスの秘儀
29
オンリーロンリーヒーローズ
-15
メモリー

チャットパレット