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「人の痛みが分かる子になりなさい」
お母さんはいつも言っていました。
小学生の頃は、食べるのが遅くていつも掃除の時間まで残ってました。先生が意地悪で、食べられない物も牛乳で飲み込めって無理やり食べされられて。おかげで食べられない物が増えました。
中学生の頃は、いつも教室の隅っこで1人でした。だからなのかもだけど、いじめの対象にされて誰も助けてくれませんでした。
高校は、知り合いがいない遠くの学校を選んだけど中学のことがあるから自分からは友達を作りになんていけなくて。
やっぱり1人で図書館で本ばかり読んでいました。
先生のことをお母さんは「貴女に皆と同じようになって欲しかったのよ」と言います。
いじめてた子達は「貴女と友達になりたかったのよ」と言います。そんなお母さんも私に暴力を振るってきます。
全部、私の為なんだと言いながら。
本当に私の為なんでしょうか?人の痛みと言うのを"アノヒトタチ"は分かっているのでしょうか?分かったうえでしているのでしょうか?分からないです。私はそれが知りたくて、傷を付けたら分かるのかなと自分で自分を傷つけてみたりもしたけどやっぱりただ痛いだけでした。
何で他の人と同じじゃないとダメなんでしょうか。分かりません。
何で友達になりたいのに暴力を振るうのでしょうか。分かりません。
何で私が大切だといいながら壊そうとしてくるのでしょうか。分かりません。
考えても答えは出なくて、その度に自分を傷つけてたらいつの間にか癖になっちゃいました。
きっと"アノヒトタチ"も人の痛みなんて分かってないんだと思います。だってこんなに考えてる私でも分からないんだから。
だから私、思いついたんです。私の痛みを"アノヒトタチ"に知ってもらえたらいいんだと。
そうすれば少なくとも私の痛みは分かってくれると思うから。そうすれば、きっと私も彼等の痛みが分かるから。
そう、分かってくれたんです。
私が傷をつけると、不思議な力で"アノヒトタチ"も傷ついたんです。
お母さんは泣いて私のことを大切だと何度も言ってくれました。殴った事を謝ってくれました。
いじめてた子達もいっぱいいっぱい謝ってくれました。
先生も「気に喰わない、嫌いだったからやったんだ」って本当のことを話してくれました。やっぱり私の為なんかじゃなかったみたいです。でも最後には謝ってくれました。
でも何で皆謝るんでしょうね。私が欲しいのは謝罪なんかないですし、謝るってことはそれが傷つけている行動だって自覚があったってことですよね。"アノヒトタチ"は最初から人の痛みが分かる人達だったんでしょうか。でもそれならやりませんよね、変ですね。どうせ謝るなら、最初からやらなきゃよかっただけなのに。繰り返さなければよかったのに。そうすれば、死ぬこともなかったのに。
でもいいんです。そのおかげで私はお母さんが言ってた「人の痛みが分かる子」になれたんですから。