世界120ヶ国以上に支社が存在する軍産複合体のコングロマリット。
　取引先最大手はアメリカ国防総省、本社はバージニア州ラングレーに存在する多国籍企業である。
　兵器・航空宇宙事業が主であり、世界全体の通常兵器の56％、対オーヴァード兵器の68％、レネゲイドウィルスを使用した兵器の89％のシェアを有している。特に、対オーヴァード兵器である衛星軌道兵器「オービタル VSAT」の開発と生産が有名である。
　会社の設立はつい最近である。異常なまでの短期間による世界的企業の成長は世界の注目を集めると共に非オーヴァードにとって脅威であり、各国首脳の悩みの種でもあるが。しかし、タイタン・アーセナル社は「対オーヴァード兵器」をあらゆる国に提供することによって絶大な信頼を獲得している。この反動か、「対オーヴァード兵器」の精力的な開発・製造によってFHによる自社へのテロ攻撃が跡を絶たない。

MM地区の都市開発を担った日本企業の「高橋重工」とは、タイタン・アーセナル社の兵器のOEM生産を任せている関係性がある。世界情勢の変動の中で、地政学的に優位な場所に位置する日本国自体をCEOであるウルスラは非常に重要視している。

※OEM生産＝主製造メーカーが他のメーカーに自社のブランドの製品の製造を任せること。割とよくある話。

巨大企業であるタイタン・アーセナルの運営は彼女の手腕が非常に大きいが「超国家主義者」と呼ばれるインナーサークルが裏で会社の経営を握っているという黒い噂もある。

超巨大企業の創設者であり現役のCEOである彼女は表の顔は資産家、裏の顔はUGNの支部長でもある。UGNの所属、そして支部長への任命もつい最近のことである。
　異例の昇進はUGN内部でもあったりなかったりする事態なので、それ自体は話題にならなかったが、ウルスラはレネゲイド災害緊急対応班(R災対)の「ルカ班」と関係性を持っている点が注視されている。

　改革派であるアッシュ・レドリック担当議員、中国議員の李文龍(リィ・ウェンロン)、改革派のジェーン・プレスラーと密接な関係を構築しているらしく、アメリカに本社を置く企業の社長でありながら、その関係性構築の思惑を様々な人物が懸念している。

　前述の「非オーヴァードに対して、対オーヴァード兵器を大量に流通させている」点からも、「オーヴァードが優位である」とされている改革派との接触の真意を非常に疑問視している者が多い。

　今回の彼女への任務は「エレウシスの秘儀」の「確保」である。任命された以上、彼女は全身全霊で臨むが、彼女の執着には何らかの別の意義をはらんでいるように感じる。冷戦沈着で、的確な決断を下す彼女の采配に「翳り」があった。

《真相》
　彼女がエレシウスの秘儀の確保に執着する理由。それは唯一の家族である妹のシンクレアの病気を治療する為だった。

　数年前、ウルスラは家族と共に事故に遭う。レネゲイドウィルスを使用したFHの非オーヴァードへの無差別テロ攻撃事件だった。オーヴァードの存在を否定する主張を続けていた父親の会社の破壊を狙ったテロ事件であり、首謀者はマスターレイスの一人であるとされている。この事件により父、母はウィルスの拒絶反応により即死。兄は二次被害の事故によって通常の怪我を負ったものの、オペレーションミスにより命を落とし、妹はレネゲイドウィルスの適応障害によって苦しむことになる。この時にウルスラはオーヴァードとして覚醒し、常人の道を歩むことをやめる。

「オーヴァードがいなければ私の父と母は殺されなかった」
「オーヴァードを擁護していれば、父と母は殺されなかったのか?」
「社会の構造がそれを許さない。父と母は社会的に殺されていた筈。」

「オーヴァードが手術していれば兄の命は助かった?」
「オペにあたった医師は当時飲酒していた。」
「弱い非オーヴァードがいなければ兄の命は救われていた筈。」

「私はオーヴァードとして覚醒したが、妹は苦しんでいる。」
「弱さのせい? 妹は生きようと必死に抗っている。」
「こんなに強力な力を手に入れても、唯一の家族を救う方法すらわからない。」

「何が正しい? 誰か私に」

「おしえて」

　要監査職員番号《5919-00-68》ウルスラ・ロングキスグッドナイトMM地区クリアランスB支部長
対象UGNエージェントは特異オーヴァード個体としてクリアランス・アクシズレベルのエージェントからの監視を受ける。監視対象のシンドローム能力の暴走傾向を著しく確認できる為、対象に過度な接触や感情の大きな変容を与えることを禁ずる。

対象は世界的事例の少ない生命維持停止と同時に3種のシンドロームを同時獲得した個体である。
また、当人の秘匿裏に行われた定期健診の結果やレネゲイドウィルス検査の結果、対象はヒトゲノムの構造が常時形態変化している傾向があり、性染色体XXとXYの絶え間ない変化が行われていることが確認された。ホルモンバランスの均衡分泌が体内で行われてあり、身体に男性的特徴と女性的特徴を有する2種の形態があることが確認された。上記の影響により、海馬に異常がさらに見受けられ、1つの身体にまったく異なる性格の人格・身体が形成され、それが絶え間なく、しかし生命維持の活動に悪影響を与えることなく存在していることが確認された。

女性的特徴個体を｛ウルスラ・ソロル(SOROR)｝、男性的特徴個体｛ウルスラ・フラテル(FRATER)｝と呼称、観察する。

｛ウルスラ・ソロル(SOROR)｝/ 攻撃的な性格を有する。レネゲイドウィルスに異様なまでの反応を示す。シンドローム能力の行使に躊躇いがなく、冷徹で残忍。鎮静薬のある程度の投与が必要の可能性がある。

｛ウルスラ・フラテル(FRATER)｝/ 社交性があり温和、こちらがSORORが形成される前の主人格だとされる。レネゲイドウィルス、他オーヴァードへの過剰な拒否反応を示す。過剰型投影依存、過度なストレス状態である。

監視対象が作戦行動中に何らかの理由により死亡した場合は収容される。