熾の家族を殺したのは、ただのレネゲイド災害ではなかった。
仮面をつけ「ファウスト」と名乗った人物が、FHの名を掲げて社を襲撃したのだ。
その声は変声されており、性別も年齢も分からなかったが、唯一残った言葉だけは今も熾の胸に刻まれている。

「――私はFHのファウスト。私を殺したくば、同程度の力を付けるのだな。」

炎上する社の中、熾は命を落としかけた。だが、社に祭られていた存在――伝承の「護り神」にしてレネゲイドビーイング〈レジェンド〉と邂逅し、共存を果たすことで生き延びた。
以来、熾は〈レジェンド〉とともに生きている。UGNにとっては貴重なRBの協力者だが、その存在は彼の心を「復讐」へと傾け続けている。

UGNエージェントとして「市民を守る」という正義を掲げながら、同時に「ファウストを殺す」という強烈な殺意を心に抱えていることを、熾は誰にも明かしていない。
そして彼自身も恐れている――ファウストと再会したとき、自分がUGNエージェントとしての倫理を保てるかどうかを。