完璧な両親から産まれた子供には大きな病があった。
移植でしか治せない病のために2人目の子供を設けたが適合しなかった。完璧な両親は移植に適合する完璧なドナーを求めた。
たどり着いた研究者曰く、両親の遺伝子から「必ずHLA型が一致するドナーを作り出せばいいのだ」と。
完璧にこだわり、迷走を続けた両親はとっくの昔に狂っていた。それが人として正しくないことも理解できないほどに狂っていた。
やがて作られた2つの生命は片方が亡くなり片方が特徴的な痣を持って産まれた。完璧な両親は痣を持つ子供が成長するうちに怪我をしてしまう事・自我を持ってドナーを拒否する事を恐れ、極端な優しい幽閉を行うようになった。家族愛を説き、家族のためにある事が唯一であるとコントロールするようになった。
彼女に許されたのは「知識」となる本と格子の嵌った窓から見える景色だけであった。
多大な寄付金と引き換えに遺伝子のレベルから調整された人工の生命。制限こそが愛情と教えられ誤魔化されながら成長した生贄。
それが、御手座 そなえ(みてぐら そなえ)である。

閉ざされた世界の終わりはあっけないものだった。
完璧な両親は児童虐待で警察に捕まったのだ。有名人夫婦の犯行としてセンセーショナルに報道され、以後そなえは養父母の元で育つことになった。
だが、幼少期の制限可で育ったそなえには欠落した部分があった。優しい養父母でも手に負えない欠落だった。
愛を紡ぐが愛を知らない。
友情を語るが友情を知らない。
家族を夢見たが、夢を知らない。

・軽井沢近郊のプライベートコテージや御屋敷が並ぶ土地に「療養所」と言われる癌患者の施設があった。病院と研究棟が併設されたこの施設。兄の宝良の病院であり、そなえ・ひかえが作られた場所。

・遺伝子を調節する段階で、なんらかのトラブルで感染していた説
・成長過程で『 』説