我が弱くなんにでも遠慮しがちな高校生。
趣味も特技もこれといった点はなく、流されるままにやってきた程度のもの。
その影響か物事を決めるという点に不足しており、他人主体の人生を送っているようである。

運動が苦手、勉強もあまり成績は高くない。
一方でゲーム、ダーツなど特出して優れているものがある。
また、マークシートのテストで六角鉛筆を持ち込んでいる時、満点だったことがある。
本人はその時のことをまぐれだったという。

彼は運がいい。
実はオーヴァードによる身体機能向上はほとんど見られない。

ナイフを振る腕力も高速で動く脚力も振動風力あらゆるものが確認されていない。

唯一、音だけは操作をしているのを見せたことがある。
そこを除けば一点を除いて特異性が見られない。

彼は限りなく運がよく、ごく稀にしか起きないことを呼び寄せている。
ナイフを振るえばたまたま枯れ木が倒れてくる。
ナイフを投げればたまたま隕石が振ってくる。

ただそれだけのことなのである。

自分は今までただ運がいいだけだったんだ
でも運よくみんなを守れるだけの力があるんだ。
自分の運命にこの先どんな暗雲が立ち込めていようとも
きっと何とかなるって。だって自分、運がいいんだ。
みんなにも幸せを届けて見せる。運んで見せる。
…そのためにもちょっとは運動とかしておこうかな……?

…………。
僕らが世界に与えた影響が
こんな別世界として出ているなんて思わなかった。

もしかしたら、あの子もいるのかな。

僕が、世界においてきたあの子も。
また会えるのかな………。



…………また会って、何を話せばいいんだよ…。

僕は彼女を見捨てたんだ。

あの子の口車に乗ってしまって。