設定と能力の要約

ＦＨの儀式に巻き込まれてアザトースと接触したことをきっかけに、現実が虚ろな夢であると認識し相手の存在を揺るがす能力を得る。
ただし、それは現実の否定行為なので、能力による殺傷は不可能。

過去

とある平凡な家庭に産まれた鉢鉄鉄銀は、人並みの幸せと人並みの不幸を享受して成長した。そして中学生になった頃、友人が宗教団体の儀式に巻き込まれ行方不明となり、独自に調査をしていた鉄銀は奇跡的に（あるいは必然によって）彼らのアジトをつき止める。この宗教団体が偽神の心臓(ファルスハーツ)と呼ばれる集団であることを知るのは、もう少し後のことだ。
しかし、鉄銀の幸運はここで尽きる。儀式に巻き込まれた友人は実験体にされ、理性を失い襲いかかってきた。致命傷を受け、薄れゆく意識の中で鉄銀の意識はこの世ではないどこかへと接続された。
果たして、鉄銀は死の瞬間にアザトースと邂逅したのである。あるいは『邂逅した』という妄想に取り憑かれてしまったか……なんにせよ、一連の体験によって鉄銀は友人を失い、自身の人間的尊厳をも失った。この世界が上位存在による『夢』だと認識し、時間と空間の歪みを理解するに至り、その過程で身体が神話生物(オーヴァード)と化したのだ。
正気を取り戻したとき……友人と、彼を狂わせた宗教家たちは、身体の穴という穴から真っ黒な血液を垂れ流して死んでいた。
鉄銀は、しかし警察へ通報することも泣き喚くこともせず、静かにその場を立ち去った。その後、遅れて到着したＵＧＮによって偽神の心臓(ファルスハーツ)が保管していた資料が、いくつか紛失した形跡だけが確認された。

現在

神話生物(オーヴァード)となった鉄銀は、家に帰らなかった。世界の構造に触れてなお、何も知らないフリをして家族や友人たちと笑い合うことはできない。
残された人々の悲しみを理解しつつ、鉄銀は戦い続けた。ある時は偽神の心臓(ファルスハーツ)と。ある時は神話生物(ジャーム)と。何度も死にそうになったし、逃げ回る羽目になったこともあった。
そうしてその日暮らしを続けるうち、とうとうＵＧＮに見つかった。彼らからの接触を受け、何度か話し合いを重ねて、鉄銀はようやく理解者を得た。
この頃には既にマンハッタン事件によってＵＧＮは壊滅状態にあり、組織としての活動を期待できるものではなかった。そのため、訓練は施設を使って受けつつ、最低限の寝食は鉄銀自身で確保することをＵＧＮに提案。当然一度は却下されるものの、定期連絡やレポートの提出、その他諸々のメリットを主張し、強引に許可を取り付けた。
現在の鉄銀は、偽神の心臓(ファルスハーツ)や神話生物(ジャーム)の脅威から人々を守るため、各地のＵＧＮ支部と協力して戦い続けている。

能力

鉄銀の能力は、時間と空間の認識を上書きすることで、対象の存在に影響を及ぼす。これは、鉄銀の覚醒したときの状況が関係していると考えられている。
死の瞬間、アザトースの宮殿へと召喚された鉄銀は、そこで玉座で夢に浸るアザトースを見た。そして人間の信じる現実こそが夢なのだと理解した（気になっている。事実は定かではない）。
これにより、鉄銀は虚構の登場人物であるというミームを対象の存在に上書きすることができるようになった。全てをアザトースの見る夢だと知り、それを理解することで対象の存在を不確かで脆いものへと変化させるのである。
しかし、この能力には致命的な欠点がある。鉄銀自身が、対象を虚構の存在だと認識することを拒んでいるのだ。
これは当然である。この能力は世界そのものの否定が本質。愛する家族も、優しい隣人も、通りすがりの見知らぬ誰かも、全て虚ろな夢であることを肯定する能力だ。故に、鉄銀はこの能力を十全に使用できない。存在強度を低下させるのが限界である。鉄銀の能力だけでは敵にトドメを刺せない。
そのため、鉄銀が戦闘をするときは肩を並べる戦友が必要となる。例えそれが無価値なお人形遊びだったとしても……鉄銀は一人では絶望に立ち向かえないのだ。

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