かつて、彼女-鯖寅は孤児であった。その時は猫でも何でもなく、一人の人間だったのだ。
育てていたのは網戸雉寅という男、拾った当時から彼女を自分の子のようにかわいがり育てていた。
雉寅はUGNのコンチェルトに所属するメンバーであり、それを本人は黙っていた。
彼女を危険には晒したくなかったからである。

彼女が高校生になった頃だった。
いつも通り心配性の雉寅は彼女の学校まで車を出し、お迎えに来ていたのだった。
しかし、そこに狙ったようにジャームが襲来した。
鯖寅はそのジャームに襲われかけたのだ。
雉寅はとっさの判断で彼女の間に割って入る。

気付いた時には、彼女は記憶を失くしていた。
先ほど起きたことも、その衝動で彼女がオーヴァードとしてすでに覚醒していたことも。
そして、今まで育ててくれた雉寅の事と、彼が彼女の暴走を止める為に命を落としたことも。

彼女がオーヴァードとして覚醒したことを知ったコンチェルトのメンバーは鯖寅を歓迎した。
彼女は記憶を失ってしまった為、彼らは鯖寅がショックを受けないよう、元々鯖寅がコンチェルトのメンバーであったかのように接した。

だが、それが裏目に出た。(「ギリアム＆ヴァネッサ＆ボグダンと共に戦場で戦う」という回想にて)
彼女はギリアムが自分を庇った行動ですべてを思い出してしまったのだ。

今まで自分を騙していたUGNの憤怒。

自分が殺してしまった雉寅への苦悩。

そして、それを知りながらも受け入れてくれていたコンチェルトのメンバーたち。

彼女は自責の念からUGNを去った。きっと、仲間を殺されたメンバーの方が何倍もつらかったろうに。
そう考え、彼女はUGNに姿を現すことはなかった。