生まれた時から両親に実験体として扱われる。
薬を打ち込まれたり飲まされたり、と人間の子ましてや自分の子に行う行動とは思えない程の狂気的科学者(マッドサイエンティスト)の元で牢に投獄されている。

その牢で出会ったのがイザベラである。
イザベラはレネゲイドビーイングの子供であり、ノイマン、ブラムストーカーのクロスである。
まず、この牢に投獄されたものは言の葉を紡げるものが少なく、人の形をなしているものも少ない。

同じ境遇を持つもの。言の葉を紡げるもの。人の子と出会えた事に感銘を受けた。
元々人と喋り事を苦手としていた彼だが、マシンガンのように喋り続ける彼女に徐々に閉ざされた心は綻んでゆく。

イザベラとこの牢で過ごしていく中で彼の体は月日と共に成長していくのに対して、彼女は最初出会った頃と何も変わらない見た目だった。
不思議に思った彼はふと、彼女に問いかける。
「君はなぜ成長しないの」と。
イザベラは鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をした後に口に手を当ててクスリと笑った。
「私は100年以上この姿なのよ」
そう笑う彼女はとても悲しそうにどこか遠くを見上げていた。

月日は流れてとある満月の夜。今日も実験体である役目を終え、いつものように牢に帰る。またいつものように彼女と話そう、実験体である事など忘れるほどに会話をしよう、そう思った時だった。彼女の様子がおかしい、楽しそうに会話を紡がれる口からはダラダラと体液が流れ、苦しそうにくぐもった声を発していた。
身振り手振りで大変そうに動く手足は酷く細く、その細い腕には刃物のような爪をたてては激しい音を立てて皮膚を痛めつけた。
声をかけようと近づくと鋭く細い瞳孔を持った大きく紅い瞳からは涙が零れていた。

バタバタと、牢に向かう複数人の足音がする。
「被検体1897が暴れているそうだ」「これは薬の副作用だろう」「ここまで拒絶反応となるともうダメね」「失敗か、あんなにも投与したと言うのに…」「残念だ」など彼女を蔑む様な言葉が牢の中に響く。


いたい、くるしい、あつい、