自分が化け物になってから、全てが壊れた。
友人はこの世から消え、自分だけが生き残ったせいで、心無い言葉を何度も受けてきた。
両親は叶恵はあの日死んだのだと、目の前に居る自分は娘の姿を真似た化け物だと罵った。

皆オーヴァードを知らない。UGNが与える天麩羅の日常で笑ってる。
そんな現実に嫌気が差し、何度も自殺しようとした。
だが、死ねなかった。自ら死ぬことも出来ず、苦しむしか無かった。
UGNにアカデミアを勧められた時は心から嬉しかった。

もう二度と、自分の日常を壊されたくない。
だから、弱い自分を嘘で塗り固めた。感情を偽り、自分を騙し、叶恵という人間を0から作った。

Sランクに認定され、生徒会にも所属できた。
化け物でも得ることのできた日常。この生活を必ず守り抜く。
仕事はもっぱら雲雀会長から振られた雑務。
暴走事件や、何か争いごとがあったときは鎮圧の為に出動する。

友人を守れなかった。自分を守れなかった。日常を守れなかった。
色んな物を守れなかった自分が得た力は、誰かを守る力だった。
レールからはみ出さず、誰も傷つけず、真っ直ぐ浄く正しく生きること。

もう二度と、何も失いたくない。その気持ちは叶恵の生き方に蓋をしてしまった。離れることが怖いが故に、誰かと本当の意味で仲良くなったことがない。
上っ面の関係。親友なんて作れる訳ない。恋愛なんてしてみても、きっと自分の気持ちは伝えられないだろうと、諦めを抱いている。