春日一族の一員として生まれた彼女は、一族として当たり前のもののようにFHに入った。チルドレンとして教育を受けた彼女が所属していたのは、オーヴァード優勢思想を持ち、非オーヴァードを守ろうとするUGNを潰すことを公言しているとあるセルだった。元々の教育のたまものでオーヴァード優勢思想を持っていた彼女にとっては居心地の良い場所だった。

転機が訪れたのは3年前、18歳の時。その出会いはある種の運命であった。とある駅のホームで、ある名を聞いた。不意にそちらを向いたときに見えたのは、一人の少年であり、そして彼女はこう呟いた。「何よ、女の子の名前かと思ったら、男の子じゃない」。それが少年――｜神結 美央《かみゆい みお》との因縁の始まりだった。神結は彼女の小さなつぶやきを聞き逃さず、彼女を思いっきり殴りつけた。それに腹を立てた彼女は以来神結に執着するようになり、UGNイリーガルとなった彼と何度も戦った。期間としては一年に及び、最終的に彼女は敗北、命に係わる重傷を負い、前線から離れた。治療に専念しているうちにセルは壊滅。その戦いの中で神結は精神崩壊へと至り、復讐(?)の機会は失われた。

彼との戦いで、彼女は多くを奪い、多くを失った。自分を気にかけてくれた同僚は彼に殺された一方で、彼女もまた彼の大切にしていた人々の命を奪った。任務では毒ガスによる非オーヴァードに対する虐殺の任務に選ばれ、自分に言い訳をしながらそれを遂行したこともあった(彼女は優勢思想だっただけで、無暗に非オーヴァードを殺したいわけではなかった)。
その中でも一番心に残っている喪失は親友の｜阿王 真矢《あおう まや》を失ったことだった。その親友は、神結の攻撃から自分をかばい死んだ。その喪失感は彼女の心を復讐に縛り付けることになった。

戦いの果てに、全てを失った彼女はオーヴァードに対する認識を大いに変化させた。超常の力を持ち、ただの人間を見下していた彼女だったが、現在はオーヴァードやレネゲイドに対してある種の諦観を覚えている。その力は人を高みに至らせるものでも、幸せに導くものではなく、ただ悲しみを生み何かを奪うだけのものである。不幸と隣り合わせのオーヴァードよりも、普通に生きる人間たちの方が余程尊いものなのだろうと考えるようになった。

結局のところ、彼女は自分を死ぬべき時に死ねなかった者だと思っている。今更普通の人生など送れるわけもないとは思っているが、同時に自分が生き残ったことに何か意味を持たせようとしている。そのためにUGNに協力し、贖罪として人々を守るために戦っている。
死の淵に至るほどの執着は不完全燃焼に終わり、失ったものには魂を引かれ、それでも生きる理由を探して日々を生きている。が、結局のところ全ては惰性であるとも思っている。

FH時代から人型の多脚戦車に武装を載せて戦うという戦法を得意としていた。現在はFH時代のそれよりも小型になった人型兵器(イリーガルモービル/環境に応じて武装を変えることで様々な環境で使用できる)を愛機としている。

素早い動きで繰り出される攻撃は長い間ハヌマーンやバロールのものであるとされていた。しかし、近年の研究によりそれらはウロボロスの能力で模倣したものであることが判明した。本人としてはそのことには興味がないが、都築京香はウロボロスを敵視しているという噂を聞いてからは「一族を抜けた｜裏切者《ダブルクロス》の自分にかける温情もないだろう、出会ったときには排除されても仕方ないかもしれない」と考えている。

また、他人の感情の機微に敏感な面があるが、あまり自覚はない。