彼は22歳のころ、FHに連れ去られた。のちに妻となる恋人と食事をし、彼女を家まで送ったあとの事だった。帰宅途中、忽然と姿を消した。何かしらのエフェクトでさらわれたのだろう。研究所で彼は実験体にされ、当時、存在していなかったトライブリードに目覚めさせられた。
　幸運だったのはすぐにUGNエージェントによりその研究所は壊滅したことだ。彼以外の実験体は、非人道的な実験を長く行ったことにより全員ジャーム化していた。日にちが浅かった彼だけが生き残ったのだ。そうして、UGNに保護され、そのままUGNエージェントに就いた。

　彼の能力は非常に極端である。オーヴァードとの戦いでは有効な攻撃を与えられない一方、高い防御力を誇る腕を自由自在に伸縮させる能力、出血をコントロールすることで失血量を減らし、さらに高速で傷口を治す無尽蔵な生命力を持つ。まさに、守護神と言っていい。ここまで極端なのは、実験により無理矢理トライブリードに目覚めた弊害と考えられる。
　しかし、当時彼には非常に大切にしていた恋人がいた。想いが影響を与えた可能性もある。今となっては確かめる術はない。
確かなのはこの力で彼はたくさんの命を救ってきた。そして救われた者からたくさんの感謝を受けてきた。その感謝が彼を「人」に繋ぎ止めるもう一つの命綱になっているのは疑いようがない。

【権限記録】暴走時について

　保護されてまもない頃、レネゲイドを制御できず暴走するときが度々あった。当時、彼の精神状態が不安定であったのも大きい。幸い、死者は誰も出なかったが、その時の彼が使う力は今とは全く真逆である。暴走した彼の前では防御は意味を成さず、距離を取っても腕を伸ばして追跡する。破壊神と言っても差し支えない凶暴さであった。
　今はジャーム化の傾向もなく、人のために自らを盾にする献身的な人間だ。しかし、もしジャーム化したならば――脅威であるのは間違いないだろう。