天照信仰が強い地域で生まれた向日葵のレネゲイドビーイング。
江戸時代、その地域では渡来した向日葵を育て名産としていた。村人は太陽を追う向日葵の姿を天照大神と結びつけ、やがて神様の化身として崇め奉るようになる。村周辺は降雨量が多く、太陽の恵みを祈るためであったとも伝えられている。
しかし時代が下るにつれ気候は変化し、太陽は逆に疎まれ、伝承は薄れていった。科学が発達し神秘も薄れ、神性を表していた薄金色の髪は黒く染まり、やがて姿どころか自我すら保てなくなった。
数十年前の事件の際にようやく意識を取り戻すものの誰に見留められることはなく、ただぼんやりと向日葵畑で過ごすだけの日々を送る。

そんなある日。ひとりの少年が彼女を見つけた。
身体が弱いらしい少年はよろけながらも彼女に近づき、その手を取った。
僅かな夏の逢瀬。そこで交わされた『約束』。
そのために彼女は自分を生み出した土地を枯らし、少年に命を注いだのだ。

彼女は少年と共に村を出た。
もうその村で向日葵が咲くことはない。彼女の花が咲くような笑みは、いつだって少年の傍にある。