ハルダは戦う以外の生き方を知らなかった。親と別れて小さな戦力として扱われ始めた頃、同じ部隊の仲間としてロアとよく行動を共にした。標語「人間は敵ではない」を掲げ、争いがなくなることを願うロア。そんなロアにハルダは感服し、その思想に影響される。敵部隊と話し合いの場を設け、ロアがそのカリスマ性で調停する。ロアは少しずつ敵部隊を仲間に引き入れながら第３の派閥を形成した。その場を目の当たりにして、ハルダは戦うより話し合いでの決着を好むようになった。ハルダは実質的なロアの右腕として働き、話が通じない状況の相手をしてきた。
そんなある日、拡大する第３派を危険視した者に善意を利用されてロアが殺される。いとも簡単に大切なものが失われる、戦争への恨み。時に人の道を外れる、人間への失望。そして、争いなき世界の夢物語を見せた｜平和主義者《ロア》へのどうしようもない怒りが、ハルダをオーヴァードたらしめた。戦後、妹以外の特定の人物に肩入れしたり組織に属することを避け、お金という分かりやすい基準で意思決定するように意識している。しかし本人は無意識ながら、正義感と人間への熱い想いは消えていない。

５つ年下（17歳）の妹にジャスミィがいる。ハルダによって他国へ避難させられた。UGNに保護されて今は日本に住んでいる。姉が滅多に帰らないため、幼い頃の記憶が曖昧なのと思春期に入ったこともあり他人行儀である。大和撫子のような性格。屋内にて手芸や料理、読書をして静かに過ごすことを好む。コミュニケーションを苦手とするが、

戦時中の親友であり、心の支えであり、ハルダの人格形成に大きく影響を与えた人物である。名前はロア。第三派閥の指導者と忠誠心を持って従った者という関係性から、本質的にはハルダにとって初めての主人ともいえるだろう。死後もハルダの心に影響を与え続けている。尊敬も憎悪もしきれない、複雑な感情がハルダを苦しめている。

ハルダが妹のために直接何かをできたのは、オルゴールの工作を手伝ったことだろう。ハルダは妹の元へ１週間だけ帰ったことがあった。当時10歳の妹がハルダのよく口ずさむ歌をねだったため、ゼンマイ式のオルゴールを共に作った。後日、方法を学んだ妹が同じやり方でオルゴールを作成した。元は、オルゴールの作り方を学びながらプレゼントを交換できるという妹の作戦だったのだ。結果として２人はこの思い出をとても大切にしている。ハルダに贈られたオルゴールは、子守歌のメロディーを流す。もし音を流せない場所であったとしても、オルゴールを見て引き出される妹の記憶がハルダに勇気を与える。一方で妹はオルゴールを聞いて、姉が今何をしているか思いを馳せる。そうして、両親もいない、姉も帰ってこない淋しさを埋めるのだ。