愛は、憎悪である
憎悪は、愛である
憎悪とは
全てである

愛はなぜ生まれる
愛する感情は【憎悪することで】認知できる

憎悪はなぜ生まれる？
愛の砕け散る所以である

喜びや、悲しみや
人が人足りえる様々な感情が
何もかもが
【憎悪から成り立つ】

憎悪を抱く闇を知るからこそ、喜びを覚える
憎悪を発散した瞬間、喜びを感じる

悲しみに暮れる原因に憎悪を抱く
憎悪は悲しみを打消し、また別のものを生む

「わかるかい？」

すべては憎悪
憎悪はすべて

「母さんは、どうすればいいの？」
そういった母は、首を吊った。
目の前で

父がそうさせたのだ
彼はイイヒトで、優秀であった

だからこそ、愛されたい母は涙を流した
愛だった
俺が壊れた理由も
母が壊れた理由も
父が壊れた理由も

≪診断結果は、愛でした≫

病名は、愛でした



「どうしてわかってくれないのっ！」
そう叫ぶ母

「愛しているさ！だが、君たちと生きるためにも！
この社会で生き、日銭を稼ぐことも必要なんだ！
わかってくれ･･･！」
そう力説する父

いつものことなんだ
なんだかんだで、その憎悪は愛に変わる
そうなるはずだった

その次の日、母は首を吊った
学校から帰った時、冷たくなった母を見た
宙吊りになり、手紙をくしゃくしゃに握りしめて

【どうすればいいの？】

その一言が綴られていた
愛してほしかった
わかっていた
わがままをすこしかなえてほしかった
仕事、がんばってほしかった

その数々が乗せられていた一言

「ーあーー？」
腑抜けた声しか出なかった
立ち尽くし、父が帰り、絶叫し

父は、その日から壊れた


「ほら、食べなさい」
にこやかに食事を差し出してくる
傍らに亡骸を抱え

腐臭のする、母だ

お涙頂戴のストーリー
起これば絶望
当人は涙も流れる間もなかった

父は愛してくれたんだ
その行動ひとつで母を殺したくせに

母も、口を開かず、勝手に死んだくせに

いっちょ前に俺ばかり愛した

憎むべき人に、愛された
うれしかった
その愛から憎むべきものが生まれた

そのまま、大人へとなった
時間は思っていたよりも優秀で
なんでも屋として多忙を極めれば
自然と過去すら忘れていた

依頼が届いた
「なっ･･･！？」
宛名｜行方 真三《父親》

死んだはずの父から、手紙が来た
ニュースになっていたはずなんだ

「今日未明、勤め先にて放火をし、犯人の行方 真三が
死体となって発見されました
遺書が残されており
【妻の後を追った】と
書かれていました」

「なんで、生きてやがる」

依頼を、受けなければいけないと
過去への清算をしなければいけないと感じた。

依頼内容
すべてを、憎悪に



その後のことは、よく覚えていない
覚えていることがあるとするなら

影が伸びて、火をつけたこと