ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

渦雷 刀牙 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

紫電の戦闘狂(フラッシュ・ガンモンガー)渦雷 刀牙(ウズライ トウガ)

プレイヤー:シロ

ぐだぐだ抜かしてんじゃねえよ。
戦場(ここ)で会ったが最後、語るは拳で十分だ」

年齢
22
性別
星座
獅子座
身長
181
体重
75
血液型
AB型
ワークス
UGNエージェントA/スポークス
カヴァー
用心棒
ブリード
クロスブリード
シンドローム
ブラックドッグ
ノイマン
HP最大値
30
常備化ポイント
+10=16
財産ポイント
+16=1
行動値
6
戦闘移動
11
全力移動
22

経験点

消費
+186
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 父親が幼い頃に故意による殺人事件を起こした。忘却により、このことはほとんど覚えていない。
犯罪者の子
経験 事件がきっかけでいじめに会う。この頃から吹っ掛けてきた相手を殴り倒す習慣が付く。
屈辱
邂逅 殴って殴って殴って殴る。そんな生活を繰り返している内に気付けばオーヴァードと化していた彼に、アリスは力を活かせる戦いの場を提供してくれる。
主人
覚醒 侵蝕値 思い浮かぶのは父親の顔。しかし、この男が誰だったのかは思い出せない。湧き上がるのは強い憎悪と憤怒だ。
忘却 17
衝動 侵蝕値 闘え、立ち会え、討ち合え、死合え、戦いこそが俺の存在証明だ。
闘争 16
その他の修正5エフェクト諸々
侵蝕率基本値38

能力値

肉体3 感覚1 精神4 社会1
シンドローム2+0 シンドローム1+0 シンドローム1+3 シンドローム0+1
ワークス1 ワークス ワークス ワークス
成長0 成長0 成長 成長0
その他修正 その他修正 その他修正0 その他修正
白兵7 射撃 RC1 交渉
回避1 知覚 意志 調達2
知識:レネゲイド 情報:UGN2

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 雷帝(サンダーロード) ミカヅチ取得。
Dロイス 達人(アデプト) 選択したエフェクトの侵蝕値を+2。判定ダイス+2D、攻撃力+5。
上司 アリス・ウィスタリア 有為 無関心 「俺がやりたいようにやらせてもらえんならそれでいい。その限りは、俺はお前の牙だ」
同僚 楽一 桜閣 有為 無関心 「クソガキ。それ以上でも以下でもねえ。退屈はしねえがそれ以上にイライラする。特に狙ってんだか狙ってねえんだか分かんねえちょっかい掛けてくるのが腹立つ。――って言ってる傍から人の弁当食ってんじゃねえ!!」
同僚 相良正道 有為 無関心 「アリスの犬にしちゃ、牙が抜けてねえってのはおもしれえな。正義が何だって言うのは肌に合わねえが、嫌いじゃあねえぜ」
同僚 黒花槐 有為 無関心 「テメエは何様だ? 守れる守れないなってのはタイミングの問題だ。うじうじしてるくらいならその力を使って動きやがれ」
同僚 蕪木唯作 有為 無関心 「相変わらず先輩様はアリスに随分と慕われている御様子だな。引き受けてくれて助かるぜ。あのテンションで来られたら鬱陶しくてかなわねえ」

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
サイバーアーム 8 常時 自動成功 自身 至近
基本侵蝕+3。素手のステータスを変更。
ブラックマーケット 1 常時 自動成功 自身 至近
基本侵蝕+2。常備化ポイントを+【LV*10】。クリスタルシールド用。
八重垣(MAX) 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 3
ガード宣言時、両手の武器のガード値を合算(同じ技能(白兵等)に限る)
戦士の知恵 5 オートアクション 自動成功 自身 至近 1
ガード値を【LV*2】
磁力結界(MAX) 3 オートアクション 自動成功 自身 至近 3
ガード宣言時にガード値を+【LV】D。
バリアクラッカー 1 メジャーアクション 自動成功 自身 至近 4 80%
1シナリオLv回。ガード不可、装甲無視の一撃。
フルインストール(MAX) 3 イニシアチブ 自動成功 自身 至近 5 100%
1シナリオ1回。他エフェクトと組合せ不可。このラウンド中あらゆる判定のダイスを+【LV*3】D
コンセントレイト:ブラックドッグ(MAX) 3 メジャーアクション シンドローム 2
C値-3
アームズリンク(MAX) 3 メジャーアクション 〈白兵〉〈射撃〉 対決 武器 2
ダイスを+LVD
MAXボルテージ 1 メジャーアクション シンドローム 対決 4 80%
1シナリオLV回。判定ダイス-1,攻撃力+10。
コンバットシステム(MAX) 3 メジャーアクション 〈白兵〉 対決 5
判定ダイス+【LV+1】D。Dロイスの効果で侵食値+2。
エクスマキナ 1 メジャーアクション
リアクション
効果参照 対決 4 リミット
1シナリオLV回。コンバットシステムと組合せて使用。判定の達成値を+10。
ラストアクション 1 オートアクション 自動成功 自身 5 100%
1シナリオ1回。戦闘不能になったタイミングでメインプロセスを実行。行動済みでも使用可能。このメインプロセス終了まで戦闘不能にならない。
ミカヅチ 1 メジャーアクション シンドローム 対決 4 Dロイス
1シナリオLV回。判定ダイス-2D、攻撃力+3D10。

コンボ

”闘気燃焼” - Type Wild -

組み合わせ
コンセントレイトアームズリンクコンバットシステム
タイミング
メジャーアクション
技能
白兵
難易度
対決
対象
単体
射程
侵蝕値
9
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100未満
3+3+4+2
7
7
15
100~
3+4+5+2
7
7
16
160~
3+5+6+2
7
7
17
220~
3+6+7+2
7
7
18

通常攻撃

”雷霆万鈞" - Burst Rush -

組み合わせ
コンセントレイトアームズリンクコンバットシステムエクスマキナミカヅチMAXボルテージバリアクラッカー
タイミング
メジャーアクション
技能
白兵
難易度
対決
対象
単体
射程
至近
侵蝕値
21
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100~
3+4+5+2-3
7
7+10
3d10+26
160~
3+5+6+2-3
7
7+10
3d10+27
220~
3+6+7+2-3
7
7+10
3d10+28

侵蝕率的に使用は1回。増加分のラストワンはCatharsisで使用。
装甲無視、ガード不可。
エクスマキナの回数制限あり。

”我流・闘気解放” - Catharsis -

組み合わせ
フルインストールコンセントレイトアームズリンクMAXボルテージコンバットシステムエクスマキナミカヅチバリアクラッカー
タイミング
メジャーアクション
技能
白兵
難易度
対決
対象
単体
射程
至近
侵蝕値
26
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100~
3+12+4+5+2-2-1
7
7+10
3d10+26
160~
3+15+5+6+2-2-1
7
7+10
3d10+27
220~
3+18+5+6+2-2-1
7
7+10
3d10+28

全部乗せ(フルインストールの関係で1回きり)
125%程度の時にフルインストールで調整し、130%に乗せて打つのが良い。

”鋭盾” - Assault Berserk -

組み合わせ
八重垣戦士の知恵磁力結界
タイミング
オートアクション
技能
難易度
対象
自身
射程
至近
侵蝕値
7
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
~100
3d10+17+8+10
100~
4d10+17+8+12
160~
5d10+17+8+14
220~
6d10+17+8+16

基本のガードコンボ
()外がガード値、()内が装備の装甲値
100%未満:3d10+17+10(+8)
100%以上:4d10+17+12(+8)
160%以上:5d10+17+14(+8)
220%以上:6d10+17+16(+8)

武器常備化経験点種別技能命中攻撃力ガード
射程解説
サイバーアーム 白兵 〈白兵〉 0 LV+3 5 至近
クリスタルシールド 15 白兵 〈白兵〉 -1 0 12 至近
防具常備化経験点種別行動ドッジ装甲値解説
鎖帷子 16 防具 -1 -1 8

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
0 16 300 0 0 316 0/316
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

〇背景ストーリー(アリスとの出会いまで)

ある年、一家惨殺の凄惨な殺人事件が都内で発生した。
調査が進んだ結果、それは渦雷家の家長が起こした事件だったことが判明した。
それが俺の父親……だったらしい。

過去のことはほとんど覚えていない。
俺の中にある記憶は殴り合い、飯を喰らい、ただただその日を生きる。
そんな生活の連続だ。

家族がどうなったのかだとか、周囲の目がどうだっただとか、そんなものは俺には関係ない。
必要なのは勝ち上がる強さと暴れられる場所、それだけで俺には十分だ。

闘争しか望まない中で、俺はいつしか化け物に成り果てていた。
だが、それすらも最早関係ない。
この力すら俺には闘争の道具でしかないのだから。

「……あれか。ったくもう、こんなごりっごりの肉体派のところに僕なんか派遣してどうすんのさ」
『いえいえ、貴方だからこそですよ。痛いのが嫌であればより本気で避けるでしょう?』
「本ッ当に嫌な性格してんな! 鬼か!!」

そんな生活をしている中で、俺の元に客人がやってきた。
ひょろひょろとした軟弱そうなやつだった。
もう一つの声は通信機越しに聞こえてきている。

『渦雷刀牙、紫電の戦闘狂とはまた仰々しいコードネームですね』
「何だ、お前ら?」
『私たちはUGNという組織の者です』
「その使いっ走りでーす」
『あなたの噂を聞いて少々興味が湧きましてね。どうやらあなたは戦いの場を求めているそうではないですか』
「それがどうした?」
『その場所を提供して差し上げると言ったら、話に乗っていただけますか?
あなたが持つその力を、存分に振るえる舞台があるのですよ』
「……へぇ。だったら御託は良いよ」
(お、話が早そうで良かった)
「その口ぶり、お前らも俺と同じ力を持ってるんだろう?
だったら言葉は必要ねえ。望みがあるなら、使うのは口じゃなくて(こいつ)で十分だ」

小手調べのジャブ。
速度には自信があったが、手ごたえはなかった。

「あぶなッ!? 問答無用かよ!」
「思ったよりも素早いな。これなら本気でやれそうだ」
『あらあら、説得は失敗のようですね』
「絶対こうなること分かってたよね!?」

周囲を俺の力が満たしていく。
力を開放した時、どうにも周囲には何かの力が広がっていく感覚があった。
そして……そう、この感覚だ。
この感覚に身を委ねる時、闘争に心を支配された時だけ、俺は生を実感できる。

「全く……なんかこう、別ベクトルだけど先輩に近いものを感じるな……。
まあ、そうなってくれたのは好都合か……。
長引くのもしんどそうだから飛ばしていくよ。
――裏切り者が告げる死(Faker's present)”」

――次の瞬間、俺の意識は飛んでいた。
気が付くと、どこだか分からない部屋の中で俺は横たわっていた。

「お目覚めですか?」

近くから聞き覚えのある声が聞こえる。
目を向けると、杖を突いた少女が窓から景色を眺めていた。

「……俺に何をした?」
「彼の力は少々特殊でして。あなたの持つオーヴァードの力を暴走させて自滅させたのですよ」
「……よく分からんが、俺は負けたのか」
「そういうことになりますね」

初めての敗北。
これまで闘争に突き動かされてきた俺という存在が揺らいだ感覚はない。
だが、どこか憑き物が落ちた感覚が同時にあった。

――おい、ここにはあんな奴らがまだいるのか?」
「ええ、それはもうたくさん」
「……ハッ、そうかい。だったら文句はねえか」
「おや。その様子だと、お眼鏡に叶ったようですね」

言いながら彼女は薄く笑みを作り、杖を突くのと反対の手を差し出してきた。

「ようこそ、UGNへ。あなたにはこれから私の下でキビキビと働いていただきますよ」
「上等だ。言葉はいらねえ。俺が全部喰らい尽くしてやるよ」

そう言って差し出された手を軽くはたいて部屋を出る。
面白え……こんな面白え世界があったのか。
――ここなら渇くこともない。
――何にも気兼ねすることなく、俺は俺であり続けられる。

自然と、俺の口角はつり上がっていた。

〇背景ストーリー(AXO直属エージェントになるまでの道のり)

雷と雷がぶつかり合う。
その衝撃で弾けた雷光が周囲に火花となって霧散していく。

――ここはUGNの修練場。
元々は簡易的な設備だったが、とある一件を経て設備再建の折に増設された場所……らしい。
その辺りは俺も詳しくは知らない。
何より、現在はUGNのエージェントよりもチルドレンたちが使う頻度の多い場所とのことだ。

管理人と思しきじいさんが、冷や冷やした様子を見せつつこちらを伺っている。
その横には、同じく冷や冷やとした様子でこちらを見ている男と、口数の少ない女の姿があった。

――どっちもまだガキだ。
――でも、目の前のこいつもあのじいさんも、どいつもこいつも場慣れしてやがる。


「へへッ、久しぶりにやりがいのある相手じゃねえか」
「……あの人、嚆矢と渡り合ってる」
「いやー、しかし……これはその……手合わせの範疇を超えていやしないかい?」
「本当にな。頼むから怪我だけはしないでくれよ」

強化コンクリートで固められた室内には、既にいくつものクレーターが出来上がっていた。
一部は俺が作ったものだが、ほとんどは今やり合ってるこいつが作ったものだ。

「固いこと言うなって。このくらいだったら怪我したってすぐに治るんだし良いだろう?」
――酷い怪我になったら誰が治すと思ってるの?」
「おっと、いけね」

一瞬女の方から強力な怒気が発せられた。
俺との殴り合いで汗一つ流していない癖して、こういう時は冷や汗を流しやがる。

「チッ、ずいぶんと余裕じゃねえか」
「怒んなよ。これでも力は惜しみなく使ってるんだぜ?」

――そもそも、俺は何でこいつ、桐生嚆矢と殴り合いをしているのか。
話は1時間程前に遡る。

『渦雷さん、あなたにはこれから修行をしていただきます』
『ハア? 藪から棒に何言ってんだ?』
『あなたは確かに一般社会では腕が立つかもしれません。
ですが、ドッペルとの一戦で身に染みたはずです。
こちらの世界ではあなたは良くて私の玩具、悪くて三下以下といったところでしょう』
『テメッ……喧嘩が売りてえなら売りてえってストレートに言いやがれ……』
『おやおや、そんな血気盛んに指を鳴らさないでください。怖いですね』

そんなことを言いながらも、こちらに対してクスクスと笑いながらアリスは言葉を続けた。

『私が今欲しいのは新たな盤上の駒。私の手足となる精鋭です。
いくら私でも準備不足のまま相手の土俵に立ってしまえば、後手に回って苦戦せざるを得なくなります』

言いながら目の前の小さな女帝は俺に向かって指を突きつけた。

『あなたには強くなっていただかないとつまらないのですよ。
他にも手段はありますが、せっかく見つけた掘り出し物なのですからね』
『ケッ、好き放題言いやがる』
『事実を言ったまでです。
それに、これはあなたにとっても利がある話です』

そう言って、アリスは机に置かれた一枚の紙を差し出してきた。

『んだこれ?』
『あなたが気持ち良さそうに寝ている間に、こちらで段取りを組んでおきました。
UGN日本支部長直属の組織、リベレーターズとの模擬戦です』
『直属って……どいつもこいつもガキじゃねえか』
『ええ、リベレーターズはチルドレンのための組織ですから。
ですが、相手を子供と侮っているようではまだまだです。
私もドッペルも同じようにまだ子供でしょう』

相も変わらずこちらを小馬鹿にしたようにクスクス笑うアリスに苛立ちを覚えつつ、
俺は改めてリストに目を落とす。

『先鋒、中堅、大将の3番勝負――こっちは当然1人だが――
この桐生ってやつが最初の相手か』
『ええ、前哨戦だと思って肩の力を抜いていくことをおすすめします。
何より、彼はあなたと同じブラックドッグの能力を持っているので参考になると思いますよ』


――そうして現在に至る。
手を合わせてみてはっきり分かった。
何が前哨戦だ。この中で一番強いのは間違いなくこいつじゃねえか。

高速移動と勢いを乗せた強烈な一撃。
加えて、電気で肉体を刺激し、要所要所で能力を底上げしている節も見られる。
へらへらした様子を見せながらも、その立ち回りには一切隙が無い。

「確かに腕っぷしは強えけど、その様子だとまだ力に慣れてねえみたいだな」
「言ってろ。俺だってただ闇雲にぶん殴ってた訳じゃねえ」

俺に宿っていた力は雷だけじゃない。
学がないこの身には不似合いとは思うが、分析と思考の力が俺にはあるとアリスが言っていた。
自覚した今なら、それを最大限使わない手はない。
何よりもこんな面白い相手を前にして出し惜しみなんて性分じゃねえ。

(――雰囲気が変わったな。こっちも余裕かましてる場合じゃなさそうだ)

二柱の雷が部屋の中央に屹立する。
閃光を合図に二人は走り出し、幾度も互いの拳を打ち付け合う。
往なし、躱し、打ち込み、また避ける。
互いに一歩も譲ることはなく、しかし決定打が決まることはない。
そんな時間が永遠にも感じられる1分の間に絶え間なく繰り広げられた。
しかし、終わりはあっけなく訪れる。

――ッ!?」

桐生が足元に散らばったコンクリート片を踏み、体制を崩す。
これまでこいつが見せてこなかった明確な隙、これを逃さない手はない。

「もらったあああああ!!」

腰の入った拳は確かに桐生の顔面を捉えた。
――はずだった。
やつの顔面を貫いた腕に感触はなく、正面にいたはずの存在は残像となって消えていく。

「バーン! なんてな」

気付くと背後には指を鉄砲の形にして俺の頭に突き付ける桐生の姿があった。

「今のは流石に危なかったぜ。勝負はこんなもんでいいだろう。
流石にそろそろ明日香の雷が落ちそうだ……」

視線を向けると、ご立腹の様子で少女がこちらを見ていた。
その隣にはいつの間にかアリスが立っている。
何やらスマホをいじっているようだが、視線はこちらに向けられていた。

「ええ、頃合いですね。御二人ともお疲れ様でした」
「てめえ……何が『前哨戦だから肩の力を抜け』だ。先鋒に大将持ってきやがって」
「え、俺そんな風に言われてたの?」
「その方が面白そうでしたからね。
いかがでしたか? リベレーターズのリーダーは?」
「てめえの言葉がなければ最高の相手だったよ。またやりてえくらいにはな」
「おう、いつでも相手になるぜ。俺もいいトレーニングになるしな」
「……おい、嚆矢。あんまり軽いこと言わない方が良さそうだぞ」
「あん?」
――嚆矢、ちょっとこっち来る」
「…………うむ、青春だな」

桐生が引っ張られていく様を全員で見届けた後、改めてじいさんが口を開く。

「しかし、私も仲間内で何度も本気でぶつかり合うことは推奨できないな。
施設内で軽率に戦いを吹っ掛けるなんてことはやめたまえよ。
君はどうにも少々アウトロー寄りの気質があるようだから特にな」
「そうだな。
相良さんに下手なところ見つかって標的にされるなんてことだけは勘弁してくれよ。
あのおっちゃん本当におっかねえから」
「何だ、そのサガラってのは?」
「ふふ、いずれ会ってみればわかりますよ」



――クシュン!」
「何だ相良? 風邪でも引いたか? お前らしくもない」
「俺らしくないとはどういう意味だ? それに風邪じゃない。
すこし鼻が痒くなっただけだ」
「そうか。じゃあ作戦の話を続けるが――



――さて、こちらの作業もちょうど終わりましたし、今日の訓練はこんなところで良いでしょう」

それまで会話をしながら操作していたスマホで何か処理をすると、アリスは懐に端末をしまい込んだ。

「会話しながらスマホいじるなんざ器用なことするもんだ。
誰に何を送ったか知らねえが、打ち間違えてても知らねえぞ」
「御心配には及びません。文字を見る必要はありませんでしたから」
「は?」

訳の分からないことを言ったアリスは上機嫌で修練場を後にしようとする。

「そうそう、お腹もすいているでしょうから食事は既に用意させておきました。
今夜は懐石料理だそうです」
「冷や冷やしっぱなしで気付かなかったけど、そういえば腹減ったな」
「ああ。時間も程よいし、皆で食事の時間にしようじゃないか。
君も一緒にどうかね?」
――慣れ合うつもりはねえが、腹は減った」

他人と同じ食事を食うなんざ何年ぶりか分かったもんじゃない。
しかしまあ、設備があるなら利用させてもらうに越したことはない。
何でもいい。俺はここで力を身に着ける。
それだけ目的がはっきりしてるなら十分だ。

――ああ、ちなみに明日は槐さんと茂木さんにもタッグで闘っていただきますからそのつもりで」
「え、俺も?」
「わ、私は流石にあのレベルは遠慮したいな……」




――と言うことがありましたので、先輩として力の使い方を教えて差し上げてはいかがでしょう?
引き受けてくださるなら、ヒヨコの件でのお礼も兼ねて、イタリアンでも用意してお待ちしております。
それとも、ここはあえてフレンチの方がよろしいですか?』

2種類の音でのみ構築されたその音源を解読し終えたところで、彼は支部長の執務机に突っ伏した。

「失礼します。……お疲れですか?」
「……ええ、まあ。とりあえずこの後の予定は全て10分ほど遅らせてください。少し休憩します」
「……承知いたしました」

ため息混じりに秘書の役目を担うエージェントは部屋を出ていく。

――ただでさえ文字数の多い日本語のモールス信号で送ってきた癖して、
内容が近況報告だけってしょうもないにも程があるでしょう……。
そんな面倒事のためだけに、僕は絶対帰りませんからね」

〇ToK後~Re:la porte前まで Part1

目の前には3体の血で出来た化物と、狂った軍人。
隣にいるのは浅黒く焼けた肌を持つ俺と同年代の男が1人。
鈍っていた体を動かすにはちょうどいいが……どうにもイライラする組合せだった。

-数日前-

――きっかけは、いつも通りあいつの思い付きからだった。

『渦雷さん、あれから体の方は問題ありませんか?』
『……んだよ、気色悪い。テメエが人様の体を心配する性質か?』

昼飯を食っている最中に投げかけられた質問に、薄気味悪さを感じながらも俺は箸を置いて話に応じる。
俺、アリス、クソガキの3人は、原初の果実の一件が片付いてから、日本支部の一室を間借りして過ごしていた。
あの一件を通してそれなりにダメージを負っていた俺は、余計なお世話だと思いつつも、アリスが設けた休息期間を過ごしていた。
隣で喚くクソガキのせいで気が休まったかと言えば否だが、体は鈍っちまうくらいには休まっていた。

『いえいえ、上司として部下の管理に思考を割くのは当然のことでしょう。それで、返答は?』
『何も問題ねえよ。休みすぎて感覚が鈍りそうなくらいだ』
『おや、運動は十分しているように見えましたが?』

意地の悪い笑みを浮かべながら、アリスは楽一に視線を送る。
当の本人はその視線に気付かず、会話で箸を止めた隙を見計らって「食べないなら貰うよー」などと言いながら昼飯のおかずを盗んでいく。

『仕事がねえからって御守りさせてたのはどこのどいつだ……アァ?』
『おやおや、怖いですね。ですが、あなた方はお互いがストッパーになれるので、私としては一緒に動かした方が都合が良いのですよ。それに、あなた方は中々面白いコンビだと思いますよ』
『冗談でも次行ったらぶん殴るからな』
『まあ、冗談か本音かはさておき、本題に入りましょう。実はN市の方から今のあなたにぴったりの通知が来ていまして』

そう言って、アリスはチラシのようなものを差し出した。
受け取って目を通せば、戦闘訓練を行うイベントを企画している旨が書かれていた。

『戦闘訓練だあ? こんな真面目腐ったもんに出ろってか?』
『初めての試みなので、まずは予行演習を見て内容を確認したいと霧谷さんが仰っていまして。渦雷さんなら忌憚なく意見を出せるでしょうし、実験体としては打って付けでしょう?』
『…………真面目な意見求めんなら黒花にでも任せりゃいいじゃねえか』
『いえ、その案は却下です。既に予行演習にエントリーしている方が槐さんに近い立ち回りをするようなので、面白みに……パターンに乏しいですからね』
『本音漏らしてんじゃねえ、少しは隠しやがれ』

そう言いながら、隣で人の弁当を全て平らげ、満足そうな表情を浮かべているクソガキの頭をしばく。

『いったー。何ですか?』
『人の弁当残さず平らげておいて何ですかって何だ? みみっちい喧嘩の売り方してんじゃねえ、クソガキ!』
『えー、残していたそっちが悪いじゃないですか。話をするならご飯はちゃんと食べ終わってから話さないと』
『どこをどう見たら残してるように見えんだ?』
『箸置いてたじゃないですか』

もう一度頭をしばこうとしたところで、今度は正面から見ていたこともありその腕を止められる。
取っ組み合いの姿勢になったところで、俺は楽一の顔面にチラシを突きつけた。

『別に忌憚なく意見言えるなら俺じゃなくてもいいだろう? 頭は足りねえが、だったらこのクソガキに行かせたらどうだ?』
『えー、嫌ですよ。何か面倒くさそうだし』
『ええ、そうですね。楽一さんは向かないでしょう。それに、私も護衛は残しておかなければいざという時に困ります。という訳で、これも1つの経験だと思って行って来て下さい。まだ見ぬ猛者に出会えるかもしれませんよ?』
『………………これでつまんねえ奴しか出てこなかったら、後で覚えてやがれよ?』
『それは保証します。能力の面では申し分のない方が教官を務めてくれるようですから』


-現在-

(確かに、これまで戦ってきた中にはいなかったタイプだな。頭はイカれていやがるが、軍人上がりってのは嘘じゃねえみてえだ)

こちらの攻撃に対し、傍らに置いた従者が的確にカバーに入り、手が空いている他のやつらが一気に踏み込んで重めの一撃を叩き込む。
攻防一体のバランスが取れた布陣が働き、鈍った体に心地よく衝撃が響く。

(ムカつくが、的確にレベルアップの機会を用意してやがるのは流石としか言いようがねえか)

――調子に乗らせるのも癪だから、絶対に言わねえけどな」
「訓練生! 中々に良い動きじゃないか。だが、無駄口を叩いている余裕があるかな?」

不敵に笑う教官の男(オンタリオとか言ったか?)は、こちらに対して言葉を投げながらも、その手を緩める様子はない。

「ハッ! まだまだ余裕に決まってんだろ! 何なら体が温まってきたところだよ!」

言いながら自分の中のギアを一段階上げる。

「威勢がいいな。なら、こちらも少しだけ本気を出すとしよう」

切りかかってきた従者の一体に全力の一撃を一発叩き込んでねじ伏せると、次の一体が切りかかってくる。
いつものようにこれを受けようと、防御に神経を集中させた時――
その男は俺と従者の間に突然割り込み、自分の身一つでその一撃を受け止めた。

「…………あ?」
――ふぅ、いや、危なかったね。大丈夫?」
「……いや、何が?」

『そういえば』と、水を差されて落ち着いた頭でアリスの言葉を思い出す。

『既に予行演習にエントリーしている方が槐さんに近い立ち回りをするようなので――

(――いや……いやいやいや……こいつ、防具無しで今の攻撃を受けきっただと? 頭おかしいんじゃねえか?)

「いい攻撃ですね。ですが、僕がいる限り、彼には指一本触れさせませんよ」
「ほう……いい受けだ。お前のような戦い方をする奴が来るなら、訓練の内容を少し見直した方が良いかもしれないな」
「……おい」
「何ですか? お礼ならいりませんよ。これが僕の戦い方ですから」
「違えよ。勝手に割り込んでくんじゃねえ」

戦いのテンポを乱されたことに苛立ちながらも、俺は再び従者との戦闘を再開した。
だが、どのタイミングでもこちらが盾を構える適切なタイミングで、隣の男は間に割り込み、受け止める予定だった攻撃をその身で肩代わりしていく。

「……だぁ! うざってえ! 岸部とか言ったか? 何なんだ、テメエは!?」
「だから、言ってるじゃないですか。これが僕の戦い方なんですって」
――余所見をしているとは、随分と舐められたものだな」

最後の従者を叩き潰したところに、隙を叩くようにしてオンタリオが切り込んでくる。
咄嗟のことに判断が一瞬遅れたが、相変わらず的確なタイミングで岸部は俺のカバーに入る。
入れ替わるようにして反射的に突き出した拳を、俺はオンタリオの眼前で止めた。

――やるじゃないか。予行演習とはいえ、及第点の実力だな」
「…………チッ。岸部」
「何ですか?」
「俺の流儀じゃねえが、戦いやすかったのは確かだ。だが、二度と俺を守んじゃねえ。俺の中でのテンポが狂う」
「はぁ、そうですか? 何と言われようと、僕は自分のやり方は変えませんし、戦いの場で一緒になったら当然守りますからね」
「その時は、余程のことがなければテメエを後ろからぶん殴ってやる」

そう言葉を残し、すっきりしない気分のまま、俺は訓練場を後にした。

〇ToK後~Re:la porte前まで Part2

準備運動を済ませたところで、黒花を盾役として目の前に立たせる。

「おい……本当にやるのか?」
「前は力に慣れてなくてぶち抜けなかったからな。その盾、一回くらいはぶち抜いておかねえと気が済まねえ」
「いや、仲間にぶち抜かれるのって物凄く複雑な気分なんだけど……」

渋々と言った様子で、黒花は盾を構え、全力で受け止める姿勢を作る。
その様子に思わず口端を吊り上げ、こちらも全力の一撃を叩き込むために構えを作る。

「この一撃でテメエをノセなかったら俺の負けだ。飯でも驕ってやるよ」
――それで納得するのも何か嫌だな……」
「四の五の言わずに受け止めろ。――行くぜ」

大きく一歩を踏み込んで打ち込んだ一撃は黒花の盾を貫く。
しかし、その前にこちらの勢いを削ぐように力を使われたため、奴はこちらの一撃を受けきった。

――チッ……。テメエ、前よりも固くなってねえか?」
「そりゃあ、こっちだって任務で外出てるからな」
――次はぶち抜く。約束通り好きなもん驕ってやるよ」
「じゃあ、そう言うことなら――


「おや、あなたがこちらに出向いてくるとは珍しいですね」
「あー、ども、お久しぶりっす」
「それに、まさか渦雷さんがお友達を連れてくるとは」
「そのうざってえにやけ面を今すぐ止めろ。連れてきたのは交換条件のせいだ」
「いやそのー、俺とこの人で勝負して、条件的には俺の勝ちだったから、飯を驕ってもらうことになって。
せっかくだから、交流も兼ねて、そっちの人とリベレーターズで焼肉でもしようかなって思ってですね?」

黒花は楽一を指し示しながら、状況を説明する。

「親睦会ですか。なるほど。その買い出しで留守になる間、槐さんが私の盾として動いてくれるという訳ですね」
「そういうこった。こいつがいれば万が一何かあったとしても、死ぬことはねえだろ」
――負けたんですね」
「条件では負けただけだ。盾自体はぶち抜いた。癪だがそれで満足しやがれ」
「ふむ、まあ良しとしておきましょう。でしたら、楽一さん、こちらをお持ちください」
「何これ?」
「先ほどお伝えした件について、少しの間、あなた方には新しい肩書を設けておきます。
その身分証があれば事足りるでしょうから、必要に応じて使ってください」
「んー、よく分からないけど、何かあった時に出せばいいんですね」
「その認識で構いませんよ。では、道中お気をつけて」

そんな風に詳細を語られないまま俺たちは送り出される。
そして、サラッと流れていた話に当然ながら浮かんだ疑問を、そのまま隣にぶつけた。

「……おい、何ださっきの? 身分証とか言ってたよな? 見せてみろ」
「んー……いや、これはオレのものだから見なくても良いと思いますよ」
――ハァ?」

渡された身分証を眺めた楽一は、そんな頓珍漢な返しをしながら、ケースを首にかけて胸元にしまった。

「待て、今の流れで何でテメエの分だけになる?」
「何でも何も、そう書いてあるから仕方ないじゃないですかー。文句があるならアリスさんに言ってくださーい。ほら、早くご飯買いに行きましょうよー」
「テメエも少しは説明しようという姿勢を見せやがれ! 話聞いてんだろうが!」
(…………あの野郎、また何か企んでやがるな)

-1時間後-

近場のスーパーで必要なものを買い込んだところで、俺たちは帰路に就く。
人数の規模は聞いてきたが、明らかにその人数で必要な量の倍は買い込んだことに、納得がいかないままその元凶に視線を送る。

「別に金には困ってねえからそこはいいが……テメエどんだけ好き勝手カートに物ぶっこんでやがんだ!」
「食べる分だけに決まっているじゃないですか。オレがご飯残したことありましたか?」
「知らねえよ。俺が知ってんのは、テメエが人の飯まで平らげるような食い意地の塊みてえな存在だってことだけだっつーの」
「いやいや、あれはお残しした人が悪いんですよ」

そんなことを、くわえていた棒付きの飴を手に持ちながら、隣のクソガキは悪びれもせずに宣いやがった。
返答にイラつきながら歩いていると、視界の端に路地裏に入っていく集団が見えた。
その風体を見た楽一はボソッと呟く。

――あ、多分お仕事しないとですね」
「勝手にやってろ。中身も知らねえような話に絡むつもりはねえ」
「いやー、それ無理ですよ。今はオレが上司なのでー」
「……誰が、誰の、何だって?」
「オレが、あなたの」

自分とこちらを交互に指さす楽一に顔をヒクつかせ青筋を立てていると、路地裏の方からワーディングの発生を感じ取る。

――あー、話が早くて助かるぜ……。さっさと帰って上下関係を正してもらえわねえとな!」

荷物を適当な場所に置き、路地裏に向かって駆けこむと、追ってきた楽一が胸元の身分証を見ながらぬるりと声を発する。

「はーい、オレたちはR担特殊……捜査課?のものでーす。ちょっとお話……」

そこで楽一は言葉を切る。
同じように、俺もそこで広がっていた光景に一瞬言葉を失った。

――ん? あー、R担の人? って、オーヴァードじゃないか。いつの間にか警察内部にもオーヴァードの居場所ができたんだね」
『いえ、そんな話聞いたことありませんよ。UGNからの派遣じゃないですか?』

そこに居たのはサングラスをかけた赤髪の男と、少し小柄な人型のロボットだった。
ロボットの方は声から察するに中に入ってるのは女だ。
男は事も無げに先ほど路地裏に入っていった集団を氷漬けにし、ロボットは背後から襲ってきている一団の攻撃を受け止めていた。

「んだ、テメエら? 何してやがる?」
「僕たちはイリーガルだよ。オーヴァードが絡んだ薬物事件が発生しているって話があったから、日本に帰って来たついでに取り締まっておこうかなって思ってね」
「じゃあ、オレたちと目的は同じみたいですねー」
『そういうことなら力を貸してもらってもいいですか? 大したことない敵だけれど、数が多いから困っているの』
「んー、そういうことなら。あんまりおいしくなさそうだけど、食べられるならそれに越したことはないか」
「何から何まで気に入らねえが、楽しみは見つかったな。テメエら、協力してやる代わりに後でツラ貸しな」

俺の言葉に2人は疑問符を浮かべた様子だったが、一先ず雑魚どもを片付けるために俺たちは拳を振るった。


-戦闘後-


「助かったよ。協力してくれてありがとう」
「ぬかせや。テメエの力なら、あのレベルの敵だったら束になったところで屁でもねえだろ」
「うーん、随分と柄が悪いね、君のパートナーさん」
「いつもこんな感じですよ?」
「そっかー。まあいいか。改めて自己紹介を。僕は氷室活水」
「私は千本木燎里です」
「それで、僕たちに何をして欲しいんだい?」
「どうってことはねえ。俺と立ち会ってもらえればそれでいい」
「立ち会う? どういうことですか?」
「言葉通りだ。俺は強くなることに貪欲でな。テメエらみてえなやつらを見ると、一戦交えねえと気が済まねえ」
「野蛮な人。あなたの手は誰かを守るためにあるんじゃないんですか?」
「俺をどう使うか判断するのは飼い主の仕事だ。そこのクソガキじゃなくて、別のな。
今俺に求められているのは強さだ。なら、俺は俺の好きなように戦って、高みを目指して力を付けるだけだ。
そもそも、俺はそういう生き方しか知らねえ」
――なるほど、そういうタイプの人間か。……やろうか、燎里ちゃん」
「本当にやるんですか?」
「僕ばかりと手合わせするよりは、新しい刺激になって君のためにもなる。こっちにとっても悪い話じゃない」
「……分かりました」

千本木は解いていた武装を再び身に纏う。

「テメエはさっきまでの戦いを見るに防御に特化した戦い方をするみてえだな。
本気で守りを固めな。こっちも本気でぶち抜きにかかるからよう」

無言で睨み合う間が数秒続くと、千本木は追加で盾を生み出し、2つの盾を1つに合体させた。

――んじゃあ、行くぜ?」
――――ッ!?」

黒花に見舞った要領で、全力を乗せた一撃を見舞うために大きく一歩を踏み込む。
その瞬間、表情を変えた氷室が俺の横に姿を現し、俺の体を氷漬けにして自由を奪った。

「氷室さん……?」
「ごめんね、燎里ちゃん。前言撤回だ。彼と君との相性はあまりにも悪い。
普通の攻撃だったら問題なく受け止めることはできただろうけど、この一撃だけはマズい。
君が確実に傷付くことが分かっていて、黙認できるほど、僕は冷酷じゃないよ」
「……て、めえ……何をした…?」
「僕の全力を披露しただけだよ。疲れるからあまりやりたくはないんだけどね」

そう言って再度俺の体に氷室が触れると、体を覆っていた氷は瞬間的に砕け散った。

「これで満足かい?」
「……すっきりはしねえが、面白えものは見させてもらった。次は負けねえ」
「できれば僕たちは仲間同士で戦うことは遠慮したいけどね。まあ、機会があれば摸擬戦でもやろうか」

そう言って、氷室は俺から離れていく。

「あの……ありがとうございます」
「気にしないでよ。燎里ちゃんにはいつもお世話になってるし、これくらいお安い御用さ。
それじゃあ、2人とも、また機会があればどこかで」

そう言葉を残し、2人はこの場を去っていった。

「1ついいですかー?」
「……何だよ?」
「遊ぶのは勝手ですけど――――お肉、傷んじゃいますよー?」

〇届いた牙は、されど――(Re; La Porté de l'Enfer後日譚)

件の一件が片付いてから、復興業務にエージェントたちが勤しむ毎日。
そんな光景を渦雷は退屈そうに眺めつつ、N市の屋上へと足を運んでいた。
年の暮れも近づき、肌寒くなり始めた外気に触れながらも、彼は意に介することなく屋上に寝転んだ。
目を瞑り、されど眠りに落ちることなく、渦雷は頭の中で先日の戦闘を思い起こす。

(確実にタイマンじゃ話にならねえ相手ばかり、か……。対化物を想定している訳じゃねえが、それでも想定は重ねておくべきだな)

ロシアでの戦い、高校での戦い、そして、C区での戦い。
相対した化け物たちの姿と攻撃、そのすべてを可能な限りシミュレートし、往なし方、カウンターの決め方、一番効果的な攻撃方法を模索していく。
そんな折、聞き馴染みのある音が近づいてきていることに気が付き、渦雷は目を開いた。

――私が忙しく動き回っているというのに、こんなところでお昼寝とは、良い御身分ですね」
「こんだけ殺気立ってる人間が、昼寝しているように見えるか?」
「おや、殺気を放っている自覚はありましたか」
「それだけの相手をシミュレートして相手取ってたんだ。逆に殺気を漏らすなって方が無理な話だ」
「向上心があることは何よりです。まだまだ、あなたには頑張っていただかなければなりませんから」

そう言って、アリスは渦雷の隣に並び、遠方に見える荒廃した風景に視線を落とす。

――そうそう。向上心と言えば、あなたの努力があの戦いの中で実を結んだ、と言っても良いのではないでしょうか? トータルでの貢献度はさておき、あの一瞬、ナイアルラトテップに対しての攻撃は、あなたの一撃の方が蕪木さんを上回っていたのですから」
「ケッ、あんなので俺が納得するとでも思ってんのか? あいつが撃った一撃で、奴は確実に体勢を崩していた。万全じゃない野郎に加えた一撃が、蕪木の野郎を上回ったところで、それは本当にあいつに勝ったとは言えねえよ」
「ふふっ、では、そういうことにしておきましょう」

その言葉を口にすることを想定していた様子で、アリスはくるりと踵を返し、屋上の入口へ戻っていく。

「軽い気分転換にはなりました。クイーンが自分の盤面に2つ並ぶことは本来ありませんが、そんな未来が今回の戦いでは見えたように思います。あなたがクイーン足り得る存在になることを密かに期待していますよ」
「ハッ、チェスはさっぱりだ。使いたければ勝手に使いやがれ。ああ、それと、まだ直接言ってなかったな」

呟くと、渦雷は跳ね起きてアリスに視線を向ける。
何かを言おうとする渦雷に、アリスは立ち止まって顔を向けた。

「テメエは万能かもしれねえが、全能じゃねえ。テメエが独力で何でもできると思ったら大間違いだ。キングはキングらしく、ドカッと座って指示だけ出していやがれ。――それがテメエの強みだろうが」
――ええ。重々肝に銘じておきますとも」

不敵な笑みを残し、アリスは屋上を後にする。
その姿を見送った後、渦雷は再びイメージトレーニングへと戻るのであった。

履歴

16診断:ISTP-A

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 0
2022/12/1 ToK レベリング 100
1 2023/1/29 ToK 前編 36 クロレラ 瀬戸iro(立ち合い:デアドラ)
エクスマキナ、ラストアクション取得。サイバーアーム+1。
2 2023/5/19~21 ToK 後編 39 クロレラ 瀬戸iro(立ち合い:デアドラマメモ醤油さし)
戦士の知恵取得→MAX取得、サイバーアーム+1
3 2023/12~2024/1 Re; La Porté de l'Enfer 11 クロレラ 瀬戸iroデアドラマメモ
白兵+5

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