勅使河原は「勅命」を伝えるものである。
そんな名前を頂いた彼女がやれることは声を張り上げることだけである。
指示を伝令するだけ。
軟弱だろう。しかし指揮官において統率力とは必須でありーーー伝達能力に秀でている必要があった。

勅使河原アヤの母親はホワイトハンド所属の医療者だった。
そんな母親の後ろをアヤはついてまわり、周囲の職員からかわいいね、えらいね、立派だね、と褒められていた。

ある日のことだ。手当した人物に母親が刺された。
「手当なんてしてほしくなかった！」
「あの時死にたかった！」
「なんで死なせてくれなかったの！」

ーーー病院で、食事用のナイフしかなかった。
だけど相手は卓越したオーヴァードだった。

腹部に刺した食事用ナイフに打ち込まれる電撃。
即座に肉の焼ける音、悲鳴をあげようとした口に突っ込まれる拳。
幼いアヤの目の前で助けた人物はアヤの母親を蹂躙した。

蹂躙が済んで。
息も絶え絶えの母親から、白衣を一枚渡された。
「ちゃんと優しい子になりますように」
「何があっても他人を助けられる子になりますように」
「あやめの花言葉は希望なのよ」

ーーー母親は後遺症を負った。

本来ならホワイトハンドへ行くべきだったんだろうが…その後彼女は転向してチルドレンになり活動開始。

「あの時のショックで血を見るのが怖くなっちゃって…ホワイトハンドは無理そうだぁ、ごめんねママ」
「でもボクはボクのやり方で人を助けるよ」
「さあ作戦会議だ！ボクの作戦はこうなんだ！」

以来、前線で支援して怪我する人を減らすことに注力している。