古い時代より海運によって栄えてきた港湾都市。
人、物、情報。あらゆるものが集い、潮風と共に吐き出されていく目まぐるしい都市である。
高度経済成長期においては日本の経済発展に大きく貢献したが、それと同時に出稼ぎに訪れた多くの他国籍者(主に東南アジア系統が多い)によって形成された無法地帯を抱えている。
時代を追うごとに数を増した彼らの作り出す混迷は、密入国者や手配者の良い隠れ蓑と化しているようだ。
清濁と貧富の両極を混然一体とした都市。それが凪浜である。

凪浜市の混沌に惹かれるのは、なにも不法入国者に限った話ではない。
世の暗部に身を置いた者が身を隠すため、或いは新たな身分へと生まれ変わるため、凪浜の混沌に身を浸すことは珍しいことではない。
それはFHとて同じことだ。世の眼の届かぬ混沌の中、寄る辺のない者たちへとひっそりと食指を伸ばし、彼らの経済に根を張って新たな構成員を調達する。
凪浜支部の任務は、これらFHの目論見に目を光らせると共に、この混沌の解消に努めることにある。

本来の名前は美園二枝(みそのにえ)
幼い頃に生まれ落ちた美園家を勘当され、仲介を通じてUGNへと買い取られる。
以降はUGNの所属となり、訓練の後に某支部へと配属。
その後、前凪浜支部長の殉職に伴って支部長職へ就くことになった。
現在の名はUGNによって作成された戸籍上のものであり、実態は存在しない。
血液型は既に崩壊しており、計測不能。

彼女がしきりに口にする一節を元に作成された名前。
ルビーよりも赤く透き通り、リチウムよりも美しく。
赤々と燃えながら、夜の闇を裂いて生者亡者の導とならんことを。
環へ加わり、再び世に生まれ落ちる導とならんことを。

由緒の続く旧家。
事業によって得た富を社会奉仕へと還元する事を信条とする慈善家の家である。
幾つかの孤児院を初めとし、彼らの力添えで成り立っている社会基盤は少なくない。
名の通り、美しい園を世に成すと誓って活動する家だ。

美しい園を成す為、その思想を引き継ぐ者の選別は慎重に行われる。
善とは曇りなき光。善とは揚揚たる太陽。
無垢な初めの子を継がす為、初めに二の子を産み、一の子の身代わりとして世の穢れを吸わす。
そうして濁った夜へと堕ちた子の贄の上に、あるべき正しい子が成されるのだ。
正しく、真の皆の幸せのため。