私はある実験で生まれました。任意のシンドロームを有するピュアブリードを生み出す実験。その中でも私は・・・まぁ、言ってしまえば先行生産型とでもいうべきものでした。最初は成功だと喜ばれたようです。ブラム＝ストーカーというシドロームのピュアとして生を受けたはずの私は、すぐに失望されました。
　ソラリスとハヌマーン。私は、ピュアブリードとはかけ離れた存在でした。

　それからというもの、私は体得できもしないエフェクトを体得するため、必死になって訓練を受けさせられました。やれ血液のより精密な操作だ・・・やれ対象の細胞を遺伝子から崩壊させる血液だ・・・やれ体内の血液を全てエネルギーに変換しろだ・・・無理に決まっているんです。私は中途半端。特化なんてしていない。私に浴びせられるのは怒号と落胆の声ばかり。一筋の光は、私と同じ計画で生み出されたある少年でした。

　その人は私にとって救いでした。確か、彼はサラマンダーのピュアブリード。その攻撃的でとげとげしいエフェクトと違って、温厚で、柔和な人柄でした。そんな彼が唯一わたしを褒めてくれた。
　「他の人にはない力を秘めている。自分もそんな風に生まれたかった」
　その一言だけで、私の中の何かが晴れたような気がしました。私が欲しかった言葉が、陳腐だと一蹴されかねないその言葉が"彼"の口から飛び出した瞬間、私は"彼"を崇拝するように慕うことを心に決めていました。

　しかし、そんな甘いオチでこんな性格になったとは到底嘘くさい話でしょう。えぇ、まだ話には続きがあります。私は"彼"を失いました。ジャーム化したのです。
　その時の混乱に乗じて私はそこを逃げ出しました。"彼"もその場所から逃走し、現在に至るまで見つかっていません。いまだに見つかっていないのは、もしかすると既に討伐されているからかもしれませんし、潜伏し続けているからかもしれません。もしまだ"彼"が生きているとしたら・・・私は彼に言うべきことと、やるべきことがあります。彼の心臓に鎌を突き立て、こういうのです。「あの時、殺さないでいてくれてありがとう」と。