ある日のことだ。いつものように屋上で授業をサボっていた恭史郎のもとにイチネン（一年生）が慌てた様子で駆け寄ってきた。
　なんでもつまようじが人相の悪い輩に絡まれたイチネンを護るために身代わりなったらしい。つまようじ（本名：稲津洋二-いなづようじ-）とは中学の時から知り合いで、入学早々俺に喧嘩を売ってきたやつだ。喧嘩は俺の圧勝。つまようじは俺のパシリになると宣言して、以後ずっと俺のまわりでうろちょろしている。
　知ってるやつに危害が加わるのは胸糞悪い。俺はそのガラの悪いやつらをぶっ飛ばすために向かった。
　あとから知ったんだがそこはFHの施設だったようだ。つまようじは危うくその施設でぶっ殺されるところだったんが、間一髪俺が助けに入ってきたため事なきを得た。つまようじを助けるために気を逸らした一瞬の隙をついて、FHの連中が俺の首筋に試験中の薬ぶっさしやがった。地面が揺れるほどの気持ちの悪い感覚のあとに、俺はオーヴァードとして覚醒したらしい。そのFHセルをぶっ潰し、破壊しつくした後UGNに保護された。

「おい、オッサン！！てめぇは何度いったらわかんだ」
恭史郎の怒号が天命の耳を劈く。父親が死んだあと、訪ねてきたこの男は、なんでも祖母と知り合いらしかった。
祖母はこのオッサンの支援を断ったらしいが、直後に死んじまったためこのオッサンが金銭的な支援をしたらしい。
そのあと、親父が若くして死んだ後も金銭的支援をしてくれた……恩人と言えば恩人なんだが。
「てめぇはいつになったら学習するんだ。この馬鹿野郎」
頻繁に誘拐されたり事件に巻き込まれるこいつを助ける羽目になるのだ。オッサンが恩人なのか俺が恩人なのか……やれやれ。

「また、五月蠅いのが増えたな……」
オッサンの息子。息子？……息子！？
って感じの見た目をしていて、紹介されたときにはしばらくフリーズした。
最近は多様性なんて言葉があるらしいが、男は男らしくあるべきだと俺は思っている。
それにしても、オッサンといいなんでこの家の連中は総じて声がでかいんだ……うるせぇ。
まぁ、人の生き方なんて好きにすればいいが……やれやれ。

「………まぁ、生きてればいいことあるだろ」
なんというか、こいつは不運だ。かわいそうだなって思うくらい不運だ。
流石の俺も同情を禁じえなかった。えらく別嬪な嫁さんがいるらしい。いい親父になれよとは思っているが、いつか自分の不運で死ぬんじゃねぇかとおもってる。……だが、なんやかんやでこいつ生きているから運がいいのか悪いのかわかんねぇな……やれやれ