容姿・経歴・その他メモ

彼は普通の親との間に生まれた特に能力を持たない子だった。レネゲイドウイルスの気配も裏側の世界も縁がなく、普通に成長し、普通に大人になり、普通に年老いて・・・そうなるはずだった。
全てのきっかけは彼の親が宗教に勧誘されたことだった。仕事や人間関係が上手くいっていない時期だったこともあり、彼等は物は試しと乗ってしまい、次第に宗教にのめり込んでいく。
その影響は息子達に及び、謎の儀式や決まりを強制させられ、汚染された教育が施される。狂った考えは家族全体に浸透し、日常を貪り尽くしていく。これが日常を、幸せを呼び込むと親に信じ込まされた彼も異質性に気付かぬまま宗教家へと変貌していった。
そんなある日、彼は宗教の幹部に「もっと家族が幸せになれる儀式を行うから付いてこないか？」と勧誘される。この勧誘文句は洗脳された彼の行動を拘束するのに十分であった。
こうして彼は、数年間の間、地下の施設で人体実験の被験体として生活することになる。身体中にプラグを差し込まれ全ての行動は記録される、実験の苦痛と空虚が占める日常。
「だました、みんな、おやも、えらいひとも、かみも。もうなにもしんじるものか」時間感覚のないぼんやりとした思考は次第に全てを拒絶する様になる。
ふと、気がつくと、彼は自身の体に弾けるような刺激を覚えた。全身を走る何か、最初は縦横無尽に、徐々に自身の思った通りに。彼は嬉々として身体中に這い回らせた。手、足、背中、首、時間があれば至る所へ走らせ、帰ってくる刺激を堪能し始める様になる。それは一般には「痛み」と呼ばれるもので常人なら避けるべきものであったが、麻痺した彼はその刺激を唯一の娯楽として楽しんでいた。
そんな彼を再び地上に戻してくれたのは御伽刃カンナであった。UGNの襲撃によって救い出された彼はブラックドックに覚醒していたのもあり、UGNチルドレンとして改めて教育を受けることになった。
御伽刃カンナはその教育を担当してくれた恩師である。彼女は何も信じられなくなっていた彼に根気強く寄り添い、誠意とは、信じるとはを実践した。彼女は彼の知らなかったことや間違っていたことを一つ一つ、丁寧に教えた。「穏やかな日常」を取り戻してくれた。彼の視線を未来に向かせてくれた。そして、悪意から守ってくれた。
彼女は目を覚さない。だけど、彼は彼女の教えを信じ、彼女から貰った知識を持って、日々を生きていく。

彼はその生い立ちがら「裏切る」行為にはとても敏感だ。彼自身の裏切られた傷は深く、よって疑りも深い。
そんな彼がこのような依頼を受けることはある種当然かもしれない。「暴走しなければ良いのだが」霧谷優吾は未来を若干憂いている様であるが。

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