現在はFHに所属する『アリサ』と言う少女が継承者の『トツカ』と言う一族の生まれ。トツカ、の姓を継承している事から元々はトツカの所有者だったものの、死に際に自らの肉体を剣に捧げて彼は死んだ─── 筈だった。

「おいおい…こりゃあ、なンの間違いだよ…？」

次に彼が目を覚したのは自分が生きていた時代の何十、何百年も先の未来。現代人の少女の肉体がオーヴァードに感染した際に、その記憶が全て蘇った。

そのバグじみた挙動の結果で拝借したトツカに眠る裏社会関係の知識を少々。前世で散々剣を振ったので今世では銃を使いたい、と言う事でUGNにもFHにもならずにまずはチンピラを撃退。そいつから銃を盗み取ると非合法にオーヴァードを裁く人物となっていた。

「あぁ…負けるって、最高だ」

衝動は殺戮。前世では剣を振るい多くの命を奪ってきたものの、長い年月で染み付いたリーチの感覚、そして得物を変えると言う行為は彼を苦しめ…なかった。敗北、殺せた筈の雑魚を殺せない。その感覚、押さえつけこそが彼の記憶を『彼女』の肉体に馴染ませるのに程よく働いた。

「折角だし…話し方も変えてみるカ？いいネ。ちょっとチャイニーズっぽいけど、今の『アタシ』にはこれが似合うかもダ」

そして口調を変えて、偶々接触した『とある少女』都築、と名乗った少女から現在のトツカ一族のトップが『アリサ』と言う少女だと聞いた。…同時に命を狙われたが、まぁなんとか逃げ切った。ウロボロス？だか言われたが意味は分からなかった。

「アリサアリサ…成程ネ。ヘブライ語で、楽しみを意味する、と」

楽しみ。トツカ一族として戦闘を、殺戮を楽しむならぴったりな名前だろうとふとよぎり。自分の名前も考える事にした。こんな幼い少女で『トツカノサネアツ』と名乗るのは少々時代錯誤で変人だとすぐにバレてしまう。

「…これだナ。ヘブライ語で『幸福』を意味する言葉。後はトツカを英名？だかのルールに則って……」

そうしてこの日、『エシャル　トツカ』は生まれた。

UGNと名乗ろうとFHと名乗ろうと関係ない。この『レネゲイド』が絡む争いは実に楽しい。

「成程ナ。…勝負なら負けない、と思っていたガ思い上がりみたいダ。…だからこそ、面白い」

この身体は楽しい。相手が常に自分よりも強い。何より相手が自分を幼い少女だと思ってなのか向こうから勝負を仕掛けてくる。

「お前さぁ…戦術の潰し方も知らないのか？やっぱり女はダメだわ〜」

例えば、この男みたいに。彼に煽りは効かない。が、確かに彼には追い詰められていた。

「パヒャヒャ。…そっちこそ、アタシに致命的なダメージは与えられてないガ？」
「じゃあ…一発いいの見せてやるよ」
「あンたは普段の『UGN』とやらとは違いそうだ！」

相手が足を止めて一撃打ち込むその瞬間、こちらからもとしようとしたが…パキン

「ちょ、ちょっと待て！銃が壊れた！」
「…最近噂の殺人鬼。確保」

確保された。銃さえ壊れてなければ、と言っても遅い。刃と同じで、手入れの必要があった訳だ。

「ほらよ。今度からこれ使え」
「ン？…なンだ？これ」

手渡されたのはなんと言うか…生物？の様な武器の様な物。

「UGNに技術は存在してたから真似して作ってみたんだよ。…『クライベイビー』って呼ばれてる、壊れてもその場で再構築出来る銃だ」
「…これを、アタシに？」
「あんな勝負のつき方したらな。…それに、ガキにあそこまで追い込まれたこっちもこっちだ」

今の自分は確保された身なので彼の監視下にあるのだが…目の前の男は、随分と良くしてくれる。

「…もし許されたら、アタシはあンたの刃になる。今誓う」
「やだよ。なんで殺人鬼なんて厄ネタ押し付けられなきゃいけねぇんだ」
「パヒャヒャ！アタシに気に入られた時点であンたは終わりなンだヨ！！！」