容姿・経歴・その他メモ

痛みを感じない体というのは、便利だが不便だ。痛みに怯むことがないのは戦闘に置いて有利になりうる一方で、稼働に置いて致命となる怪我や欠損が生じていても気付かないこともある。しかしてその欠点を補えるのがオーヴァードという存在である。怪我はリザレクトで補えばよい。ゆえに、『無痛覚兵士』を作る実験というのはUGNでも行われた。
端的に言えば──その実験で生まれた兵士の内、最も成功したと言える個体が稲倉紫信となった。

無痛覚兵士のオーヴァードには、リザレクト以外にも利点がある。己が身を焼くエフェクトであろうとも操ることが苦でなくなることだ。だから、紫信には高い適性がある。ブラックドックシンドロームにより身に宿した発電細胞に、無痛覚を盾にして肉体の限界を超えた電撃を生じさせることができた。
加えて、紫信には高いブラックドックシンドロームへの適性から“申し子”と呼ばれる力をも扱うことが出来た。その力で、先の電撃による攻撃を一瞬の内に2度も繰り出せた。
それらを背景に、紫信は実戦の場へと繰り出されることになった。チルドレンの身分で、支部に所属することとなったのである。

配属されたのは極小数人数で構成される支部でありながら、積極的にFHとしての活動を行っていたわけではないが──それでも長らくFHとともにあり、つい先日UGN派の者が当主となった陰陽師の家系玖珂家のあるK市支部への配属となった。
玖珂家の存在はUGNにとってアンタッチャブルだ。レネゲイドの力を黎明より繋いで来た。敵に回したくもないし、出来れば味方に回したいというのが本心で、だからUGN派の者が当主となったことはUGNにとって追い風だ。だが、だからと言ってそれはUGNと玖珂家が交わるということでもない。
要するに、絶妙な距離感を保ちつつ協力関係を取り付け、仲違いを起こさないようにする。そんなことが出来る人材が求められる──というわけだ。
紫信というチルドレンにはその能力はない。彼に求められたのは殺傷能力だけだったがゆえに。だから支部長にこそその能力が求められ、結果としてその席に収まることとなったのは”｜黒より暗く《バックインブラック》”黒曜真澄だ。”リヴァイアサン”霧谷雄吾が、推薦した。

チルドレンとなった紫信には、それまで必要のなかった書類作成能力やコミュニケーション能力等が求められるようになったが、これには偶然だが彼を形作った実験が功を奏した。
無痛覚を失くすための実験を施された彼には、実験体時代のトラウマというものが存在しなかった。常識にこそ欠けていたものの、十分なコミュニケーション能力が認められた。

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