①生誕と幼少期
格式と由緒ある家柄、かつレネゲイドの力を信奉する両親のもとに生まれた。
家族は一般教養、レネゲイドコントロール共に英才教育を施した。
加えて、幼い頃に《遺産》に適合したことから、大きな期待と共に厳しく躾けを行なった。
隼人は天賦の才能を持っており、能力の成長は著しかった。

②仮初めの栄光
飛び級で「オーヴァードアカデミア」に入学。
入学直後から一目置かれ、すぐさま「学園創立以来の秀才」と評される。
ほどなくして、学園内の「派閥」の中心人物となる。授業外では常に十数人の取り巻きに囲まれ、「北見様」と呼ばれ命令すれば喜んで従うような人間ばかりがそばにいた。
彼はその状況を当然のように思っていた。自身の才能と努力、そして結果に見合うものを手にしている。
そうでない”努力不足”の人間を見下していた。

③初めての「敗北」
17歳の時、アカデミアに転校してきた「南秀人」。
ソレは正真正銘の天才だった。
学問では北見を圧倒。知識の幅も深さも切り口も、北見がぐうの根も出ないほどだった。
戦闘でも、北見が渾身を込めても煮え切らない引き分け程度にしか持ち込めなかった。
何を考えているかよくわからない、宇宙人みたいなやつで、その天然ぶりがますます北見のプライドを傷つけた。
北見隼人の根本が崩れ去るほどの「完敗」だった。

北見隼人は奮起した。北見への敗北を受け入れたその日から、
なりふり構わない努力を始めた。
それまでも隠れて鍛錬はしていた。だが、昼休みの”優雅な”食事の時間を削るようになった。
図書館で参考書に囲まれ試験勉強をした。誰よりも朝早くから訓練所に出てきて、夜遅くまでトレーニングをした。
資料の端末を何台も取り替え、文献もノートもボロボロになり、繰り返すトレーニングはどこまでも地味だった。

ただ南に勝ちたい。
北見の努力は続いた。
来る日も、来る日も。
だが、試験でも模擬戦でも、南を越えることはできなかった。

④変化
季節は巡り、北見自身も結果が出ない日々に諦めかけていた頃。
周囲から「声がかけられる」ことに気づいた。
「またやってんな！」「たまには息抜きしなよ」「南はこの角度が弱点ぽいぞ」「次こそ勝てよ！」
いつしか”北見様”と擦り寄ってきた取り巻きたちは消えていた。
代わりに、北見の姿勢を励まし、応援し、対等に素直に接してくれる人間が、学園内にたくさんいることに気づいた。
いつの間にか、北見は”努力する人物”として、学園内で有名になっていた。
北見はその時、生まれて初めて自分が「自分は1人じゃない」と──そう思った。

⑤仮初めの勝利
たくさんのアドバイスをもらい、生かし、北見の勉学と鍛錬は何段階も高まっていった。
その結果、北見自身も確信できた。今の自分は最高潮──
これなら、南秀人と戦える。知恵でも、戦闘でも、引けを取ることはない！
そして、秋。アカデミア最終試験を迎えた日。
40％が平均と言われるその試験で、掴んだ手ごたえは確信めいて、速報として出されたスコアボードには「得点率98％」。
アカデミア創立以来の最高得点。
”1位”。

北見の努力を知る学友たちは歓喜にさけび、
講堂のホールは胴上げが巻き上がる勢いで湧き上がった。
ただ1人、呆然とする北見本人を除いて。
見上げる先、スコアボードに「南秀人」の文字はなかった。

⑥離別
南秀人の姿はアカデミアにもうなかった。
北見の机に、「この世界を救い給う、われらが神に会いに行く」そう書かれたただ1枚の置き手紙を残して。

南との決着はまだついていない。

幼くして適合した「栄光と勝利の槍」。
アカデミア卒業までは、磨き上げた槍術による一方攻勢。
初手から攻めて攻めて、相手に反撃の糸口すら与えない圧倒的な槍戟で一歩的に斬り伏せる。

しかし、アカデミアを出た後、恩師がジャームの襲撃によって死亡。
守れなかったという後悔から、戦闘スタイルを大きく変えるに至る。
広く状況を伺い、槍術とレネゲイドコントロールを組み合わせ、適性行為を無力化し被害を最小限に抑えるスタイルを構築した。