サラマンダーのイリーガルとして有名だった吹雪の父は、これまで数々の人を救ってきた英雄であった。しかしいつしか同じく高火力のオーヴァードであるキュマイラに遅れを取っているのではと苦悩するようになる。もう自分も若くはない、これ以上力を伸ばすには限界がある。そこで自らの子を最強のサラマンダーピュアブリードに育て上げようと決意する。

しかし、吹雪の兄姉にあたる長男・次男・長女・三男の４人は、オーヴァードに覚醒しなかったり、ピュアブリードにならなかったりと、父の思い通りには行かなかった。５人目の子として煉獄家に生まれた吹雪は出生時まだオーヴァードではなかったが、毎日「お前は私にとっての"最高傑作"になれ」と命令をされ続けているうちに、本当に父の望んだサラマンダーピュアブリードとして覚醒をした。吹雪がまだ4歳の時だった。

その後はオーヴァードとして最強になることを強要され、泣いても吐いても止まらない虐待に近い特訓が毎日続いた。逃げ出したくなる日々の中で、常に吹雪の側に立ち優しく接してくれた母親が唯一の心の支えだった。
ある日我慢の限界を迎え母に「苦しい」と泣きつくと、異変を察した母が父へ抗議の意を示す。しかし吹雪を最高傑作にすることへ固執し暴走気味だった父は逆上し、自らの妻に手をあげようとした。「おれがもっと頑張るから！！！！」という吹雪の必死の説得により母が怪我を負うことはなかったが、母は父親への恐怖で苦しむ吹雪を守れなかった罪悪感や変貌していく夫への恐怖に追い詰められ精神疾患を抱えてしまう。兄や姉たちもこうして両親が不安定な環境に怯え切っていた。

14歳のある日。訓練中に自分の攻撃をまともに喰らった父が倒れ、病院へ運ばれた。医者から話を聞くと今回の吹雪の攻撃とは関係なく、長年の疲労が蓄積したものだそうで今後は入院生活が必要だそうだ。心配や罪悪感よりもやっと解放されるという安堵感が勝った。しかし、病床に臥す弱々しい父の姿を見て心にぽっかりと穴が空いたような気分になった。
家族からは今後オーヴァードとして闘うことを強要されなかったが、吹雪は「父さんを許せないけど、授かったこの力を否定したくない。たくさんの人を助けるために、この力を使いたい」と、無意識のうちに英雄だった頃の父と同じ決意を固めていた。

高校進学と共にUGNへ入り、家を出て学生寮に住みながら高校に通うことになった。
母の精神状況は徐々に回復しており、今は実家で兄や姉たちと暮らしている。父の病室に通っているらしいが、吹雪は父が今どのような症状でどのような心境なのか、知りたいと思えない日々が続いている。