名前も生まれもわからない戦争孤児の出身であり、周りには同じような孤児が沢山いた。
肉体を自由に動かせるようになったころには兵士としての訓練を受け、戦争に出ては敵を倒し、建物を破壊し、人を騙してきた。
1度目の転機は親代わりである組織が潰れ、残された孤児たちによって傭兵団を作り上げたことだろう。
普通であればまともな生活を送るべきなのだろうが、彼らにとっての普通は戦争だった。
実際彼らは優秀であった、勝てない戦いからはすぐに身を引き、その優秀さを生かし、数ある戦場で勝利を積み重ねた。
彼がオーヴァードと初めて邂逅したのもこの時期である。
その中で最も優秀だったのが彼だった、戦闘、戦略何をやらせても一流、彼がいる戦場はすぐに収束した。
傭兵の間ではこう語り継がれている。

「奴のいる戦場はすぐに片が付いちまう、姿形も見えないしどんな奴かもわからないまさに『NAMELESS』だ、妙に静かな戦場は特に気をつけろよ」

その噂を聞いた時は仲間内でもともと名前なんてないがと笑い合っていたがそれもまた戦術として組み込めるとむしろ噂を拡散させた。
この時期が彼が人間だった頃の最も印象深い時期。

2度目の転機、彼にとって人生が最も変わった瞬間は自身の傭兵団の壊滅だった。
ある日、傭兵団の拠点へと帰ると自身を除いた仲間の死体がそこにはあった。
死因はさまざまであったがすべて凄惨の一言に尽きる。
そして、大広間の壁面に血でこう書かれていた。

『Present for you NAMELESS！』(NAMELESS、これは君へのプレゼントさ！)

傭兵団に恨みを持つもの、良く思っていない者たちの犯行だった、彼らはNAMELESSの正体がわからないので所属している傭兵団ごと潰そうと考えたのだった。
これでNAMELESSが死んだら御の字、死んでいなくてもたかだか数人に出来ることは知れていると高を括っていた。

しかし、その日『怪物』が生まれた。

彼は遠方に出ていた数人の仲間が帰るまで仲間の死体を1人1人丁寧にベットへと寝かせていた。
彼を心配する仲間をよそに彼は仲間たちの別れの言葉を告げ離別と言わんばかりにその力で拠点ごと死んでいった仲間たちを地面に埋めた。
そして『怪物』が動き出した。
裏切った傭兵を殺し、計画した敵を殺し、仲間を凄惨な目に合わせた奴を殺し。
『怪物』は衝動のままに、しかし冷静に敵を潰した。
彼がすべてを終えたころにはそこにあった戦争は終わり平和が生まれていた。
そして自覚した、もうあのころには戻れないのだと、自分はどうしようもなく異端なのだと。
その日、戦争を終わらせた『｜伝説《えいゆう》』と戦争を蹂躙した『｜怪物《モンスター》』は死んだ、まったく別の『｜人間《なれのはて》』になった。

彼は1人静かに長い余生を過ごすことにした、稀にお節介焼きが連絡をよこす程度、その日の気分によって『普通の人間』らしいことをして過ごしている。

現在の彼の性格は孤児のころに親友だった人物の性格をトレースしたものであり、彼は今の自分を俯瞰で眺めている。

PL談
彼の現在の偽名である『音無　霊』は『NAMELESS』、音＝ネ　無＝ム　霊＝レイス＝レスから来ている。

PC①
カヴァー/ワークス　指定なし/指定なし
シナリオロイス：四浦ミキ
推奨感情　P：友情/N：不安

君はN市に住むオーヴァードだ。
四浦ミキは、君が街外れの神社で出会った少女で、怪我をしていた彼女を手当てして以来、よく会うようになった。初めのうちこそ品言を避けていた彼女だが、徐々に君に心を開くようになる。だが、そんな日々も、唐突な別れの言葉によって終わりを迎えるのであった。