ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

遠野 瑞花 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

風雪の守り手(スノゥフェアリィ)遠野 瑞花(とおの みずか)

プレイヤー:ゆきんこ

自由登録 基本ステージ

私の名は遠野 瑞花。……ああ、ご覧の通り、『雪女』のレネゲイトビーングだよ」

年齢
不詳
性別
星座
不詳
身長
168cm
体重
57kg
血液型
不明
ワークス
レネゲイドビーイングB
カヴァー
UGNエージェント
ブリード
ピュアブリード
シンドローム
サラマンダー
HP最大値
30
常備化ポイント
4
財産ポイント
4
行動値
4
戦闘移動
9
全力移動
18

経験点

消費
+0
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 生まれた時から孤独だった。仲間と呼べる者はなく、同族と呼べる者はおらず。……嗚呼、ならば私は何故、このカタチで生まれ落ちたのか。
独りぼっち
経験 ――お前さんはどうしたい?」すべての切っ掛けの問い。己の物語の中に潜り、見出した一つの答え。「――私は、人を、この世界を守りたい」
自己問答
邂逅 「お前と出会わなければ、私は此処にはいなかっただろうな」
恩人(前支部長)
覚醒 侵蝕値 生まれた時から力は共に在った。記録もすでに持っていた。分からなかったことは唯一つ。「……私は、誰だ?」
生誕 17
衝動 侵蝕値 思考を切り替える。研ぎ澄まされた剣戟を思い描く。――さぁ、闘いの鬨だ。
闘争 16
その他の修正5レネゲイドビーイングのため
侵蝕率基本値38

能力値

肉体4 感覚1 精神2 社会2
シンドローム2×2 シンドローム0×2 シンドローム1×2 シンドローム1×2
ワークス ワークス1 ワークス ワークス
成長 成長 成長 成長
その他修正 その他修正 その他修正 その他修正
白兵1 射撃1 RC4 交渉
回避 知覚1 意志1 調達
情報:UGN3

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
雪女 憧憬 不安 『仲間』かもしれない者たち。会いたいような、そうでないような。不安と期待が入り混じった、複雑な気持ち。
前支部長 尊敬 不信感 大恩ある人。だが、その性格には一言言わずにはいられない。
NS支部 親近感 不安 自分の居場所。此処に居られることこそが、私の何よりの幸福なのだ。

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(LV)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
ヒューマンズネイバー 1 常時 自動成功 自身 至近 RB
衝動判定のダイスを+LV個。侵蝕率基本値+5。これは侵蝕率によるダイスの増減を受けない。
オリジン:レジェンド 5 マイナーアクション 自動成功 自身 至近 2 RB
【精神】を使用した判定の達成値を+【LV×2】する。
凍てつく吐息 1 メジャーアクション 〈RC〉 対決 視界 1
攻撃力+LV+2の射撃攻撃を行う。(「焦熱の弾丸」から名称変更。冷気を自在に操り攻撃する)
コンセントレイト:サラマンダー 2 メジャーアクション シンドローム 2
クリティカル値-LV(下限7)
引き裂く冷花 4 メジャーアクション シンドローム 対決 4 ピュア
このエフェクトを組み合わせた判定のダイスを+LV個する。装甲値無視を付与する。(「結合粉砕」から名称変更。実体無き冷気の刃は、肉を引き裂き、血を凍らせる)
風雪乱舞 5 メジャーアクション 〈RC〉 対決 単体 視界 4 100%
攻撃力+LV×5の射撃攻撃を行う。(「プラズマカノン」から名称変更。全身全霊で放つ冷気は、あらゆるものを停止し死に至らしめる)
氷雪の女王 1 メジャーアクション 自動成功 効果参照 至近
氷や冷気を自在に生み出し、操るエフェクト。(「炎の理」から名称変更。ダメージは与えられない。また、イージーエフェクト「凍結保存」と同じようなことはできない)

コンボ

風花雪塵

組み合わせ
45678 「オリジン:レジェンド」「凍てつく吐息」「コンセントレイト:サラマンダー」「引き裂く冷花」「風雪乱舞」
タイミング
メジャーアクション
技能
RC
難易度
対決
対象
単体
射程
視界
侵蝕値
13
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%以上
2+8
7
4+12
34

装甲値無視攻撃。冷気の刃で敵を裂き、内から血肉を凍らせる、全身全霊の一撃。(100%以上のみ使用可)

氷雪の刃

組み合わせ
4567 「オリジン:レジェンド」「凍てつく吐息」「コンセントレイト:サラマンダー」「引き裂く冷花」
タイミング
メジャーアクション
技能
RC
難易度
対決
対象
単体
射程
視界
侵蝕値
9
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
2+4
8
4+10
3
100%以上
2+8
7
4+12
4

装甲値無視攻撃。不可視の花の如き冷気の刃を生み出して攻撃する。

氷花の風

組み合わせ
456 「オリジン:レジェンド」「凍てつく吐息」「コンセントレイト:サラマンダー」
タイミング
メジャーアクション
技能
RC
難易度
対決
対象
単体
射程
視界
侵蝕値
5
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
2
8
4+10
3
100%以上
2+3
7
4+12
4

冷気を相手に叩き付けて攻撃する。(侵蝕値やばい時用)

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
0 10 120 0 0 130 0/130
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

名前:遠野 瑞花(とおの みずか)
※名前の由来
「遠野」→雪女についての伝承が記された書物・『遠野物語』から。
「瑞花」→雪の別名。雪の美称、豊年の兆しをしめす花を意味する。この場合の正しい読みは「ずいか」だが、今回は読みを変更しています。

性別:女性

容姿
20代程度の女性の姿をしている。
薄氷の如き薄青の髪。
水面に浮かぶ氷の如き色合いの瞳。
古風な意匠の着物。
美しく整えられたその容姿のいずれもが、彼女が『雪女』である所以のひとつであると言える。

性格
他者と対立することをあまり好まず、「和を以て貴しとなす」を基本理念としている。
些細なことであれば、たとえ異なる意見があろうとも主張することはなく、大勢の意見に合わせることが多い。
とはいえ主体性がないわけではなく、「ここは譲れない」と思うことは、自身が納得できるまで主張し、相手との妥協点を探そうとする。
彼女にとって、戦いは自身の意見を通すための手段のひとつである。
互いに言葉を尽くしてなお、譲れないものがあると分かった時。
あるいは、言葉で語ることが意味のない相手であった時。
彼女の瞳は闘志を宿し、相手を凍てつかせるために容赦なく力を振るう。

「互いに言葉は尽くした。ならば、是より先に言葉は不要」
「自らの命をかけて――戦うとしよう」


経歴
妖怪としての雪女ではなく、長らく語られてきた『雪女』の伝承を核とするレネゲイドビーイング。
レネゲイドビーイングとして覚醒したのは数年前だが、多くの伝承や伝説の記録を有するため、結果として見た目相応の精神年齢となっている。
覚醒したのは人気のない名もなき雪山で、自身の記憶が全くないにも関わらず、「己が『雪女』である」という意識だけははっきりとしていた。そのことに戸惑い、己について知るために山を下り、町を彷徨っていたところをUGNに保護される。
その後、UGNのエージェントから様々な説明を聞く内に、自分が「『雪女』という伝承を核としたレネゲイドビーイング」と呼ばれる存在であることを知る。
行く当てもなかったため、そのままUGNに所属することを決め、今日に至る。

UGNに所属したのは成り行きだが、この世界に生きる者として、「世界の均衡を守る」というUGNの在り方はそれなりに好ましく思っている。それ故、任務への態度は割と真面目な部類に入る。
覚醒してから(意識が生じてから)まだ数年であるため、世俗の常識については疎いところもあるが、彼女なりに色々と勉強している。横文字の読みや、電子機器等の扱いについても基本的な部分は問題ない。専門的な話になるとついていけないときもある。
また、能力の幅(後述)を広げるため、近年のサブカル的な雪女の扱いについても勉強しているため、サブカルチャーについてもある程度の造詣がある。

基本的にはNS支部内の女子寮の一室に部屋を借りて暮らしている。
内装はあまり手を加えておらず、必要最低限の家具のみで、部屋に物はあまり多くないが、電子書籍で本は割と持っている。
また料理が趣味であり、作ったことがない料理でも、レシピがあればレシピ通りに作れる。キッチンには一般的な冷蔵庫とは別に、作った料理を瞬間冷凍して保存している冷凍庫があるため、食事には困っていない。知り合いであれば、頼めば作った料理を分けてくれるだろう。
生計は主にUGNの任務をこなすことで収入を得ている。流石に貯金はしていないが、出費の中では家賃は最優先できちんと毎月支払っている。
レネゲイドビーイングとしての力を使えば金など要らないことは分かっているが、悪戯に社会を混乱させることを好まなかったため、きちんとお金を払って買い物などをしている。

能力や特性について
『雪女』の伝承、及び人口に広く膾炙された考えに基づき、氷や冷気を操って攻撃する。
伝承を核とする存在であるため、彼女の中には数多くの『雪女』にまつわる物語が記録されている。発生当初は伝承の数の多さと解釈の多さによる特性から自我が混濁することもしばしばあったが、現在では多くの伝承の中でもより『核』とする伝承を定めることで、自我消失や混濁を防いでいる。その代わりに、発生当初と比較すると能力の汎用性が低下している。
『核』とする伝承は、ある程度任意のタイミングで切り替えが可能であり、また伝承や物語の解釈についても彼女の意識によってある程度の幅を持たせることができる。
平時は最も多く知られているであろう、「ある男と暮らした雪女の物語」を『核』としている。料理が得意であることも、大本はこの伝承に基づいている。即ち「一家の妻であるのならば家事はできるだろう」という解釈である。発生時点では料理のレパートリーは和食のみだったが、「料理ができるのならば和食以外も作れるはずだ」という彼女の意識および解釈と、「実際に色々な料理を作ってみる」という努力により、今では様々な種類の料理が作れるようになった。
戦闘時はまた別の、より攻撃的な伝承を『核』とする。例えば「雪山で肌に切り付けられたような跡が生じるのは雪女によるものである」「雪女とはとある剣豪が己の腕を磨くために扮したものである」というような伝承により、鋭い不可視の冷気の刃を作って攻撃する。
この場合、伝承とは正しく事実がそうであったかどうかには関わりなく、「そういった事実が少しでも語られている、あるいは信じられている、もしくは人々の記録や記憶に残っている」場合、伝承として機能する。伝承を覚えている人間の多い少ないもあまり関係がない。そのため、昨今のサブカル的な雪女の在り方も少なからず記録されているため、特に戦闘時など、わりかし荒唐無稽な伝承が『核』となる。
『核』となる伝承は、切り替えがしやすいよう、予め彼女の中で決めていたものしか咄嗟には使用できない。主として、平時用に「ある男と暮らした雪女の伝承」を、戦闘時用に「雪山での氷雪による傷跡の犯人」と「剣豪の凶行」の伝承を『核』としている。

目的について
UGNの「世界の均衡を守る」という目的の他、生きる上である程度の目的を定めている。
一つは「自己と同じ存在を探し、可能であれば見つけること」。即ち、「自分以外の「『雪女』の伝承を核とするレネゲイドビーイング」は本当にいないのか」ということである。現在、彼女はある意味においては天涯孤独であり、真の意味で同胞と呼べる仲間を見つけることを目的としている。またそれと並行して、本来の「妖怪としての雪女」がいれば、会って話をしてみたいとも思っている。(主に、自分のような存在も受け入れてもらえるのか、という点について)
二つ目の目的は、「己が生まれた意味があるならば、それを知りたい」というもの。先のものと比較するとより長期的かつある種の哲学めいており、本人も内心馬鹿馬鹿しいと思ってはいるが、それでも。

「ヒトでも、妖怪でもない私が、このタイミングで自我を獲得し、目覚めた……そのことに、何か意味があるのでは、と」
「ああ、分かっている。こんなものはくだらない空想だ。世に数多ある物語の方が、よほど美しいし、意味がある」
「多くの生き物は、自分の意思とは関係なく、この世に生まれ落ちる。私だって、きっと間違いなくそのひとつだろう」
「そう、分かってはいるんだ」
「それでも、と、心の何処かで考えてしまう」
――『私が生まれた意味が、この世界にはあるのではないか』とね」
「……所詮、意味のない絵空事だ。どうか笑ってくれたまえよ」


――――――――
(以下、いつものSSです。読まなくてもOKのやつ。こんな人ですよーってやつ)

――――――――――


『名前という名の願い』

――――20xx年、ある八月の夜の事。
名もなき山のその山頂にて、夏の雪が降った。

されどその異常気象は、卓越した情報操作により、余人に知らされることはなく。
斯くしてこの日、一人のレネゲイドビーイングが、この世に生まれ落ちた。


――――――――……

私が初めて世界を認識した時、すべては白く染まっていた。
ごぅごぅと唸りを上げ、横薙ぎに降り続ける雪の嵐。

私に刻みつけられた記録と知識は、今が夏であることを告げていた。
それを踏まえれば、この豪雪は明らかに異常だった。

だが、私にとって、そんなことはどうでもよかった。

この時、私の思考を埋めていたのは、たった一つの疑問のみ。
即ち、

「私は……誰だ……?」

虚ろに呟く。
その問いに答える者は、誰もいない。
されど、己に向けて発したその問いに対する回答を、私はすでに持っていた。

――――自分は、『雪女』だ。

自身に刻まれた記録が、揺るぎない答えを突き付ける。
その事実にこそ、私は困惑し、額を押さえて膝をつく。

「何だ、これは……!?」

懐かしい/何も知らない、知るはずのない 記憶が/記録が 鮮やかに蘇る。

――――いやぁ、まこと、雪女殿はお強くていらっしゃる!!

華やかな宴会場。
赤ら顔の大鬼が、高らかな笑い声と共に、一抱えはありそうな巨大な盃を口に運ぶ。
対する自分は/知らない女性は、涼やかな顔で新たに注がれた酒に口付け――――……

「違う……ッ」

がり、と、爪が額を引き裂いた。
その痛みと共に、意識と視界は白の世界へと引き戻される。

「こんなものは知らない、これは私の記憶じゃない……!」

純白の雪の上に、鮮やかな赤が散る。
その色だけが救いだった。
少なくとも、今自分は間違いなくここにいると、そう確かめられるから。

「是は何だ、私は何だ、此処は何だ」
「私は、どうして……!」

――――こんな場所に、独りなのか。

声にならないその問いに、答える者は、誰もいない。
ただ降りしきる雪だけが、声なき激情に応えるように、その激しさを増していく。

視界の中で、動くものは雪以外になく。
そのまま、永遠にも似た時間が続くかと思われた、その時。

――――ほォ、これぁまた」
「夏の山を雪山にしちまうなんざ、どんな奴が生まれたのかと思って来てみりゃァ……」
「こいつァとんだ別嬪がいたモンだ」

――――不意に、聞きなれない声が耳朶を震わせた。

私は弾かれたように顔を上げる。
視界の先には、見知らぬ男が立っていた。

――――奇妙な男だった。
古びた着物に袴を身に纏い、その上からコートを羽織っている。
足元は頑丈そうなブーツだが、それは白く雪に塗れていた。
帽子を目深に被っているため、その表情は伺い知れない。
ただ、男の口元で揺らめく煙管の炎だけが、妙に赤々と輝いていた。

「な、んだ、お前……!?」

私は呻くように呟き、一歩後ずさる。
私は知っていた。己の周囲を取り巻く環境は、とうに生き物が生存できるレベルを超えている。
気温はマイナス数百度を超え、漂う空気は吸い込むだけで肺を凍てつかせるだろう。

だというのに、男は平然とそこに立っていた。
そればかりか、吹きすさぶ豪雪の中で、旨そうに煙管の煙を吐き、笑う。

「何、と言われてもな。オレぁ、ただの人間、ただの錬金術師よ。
 ……だがまァ、ある意味では、お前さんの御同輩とも言えるかね」
「なんだと……?」

――――お前さん、自分が何なのか分からねェんだろう?」

心臓を掴まれたようだった。
言葉を無くした私を前に、男は尚も語り続ける。

「オレなら、その答えを教えてやれる」
――――どうだい? 何も分からず、行く宛てもねェってンなら……オレと一緒に来ねぇか?」



――――今になって思う。

狂い咲く吹雪の中で、差し出された手。
この光景を、私は生涯、忘れることはないだろう。



――――――――――――――

男は、自らを明成と名乗った。私は、返す名を持たなかった。
彼の手を取り、連れられた場所は、近代的な建物の一室だった。
部屋の内装は白く、最低限の机と椅子だけが置かれている。

(……何故、私はこれらの言葉を知っている?)

机も、椅子も、近代的な建物という概念も。
すべて、あの雪山にはなかったものだ。

「お前さんは『レネゲイドビーイング』だ。おそらくは、雪女という伝承が形を成したものだろうな」

そうして、私は様々なことを教わった。
レネゲイドウィルスについて。
レネゲイドビーイングについて。
オーヴァードとUGN、FHについて。
そして、UGNの役割について。

「……つまり、お前たちは世界を守るために存在している、というわけか」
「そんな大仰なモンじゃねェがね。オーヴァードの誰もがお行儀よくしてくれてるンなら、こんな組織はいらなかっただろうが……人類皆聖人君子って訳もなし、どっかでバランスを取る必要があるってだけだ」

つまるところ、ただの貧乏くじよ。

煙を吐き出し、明成は退屈そうにそう言い放った。
対する私は、与えられた情報を必死に整理し、どうにかこうにか問い掛ける。

「……私のような存在は、他にもいるのか? 私のように、誰の胎から生まれるでもなく、伝承が形を成した存在は」
「さぁてねェ。実際問題、レネゲイドビーイングは未だ未知数の所が多い……オレもすべてのオーヴァードを把握してるわけじゃねぇが、お前さんみたいなのは初めて見たな」
「……そう、か」
「まァ、世界はお前さんが思ってるよか存外広い。生きてりゃその内、同族に会うこともあるだろうさ……それよりも、だ」

――――お前さん、これからどうしたい? どうやって、これから生きていくつもりだ?」

煙管と共に突き付けられた言葉に、私は黙り込んだ。

「生きて、いかなければならないのか、私は」
「そりゃァそうだろう。人間だろうがレネゲイドビーイングだろうがそれ以外だろうが、生まれたからには生きるモンだ。
 ――――だからこそお前さんは、自分がどのように生きるのかを決めねばならん」

その言葉は、ひどく真剣みを帯びていた。
紫煙にけぶる部屋の中で、その言葉だけが確かだった。

「お前さんは伝承が形となった存在だ。自分がどう生きたいのか、それが決まれば、自ずと自分の核も定まるだろうさ」
「核?」
「この場合なら、『どういった物語を自分の基礎とするか』だな。一口に雪女の伝承と言っても色々ある。一般的な雪女の伝承から、荒唐無稽な現代のサブカル的な話まで……お前さんの中には、その全てが仕舞われているはずだ」
「……核を定める過程で、もし、私が我を忘れて暴れたらどうするつもりだ? もし、私が途方もない悪人の話を核としたら……」

「なァに、そン時ァそン時よ」
「もしそうなったら、オレらは腹括ってお前さんと殺し合うだけだ」
「オレァ、ずっとそうやって生きてきたし、それ以外の生き方なんぞ知らねェ」
「だからまァ、好きにやんな」

そう言って、明成は笑った。
存外に明るい――――太陽の花のような笑みだった。


――――――――――

UGN・NS市支部のとある一室。
そこは支部の中でも、一際頑丈な部屋だった。そういう部屋に通してくれと、私が頼んだ。

――――これから起こることで、なるべく被害は出したくなかったから。

「……よし」

一つ息を吐き、心を決める。

やることは一つだ。
私の自我の中に潜り、核となる物語を探し出す。

その過程で、私が救いようのない化け物に成り果てたとしても――きっと、彼が殺してくれるだろう。
ほんの少しの出会いでも、そう確証できるだけの交流があった。

――――なら、それだけで十分だ)

ここで私が死ぬとしても。
私を覚えていてくれる存在が、確かにいるのだから。


決意を胸に、意識の海へ飛び込む。
瞬間、私の視界は一変した。

「……なるほど、こうなっているのか」

呟いた口から、こぽりと泡が零れ落ちる。それは上へ上へと昇り、雪の花のような結晶へと変わった。
水中に漂うように、私は宙に浮いていた。まるで水の中のようだ。だが、肌も衣服も濡れはしない。
辺りには水の代わりのように、無数の書物が浮いていた。

木の葉のように、古びた紙が宙を踊る。
ぐるりと私の周囲を取り巻くように、巻物が広がって漂った。
花のように鳥のように舞い踊るのは、近代的な漫画や小説の数々か。

それらに触れる度、目に映す度、そこに描かれた物語が飛び込んでくる。

それは祈りだった。どうかこうであってくれという祈りだった。
それは恐怖だった。あるいは戦いの後であった。言い知れぬ恐怖に名と形を与え、倒さんとした戦いの名残だった。
それは欲望だった。名もなき者たちを、あってはならないとされた者たちを、根絶やしにせんがために与えられた形だった。
それは願いだった。こうであったら面白いだろうという、ヒトの願いの形だった。

美しい感情があった。
醜い感情があった。

そのどれもが、等しく私の中に降り積もり、一つのカタチを成していった。

――――あぁ、これが人間というものか――――

物語の海を揺蕩いながら、私は思考する。
これが、これこそが、人間だと。
彼らの手で描き書かれた、物語が告げる。

ならば、私は――――

――――私は、人を守りたい。守れる自分で在りたい」

その想いを口にした途端、ぐるりと世界が切り替わる。
だが、その変遷に荒々しさはない。あるべきものがあるべき形に収まるように、世界は形を変えていく。

気が付けば、辺りの景色は一変していた。
周囲には木製の桐棚や本棚が並んでいる。私の周囲を漂っていた物語は、きちんと仕舞われていた。
そして私の前には、たった一つの巻物だけが浮かんでいる。

「これが、私の『核』か」

呟いて、私はその巻物に手を伸ばし、そこに巻かれた紐を解く。
軽い音と共に、紙と文字が私の周囲を覆いつくした。
そこに書かれた物語を、一字一句逃すことなく、私は心に刻み込む。

そうして、私は微笑んだ。
生まれて初めて、私は心から笑うことができた。

――――あぁ、これは、良い『物語』だ」

ならば。
この物語に与えられる名前は…………――――



――――そうして、私の意識は浮上する。

目を開けた時、最初に映ったのは、意識の海に潜る前にいた部屋の天井だった。
辺りには傷一つなく、静寂が満ちている。

(……どうやら、最悪の事態は避けられたらしい)

自我を失い、暴れるような事態にならずに済んで良かったと、私は胸を撫で下ろす。
そこでようやく、自分が布団に寝かされていることに気が付いた。
身体を起こした時、横合いから声が掛けられる。

「よォ、良い夢は見れたか?」

見れば、明成が椅子に座ってこちらを眺めていた。
驚きはしなかった。目を覚ました時から、隣に気配があるのは分かっていたから。

「……私は、いつから寝ていた?」
「さて、いつからかねェ。物音がしないってンで他のエージェントが様子を見に来たら、お前さんが床に倒れてるって騒ぎになってな。
 慌てて布団運んで寝かせて、一応、連れてきた責任者ってことで、オレがこうして看てたワケだ」

一体、いつから見てくれていたのか。
時計の無いこの部屋の中では、どれだけの時間が経っているのかは分からない。だが、決して短い時間ではなかったであろうことは、想像に難くない。
礼を言おうとした時、先んじて彼が口を開いた。

「その顔じゃ、心は決まったみたいだな」
「ああ。私の在り方は定まった」
「そうかい。なら、改めて問うとしよう」

――――お前さん、名は?」

――――私は、遠野 瑞花。人を守り、世界を守る――そう在ることを望む者だ」
「これからはこの支部で世話になる。よろしく頼む、支部長殿」


これが、始まりの物語。
私が私に名を与えた日。私の生き方を決めた日のこと。
これから始まるであろう、人生という名の長い長い物語の――――その、始まりの一幕だ。


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