容姿・経歴・その他メモ

彼はいつも空き地で野球の練習をしていた。
来る日も来る日も、ボールは私の家の窓を破り、そのたびに怒鳴り散らし、追いかけまわしたものだ。

いつしか彼に振り切られてしまうようになった。怒りよりも先に彼の成長を喜んでいる自分がいたことを覚えている。
彼は一足先に空き地へ戻り、私を待っていた。
「ボクの勝ちですね。カミナリさん」
満面の笑みを浮かべて話す彼に毒気を抜かれた私は、彼とキャッチボールをした。

「今度ボク、中学生になるんです」「そしたら大きなグラウンドで練習できるようになります。おじさんにご迷惑をかけるのは、きっとこれが最期です」
そうか、と私は答える
「いつか、きっと大活躍する選手になります。そしたらおじさんと空き地のことみんなに話すんです。ボクはここで練習して強くなったんだって」
なら、私はキミのファン第一号だな
「うれしいなぁ。じゃあボクのバットとボールをおじさんにプレゼントします！大事にしてくださいね」

彼は宣言通り野球で大成し、海外へと渡った。この空き地は聖地となり、多くの野球ファンが連日詰めかけるようになった。
巡礼者に出会う度に私は言うのだ。ここは見にくる場所じゃない、野球をする場所だぞ！ってな

彼は今日も世界中のファンを魅了している。
私はただここで彼の凱旋を待っている。

この、栄光と勝利のバットとともに

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