悪魔の力を宿した杖であり、彼女の持つものはソロモン72柱の一、愛を司るグレモリーの力を宿した杖とされている。
彼女の【瞳】と共に受け継がれたものであると推察されるが、先に記載される任務中の事象について興味深い事実がわかった。
この杖の光に飲まれた者はロストとなるが、その人物の座標値が過去、未来、または現在の一定地点に収束される。もっとも、当事者同士のコンタクトが成功したという報告がなければ、その実験を行うのも彼女にとって酷だという理由で検討を重ねている最中に脱退報告を受けたため事実上の凍結となっているが。
以上の情報から、該当地点での多次元(マルチポケット)化が発生し、巻き込まれた人物はそこに収容されているのではないかというのが仮説だ。そこへのアクセスについては現在、管轄支部との調整中。
もっとも、対象者は皆生物学的に悠久を生きることはできないため、その中で衰弱している可能性は高いが。

【推奨感情】P：遺志／N：任意
【ワークス／カヴァー】UGN関係者以外／指定なし
　キミは猪ヶ倉市の隣町に住む、普通のオーヴァードだ。
　強いて普通とは違うところを挙げるとするならば、少し前に、斬竜凛と名乗る、手負いのオーヴァードと出会ったことであろう。焼け焦げたボロボロの白衣を羽織り、どこからか命からがら逃げてきたように見える彼女は、どうやら行く宛も帰る場所もないらしい。あなたは、自身の家に彼女をしばらく匿ってやることに決める。
　彼女は自分の素性について語ることはなかった。けれど彼女のいる生活は非常に穏やかで――いつの間にか、家に帰ると彼女がキミを出迎えることが、キミ達の”日常”となっていた。
　しかし、ある日、キミの前に現れたジャームの攻撃を受けて、彼女は命を落としてしまう。
　死の間際、彼女はキミに願いを託した。黄金色をした、カードキーと共に。

　この子との出会いは、オーヴァード事件を解決した雨の日の夜だった。
　命からがら逃げだしたような姿は、悲惨で、寂しそうで。仲間はおろか、周りはこの子を狙ってる人たちばかりに見えて。ひとまず「匿わなきゃ」って思ったのが、始まりだった。
　彼女が追われてた理由や、狙っている人たちのこと。聞かなきゃいけないことは多かったけれど、それ以上にこの子を追い詰めるようなことはできないから。彼女が置かれている状況も分からない以上、しばらくは存在の隠匿が必要。でも、そんなことってきっと彼らと同じような気がして。
　だから、私ができる限り日常に近い生活をさせたいとは思っていた。もちろん、私の日常と普通の日常は違うし、彼女がそれを求めているのかもわからないから、回復を待ってからゆっくりと、とは思っていたから。

　斬竜凛。この子はそう名乗った。というか、この“子”とするのは、本当は正しくなさそうで。過ごしてきた時間や、踏んできた場数。そして経験。そういったものを、私の直感が教えてくれた。
　その他にも、この少女についてわかったこと。それは、UGNと何かしらのわだかまりがあったということ……というよりは、あの組織と関わりたくないって言ったほうが正確なんだと思う。
　何があったのかとか、そういったことには踏み込まなかったけれど。それで十分だった。少なくとも、その時の私たちにとっては、それ以上は知らなくていいことだと思ってたから。

　その後は、というと。私たちは例えるなら姉妹みたいな、そんな関係に見えたと思う。流石に仕事に同行させることとかはできなかったけれど、それ以外の時間は、基本的に一緒にいたと思う。