それだけ旧き者ならば、戦闘力もさぞかし凄いのだろうと思うだろうが、実際のところそうでもない。
生命体を産み落とす事に特化した存在が他の感情や能力を得る事は通常あり得ないからである。

が、"コレ"は事実として感情を得た。彼女の邪神の因子を食い破り融合した"ウロボロス"が原因か、はたまた奇跡でも起きたのか。
ともあれ、"コレ"は覚醒した。『我が子を愛する』と言う使命を背負って人類を守ろうと動き出したのである。
そのため神話生物に対して敵対的であり、正体を隠して人類を庇護しようと立ち回っているが……人間を正しく理解できてるとは言い難い"コレ"は、日常世界に溶け込むのに四苦八苦しているらしいものの……今はまだバレずに済んでいるらしい。

人を守り、邪神を殺す。
その無謀な戦いの中で"コレ"は、これから多くの汚い人間と、美しい人間、そして自らの自我を失うほどの強大な邪神に出会うだろう。
そんな不明慮で曖昧なるものを知る旅路の果てで怪物は穢れを纏い果てるのか。はたまた別の末路を辿るのか。

それはきっと"コレ"の自我が、本当の感情を得るまで分からない事である。

自らを『母』、人類や他の生物を『子供』と定義し、『子供たち』に平等な『愛』を与えるために動いている。
妙に尊大な言い回しや、労わるような発言が多い傾向にあるが、『愛』の定義が曖昧なためにトンチンカンな行動を取る事もしばしばある。
逆に『子供』ではない神話生物や邪神に対しては嫌悪感を抱いており、特に『子供たち』に仇名す神話生物は文字通り親の仇のように殺意を抱いており、それらを探し出して殺す事が主な目的である。

……その殺意は、自身にも向けられて然るべきだと言う事には幸運にもまだ目を逸らせている。

"コレ"の能力は『学習と模倣』。
ノイマンシンドロームのものとは違い、一度見た能力をコピーすることに長けた能力をしている。
元を辿れば「『学習』し、より良い生命体を効率よく生み出すために即時進化を行う」と言う能力だが、
今は「あらゆる状況に合わせて身体を変質させ、適した肉体へ即時進化させる」というように使用されている。
今は学習途上にあるが、段々とその精度は上がっており、留まる事を知らず、邪神の能力すら模倣する事もあるという噂。