力は強ければ強いほど良い。力の上限が高ければ高い程、出来る事は多くなる。
かつて幼い頃に父から教えられたその言葉が何故かずっと心に残っていた。
無邪気な子供の時は何の疑いも持たず、体を鍛えていけば何でも出来るようになると思っていた。
しかし今はもうどれだけ鍛えても人間ではどうしようもない相手がいることも解っている。
車、銃、兵器、そして核兵器。人がただの動物である以上物理的に耐えられるはずの無いものだ。
……オーヴァードになる前は。

習慣の筋トレもそのうち辞めようかと思ってはいたが、なんだかんだ惰性で現在も続けている。
入院生活が続いている朱里に対して見舞いと料理の差し入れぐらいしかできない自分の無力感を
感じているのか、努力の方向性を見つけられず筋トレで気を紛らわせている。

父からの医食同源の教えのもと、体作りの一環で料理をするようになり、技術も高い。
穏やかな脳筋。取りあえず筋肉で解決できることは多少強引でも筋肉で解決しようとする。
レネゲイドコントロールも当然、溢れんばかりの筋肉によって力づくで制御している。
筋肉の発する熱によって炎の弾丸を生成し、筋肉によってエネルギーを圧縮、筋肉によって撃ち出す。
その筋力はもはや物質の耐久力を無視して破壊をもたらすほどにキレている。

自身のレネゲイドの力に飲まれ暴走することもあり、いつかこの力が大切なものに振るわれる時が
来るのではと不安を抱えているが、レネゲイドの存在を知る以上、その大切なものを守るためにも
この力を手放すわけにはいかないとも考えている。