ジャスパーは高校1年生のある日、本当に突然オーヴァードとして覚醒した。

鳥、あるいは天使のような翼を生み、陽光を背に受け人間離れした速度でグラウンドを翔ける姿を、クラスメイトに見せつけることになった。
クラスメイトたちの反応は多様で、称賛する者、畏怖する者、疑う者、助けを呼ぼうとする者。UGNの接触があり彼ら自身は記憶処理を施され、なかったことになる。(この時N市支部の支部長、他数名と接触、レネゲイドの扱いを教えられた)
しかしジャスパーはこの様子を忘れられなかった。
それを思い出すと自分が一体何なのかわからなくなる。クラスメイトとも、幕一枚隔てて話しているような感覚を覚えるようになった。自分は、異物だ。

その後しばらくして。青倉 シンというクラスメイトの男子から恋愛相談を受けた。お前あの子と仲良さそうだし、間を取り持ってくれ！と。自分の容姿の物珍しさで話しかけて来ただけで、友達だとは思われていない気がするのだが…。断りきれず了承。
あの子の好きなものを調べたい？ええ、そこから…？

そこからは青倉の情熱につられて色々やった。
本人や彼女の友人にそれとなーく話を振ってみたり(オレェ、今たくあんにめちゃハマッてるんだわー！これより美味しい食べ物あるなら食べてみたいわー！！誰か教えてくれないかなー！！|дﾟ)ﾁﾗｯ)、そうして聞き出したものを青倉とジャスパー2人で試してみたり(なあ青倉、このベンチャー企業の社長が女性を振りまくるドラマ本当に面白い？)。
実はオーヴァードとして強化された五感で特ダネをゲットしたりもしていた(あの子のシャンプーはい◯髪だ！同じものを使って好感度アップ！)。

数日後。男二人廊下で散々まごついてから、件の女子に話しかけに行った。青倉だけ送り出す。
…少し離れて様子を伺っていたが、部活やテレビの話で案外盛り上がっているようだった。

予鈴が鳴り、その場は解散。頬を上気させこちらに駆け寄る青倉が、ジャスパーの肩を興奮のままに叩く。
…幕が取り払われた、気がした。特別なことではないと思う。それに自分のことでもないはずなのに。こんなにも嬉しいのか。だったら。

誰かを助けて、縁を繋げる存在になりたい。目立つ容姿もレネゲイドも、そのために神様がくれた能力だと信じてみよう。
そんな想いから、5円で相談「5円部」は生まれた。当然のように一緒に活動することになった青倉が、キャッチーにしようと言い出して作った触れ込みである。そして、そんな噂を聞き付けた生徒の中には、レネゲイドの存在を知る者も希におり…。

ちなみに青倉はその後の例の子に告白してしっかり振られた。途中から意味わかんなくて普通にちょっとキモかったらしい。ごめんて。