夜食を買った帰り道。ワーディングが
展開されたと思ったら、見知らぬ行き倒れの少女に
夜食を奪われた。

その少女、サオリ曰く、
FHエージェント”サイレントシープ”が
遺産”ティルフィング”と融合、
分離したうちの1人が彼女である。
そしてそのもう1人の”ブラッドレイン”は
残った分身を吸収して力をつけることで、
UGNとFHを壊滅させようとしている、とも。

サオリと…それぞれの事情で集まったUGN支部長、
FHエージェントと共に街を駆け、ブラッドレインを
止めることに成功。サオリは世界を知る旅に出る。
…が、ものの数日で迷子になって戻ってきた。
だから行き先を決めてから進めと
何度も言っている。人生の迷子か。
氏原はまたしても奪われた夜食を買い直しに、
2人でコンビニへ引き返す。
今度は、いくらでも時間はある。

ＦＨセル企業「株式会社アルファトリム」、
中途採用。勤務3年目。

土地や物に根付く怨嗟を操り、
破壊の力に変える能力を持っている。
幼い頃からその片鱗があり、人間や社会に対しての
不信感から厭世的な性格になってしまっている。

であるから、UGNに協力して人助けをするなんて、
欺瞞だと感じてしまう。
かと言って力で全てを手に入れようとするのも、
醜悪だと感じてしまう。
ある種の卑下と諦めをもって、
比較的社会性のあるＦＨセルで生計を立てることを選んだ。

だが、その選択は、現実への認識が足りなかったのだと、入社後に自覚した。
飛び交う怒号、舌打ち、相互監視の視線。
この忌々しい能力の糧になる怨嗟の吹き溜まりのような組織だった。
唯一心を許せた社員番号20XX099番は、理不尽な理由で地下送りにされた。

誰もの怨嗟が押し込められる、この会社は間違っている。
ならば、それを解き放つのが、自分の役目か。
淀んだ瞳に、仄暗い光が宿った。