容姿・経歴・その他メモ

▼序

──最初の1人“ファースト・ワン”。
かつて世界を構成する法則の在り方を解析し、手中に収めるだろうと評された男の名前である。

一般的にモルフェウスシンドロームは物質を元素単位で理解・分解・再構築する能力であると判明している。
つまりは材料となる元素がなければ新たに物質を構成することは出来ない。
この男は完全なる“無”から“有”を生み出す異質な能力を持っていた。
男曰く「空間に存在する素粒子セルの5つの情報基。その配列を書き換えただけ」
いともたやすく語るが、それは現代の物理学を根本的から否定する代物だ。
錬金術師達は男を恐れてそれを魔術師と呼んだ。魔術師達は男を恐れてそれを魔人と呼んだ。


▼破

ではその男が世界をどのように変容させていったのか。その話をしよう。

──その男は何もしなかった。

正確に言えば、世界の理を解析する事が些細に思える出来事に関心を奪われてしまった。
魔人とさえ呼ばれた男は一般人の女性“アンナ”に一目惚れした。
笑える話だが男は一目惚れした女に振り向いてもらうために万能の力を捨てた。
アンナは黄金とダイヤで出来た花束よりも、歯の浮くような甘い言葉を求めていた。だからその力を捨てることに躊躇いはなかった。そして、男は彼女に好かれるため初めて「努力」をした。
その「努力」は結ばれた。


▼急
妻のアンナが身籠った。
生まれてくるのは女の子らしい、アンナは娘をハルナと名付けようと提案した。出産予定日は秋なのに何故春なのかと聞いてもアンナは教えてくれなかった。結局男はその答えを知ることはなかった。

幸せな日々は続かない。
出産と同時にアンナが亡くなった。男は愚かなことに初めてその時「喪失」という概念を理解した。

男は「喪失」を理解できたが納得はできなかった。
だから男は妻の亡骸を抱えて、再──。いやこの話はやめよう。

　
▼
長くなった。男の名は佐倉　倉淵。
得意な料理はハンバーグ。今欲しいものは自動食洗器。
どこにでもいる普通の主夫だ。
14年間男手一つで娘の陽菜を育ててきた。だから家事には自身がある。
“家庭科”の授業の内容だったらなんでも聞いてくれ！

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