趣味のゲーム（FPS）において、秋は世界レベルのランカーだった。
これは掛けている時間と天性のセンスによるもの。
ときどき動画サイトで配信も行っており、固定ファンもいたのだとか。

世界王者のトロフィーを掛け、チームメンバーと切磋琢磨するなかで、あと一歩だけ及ばない、倒すべきライバルへの対抗心。
誰だって持つであろう普通の感情が、しかし彼のレネゲイドウィルスを活性化させた。
幸運なことに暴走に至らなかった秋は、これまでとは段違いの能力を発揮させ、世界ランク一位を奪い取る。

だが、あまりに精密なそのプレイは、仲間の目には一つの疑惑に映った。
彼はチートを使用しているのではないかと。
かくして彼はチームを追放された。

実際、オーヴァードとしての能力を無意識に用いていたことは事実だ。
しかし、それは止めれるものではない。
既に能力は秋の一部であり、その行使は一般人が心臓を動かすことと何ら変わりないからだ。

ただプレイするだけで、チートを疑われる。
無実の証明はできず、しかし唐突に得たその能力を、本当に自分の実力と言っていいのかも分からない。
途方に暮れた秋に声をかけてきたのは、UGNの組織員だった。

自分がこうなった理由を知るために彼らの話を聞くことにした秋は、自分の力が強大でかつ危険であることを知る。
その時、真っ先に思い浮かんだのは老夫婦の顔だった。
こんな自分でもずっと育て見守ってきてくれた人に、迷惑をかける訳にはいかない。
適切な制御を学ぶため、そして本当の自分を知るために、秋はアカデミアへの編入を決めた。