容姿・経歴・その他メモ

平安の世において並び立つ者なき陰陽師あり
かの高名なる安倍晴明を師とし、化生の娘を調伏し名を与え娶るものなり
鬼を従え焔を纏い、陰陽五行に通ずる比類なき力振るいて京を護りたり
其は誉れ高き大陰陽師、麻倉葉皇なり

されども化生の正室が祟りを招く
其の御姿、幾年月を経ようと不変と知りたもう時の朝廷、化生に通じ化生に墜ちた故にと討伐を命ずるものなり
其は御姿と同じく京を護りたるのに

嗚呼、誉れ高き大陰陽師麻倉葉皇
名は地に墜ち泥を這い逃れるものなり

迫り来る追手を焼き払い、薙ぎ倒し、それでも逃れ続けた果てに
共に逃れたる葉越御前、疲弊の極みに達す
最後の追手は悲しきかな、葉皇と御前の子孫たちであった
葉越御前、これにはたまらずと泣き腫らし
永久の別れを告げ、其に介錯を懇願するものなり

その後、其の行方容として知れず
幾ばくかの書物に姓名のみ残るものなり


※雑ななんちゃって古文の長文失礼。雰囲気だけなんとなく察してクレメンス


身体はとうに朽ち果て、
幾星霜の年月が流れたかも判然とせず、
それでも死ぬことはできず。
かつて愛した化生との口約束、それのみを拠り所にして歩き続ける。
かの人は、いやさ、かつて人だった彼は、今も彷徨い続けている。
｢あぁ。優しいあなた、愛しいあなた。どうか死なないで。私のぶんまで生きて。誰より優しいあなたが世を去らねばならぬなど、例えお天道が許しても私は許したくありません。どうか、どうか……｣(※意訳)
果たしてこの言葉が祈りだったのか呪いだったのか、それを問う事は永久に叶わず、それでも……。


平安時代に活躍した陰陽師であり検怪異使(けがいし)。
遥か西から流れて来た"吸血鬼"なる西洋の鬼との死闘の末、彼女に気に入られて不死性を分け与えられてしまった。
彼女こそは、撃鉄にして寸鉄にして錬鉄の吸血鬼キスクラッチ・アクセルシンクロ・ハートオーヴァーブレードであった。
死闘を通じて憎からぬ感情を抱いた彼は、てめぇこの野郎なにしやがった、とめっちゃ怒りつつも、妻になるなら滅ぼさずにおいてやると勢い余って求婚した。
その際に、オーヴァーは越える(超える)、ブレードは刃の意味であると聞き、ならばお前には刃よりも風に舞う葉の方が似合うだろうと"葉越"と名を与えた。

彼女を伴い(というか彼女の方が無理やり着いてきて)検怪異使として陰陽師として一騎当千、万夫不当の活躍でもって京を守り戦い続けたが、子を作り育て幾年も過ごすうちに、はたと気づく。
……あれ。歳とってなくない？
気付いた頃には時既に遅く、朝廷から討伐部隊が派遣されており仲間だったハズの検怪異使たちからも追われる始末。
師であった安倍晴明の手引きで辛うじて京を脱したものの、逃げに逃げ続け、追手に追い付かれればやむ無く倒し、そんな生活を幾年か過ごし2人は疲労困憊。

最後にやって来た追手が麻倉家の陰陽師だった事が決め手になり、ついに葉越は生きる事を投げ出してしまい、彼に殺してくれと頼み込む。
嫌だ嫌だと拒む彼に、彼女は自身の不死性の全てを渡して、さあ殺せと言うものだから、泣く泣く彼女に手を掛けたのでした。

それからの彼は、何処へともなく歩き続けました。海を越えて大陸に行ってみたり、彼女の故郷とはどんなところかと訪ねてみたり。
行く先々で(もっぱら異邦人だからという理由で)トラブルに見舞われるものの、元は京の人々を守って戦っていたものだから、困った人を放っておけずに助けては去っていきます。
そんな生活が都合1000年ほど続きました。1000年も歩き続ければ、地球を数周はしたかもしれない。

幾つもの土地を渡り歩き、たくさんの出会いと別れを繰り返し、その瞳はなにを見つめ続けたのか。
そうして今、彼はなにを思っているのか。それは誰にもわかりません。あるいは、彼自身にすらも。

「小っちぇえなぁ」
「俺は疲れてるんだよ」
「なんとかなるさ」
「あ～………なんで毎度毎度厄介事に首を突っ込んでしまうかなぁ俺………」
「俺が誰かって？……さぁね。もはや俺にもようわからん。……わからんけど、そうさな……。……麻葉（あさのは）、そう呼びなよ」

「我が師、安倍晴明が授け、俺が鍛え上げ極めた麻倉の秘奥、………お前如きには勿体無い冥土の土産だ。泰山府君によろしく言っといてくれ」
「裏鬼門解放。鬼門封じ、四神相応！来たれ青龍、朱雀、白虎、玄武、麒麟！」
「木は火を生み、火は地を生み、地は金を生む。そして金は水を生む。麻倉流陰陽五行戦之法！森羅万象！！」
「木は地に剋ち、地は水に剋ち水は火に剋つだろう。そして火は金に剋つ。是すなわち───陰気にて討ち滅ぼさん、森羅万象・相克なり！」

「キスクラッチ……俺はあと、どれだけ生きればいいんだい……？」

2020/06/20赤土さん卓『昏き星、遠い月』参加予定

履歴

『昏き星、遠い月』
N市での事件では、自分と同じように永い時を生きる何人かの吸血鬼と出会い、旧い因縁と偶然の邂逅を果たしました。
それに、現代を生きる友人との再会。これは麻葉にとっては嬉しい事でした。

寿命のない不老不死の吸血鬼(や古代種のオーヴァード)にとって、生きることはこの世の地獄のようなもの。
そんな現し世をどう生きていくのか。孤独や迫害、その他有形無形の多種多様な苦しみが襲ってくるでしょう。
それでも、空を見上げてみれば、いつかのあの日と変わらない星空がそこにはある。
過去を振り返っても勿論いいけれど、それと同じくらいに現代や未来に目を向ける永遠を生きる誰かがいてもいい。
そんな風に麻葉は思うのでした。

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