小学生の時に父親が傷害事件を起こし、有罪判決を受ける。
近隣住民や関係者からのバッシング、
職場や学校おいてのいじめや嫌がらせなどに母子ともに耐え続けたが、
ある時母親の精神が限界を迎え、依弦を置き去りにして失踪する。

その後、母親も保護責任者遺棄罪に問われて有罪判決を受け、
置き去りにされた依弦は市の職員に保護されて一命を取り留めるが、
依弦を引き取った親戚の家での依弦の扱いは冷たいものだった。

学校でも、家でも、どこにいても依弦は「犯罪者の子」として扱われる。
目立たないように、波風を立てないように、
下を向いて隅の方で暗く息をひそめて過ごす。
それでも、日々の憂さ晴らしの格好の的として白昼に引きずり出され、
どうしようもないことで責め立てられ、からかわれ、指をさされる。

そんな日々に、ついに限界を迎える。
16年前、15歳のころに殺戮衝動と共に覚醒。
依弦を冷遇し続けた親戚一家を全員殺害。
混乱した依弦はそのまま家を出て逃げ出すが、その先でUGNに保護される。

依弦が起こした事件は表向きは一家心中事件として処理され、
依弦自身は地元を離れてUGNに生活を支えてもらいながらも遠方の桜岐高校へと進学する。

事件の事や依弦の過去を、進学先の人間は知らない。
依弦は「人畜無害を演じていれば人は信用してくれる。」と笑って過ごすことを心掛け、
おおよそ今の性格は高校時代に形成されている。
そのためか、高校での人間関係は良好だったようだ。

自分に居場所を与えてくれたUGNに報いるべく、汚れ仕事を率先して引き受ける。
特に、ジャーム化した仲間を処分するための任務などに当たることが多かった。
殺戮衝動と共に覚醒したことが影響しているのか、理由さえあれば誰かを手にかけることに対し忌避感はない。

決して戦闘狂ではないが、人としての何かが欠けている。

元々、エンジェルハイロゥとモルフェウスの力を使って
光線砲を作り出して戦っていた依弦にとって、
ミストルティンという力は有用かつ魅力的に映った。

そしてどこからかミストルティンシンドロームの人間が作り出した武器のかけらを回収してくると、
自身の心臓に埋め込み、人為的にミストルティンの力を発現させる「実験」を行った。

実験は成功し、依弦の心臓には宿木が根を張る。
彼の作り出す光線砲は依弦に寄生することでより強力な神具と化した。

だが、それと同時に、無理やりミストルティンシンドロームを発現させた影響か、
あるいはミストルティンという力の性質なのか、
武器を作り出すと同時に心臓に激痛が走り、
さらに自身から何かが吸い上げられていくような感覚に襲われるようになる。

作り出す武器は強大な威力を手に入れると同時に、その反動に耐えかねて1発の攻撃で崩壊していく。

魂を削り、肉体を削り、"なにか"をすり減らしながら戦う。
それが狂気がもたらした力の代償なのだろう。