穴が空いている。
己の心に、記憶に、人生に。ぽっかりと虚ろな空白がある。

幸せな日常に入り込んだ小さな違和感。その空洞はいつだって其処にあって、ふとした時に囁いてくるのだ。── 自由になりたくないか、と。

でも、気付かないふりをした。気付いてはいけなかった。

”それ”に呑み込まれたら最後、己は己でなくなってしまう。この美しく幸せな日常が、跡形もなく壊されてしまう。漠然と、そんな予感がした。


── だから、思い出してはいけない。


【表】
優しい両親、気の良い友人達に囲まれ、何不自由なく平凡な生活を送ってきた。だがそんな彼にも歪な過去がある。それは、一年間の空白だ。

中学校に入学した直後、突然彼は失踪した。家出、誘拐、犯罪に巻き込まれた── 様々な憶測が立ち、警察も捜索したが手掛かりは何一つとして掴めないまま。そうして一年が過ぎ、周りの人間が諦め始めた頃、彼は突然帰ってきた。行方不明だった一年間の記憶を、丸ごと失って。
当時は狭い学区内で随分と噂になったが、騒ぎは直ぐに下火となった。それは彼が無傷で帰ってきたこともあるだろうし、当の本人が異常なまでに平静であったことも要因の一つだろう。

そう。彼は事件前と何一つ変わらない。強いて言うならば、少し面倒見が良くなって、ぼんやりする時間がほんのちょっと増えただけだ。


【裏】
行方不明となっていた一年間、レネゲイドの発現を研究している組織(どこかは決めてない)に誘拐され、実験体となっていた。その際監禁されていた部屋が同じであった少年(小学生くらい？)の面倒をよく見ていた。
一般人をオーヴァードとして覚醒させる研究所だったが、彼はいつまで経っても覚醒しなかったため、無茶な実験の末に死にかける。その時に良識的な研究者によって助け出され、記憶を消された上で家族の元に返された。（尚、死にかけたところを少年に目撃されたりされなかったりする……かもしれない。）
その後研究所がどうなったのかは不明。(HO4が知っているかもしれない)

死にかけた時点でオーヴァードとして覚醒しかけていたが、記憶が封じられたことで能力の発現も不発に終わった状態。もっかい死ねば何かが変わるかも()


一年間ずっと閉塞的な研究所で灰色の天井を眺めていたため、｢自由になりたい、広い大空を見たい｣という願望が無意識にこびり付いている。
邪魔なもの全部壊して、空を自由に飛びたいな〜！！(衝動：破壊)