“プリンシバル”は齢14歳時に十年前の「東京都心超常決戦」にて、死闘の末に巨悪党“グランドネビュラ”を打ち倒し、当該事件を治めたとしてカテゴリ:LGを与えられた名誉あるヒーローである。
彼女の戦闘時に彼女の背後に浮かぶ鮮血の紅月は、勝利の象徴であり市民たちの希望であった。

様々なヒーローたちが台頭して来た今では、ヒーローランキングでは彼女の名前が最も目立つ場所にあることは多くないが、今でも彼女のことを最強のヒーローだと信じている人々も少なくない。

彼女のRENEtubeのチャンネル名である。
活動内容は金曜夜に30分ほどの配信を行い、その中でニュースで取り上げられなかった小さな事件を取り上げて、その解決にあたったヒーローたちの功績をたたえ、視聴者たちに身近な危険とランキング外でも頑張っていて頼れるヒーローたちを紹介する、というものだ。
内容自体は取り立てて面白いものでもないが、やはりネームバリューか、いつも多くの視聴者たちが彼女の配信には多くの人が集まる。配信終わりに最近視聴者たちに起こったおもしろかったこと、おどろいたこと、奇妙なことをコメントしてもらうのが通例となっている。
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幼少期にUGNの前身組織であるガーディアンズに保護された彼女は、幼いころからレネゲイドを制御することに長けていた。
彼女の血液は彼女の意のままに、周囲の大人の意以上に自由で、そして破壊的だった。
この暴力はヴィラン、そしてヒーローへの切り札となりえると考えたガーディアンズは、彼女に幼少期から戦う術を叩き込んだ。
8歳のころ、ライセンス:戦闘Sの要件を満たし、いよいよ外部での戦闘を見られても問題なくなったころ、彼女の養育されていた施設に愉快犯のヴィランが攻撃を仕掛けてきた。
切り札である彼女の存在をここで露呈させるわけにはいかないと考えた大人たちは彼女をその場から逃がそうとするが、逆に彼女はそれを好機ととらえた。
ここで私の存在を世間に知らしめてしまえば、何かが変わるかもしれない。
襲撃してきたヴィランをなるべく派手に、メディアの注目を集めるように打ち倒した彼女のもとにたくさんの人々が押し寄せる。
これは賭けだ。自分の壊す力が世間に認められるかどうかの。

助けられた施設の子供たち、そしてメディアは彼女をこう定義した。

彼女はヒーローであると

その場では当然大人たちには認められることはなかったが、その話題性、能力、ライセンス、どれをとっても彼女はヒーローとして十分だった。そして、美晴自身も現状維持を望まなかった。
世間の流れに押し負けた保護者達は、幼いヒーロー“プリンシバル”を認めざるを得なかった。

さすがに8歳でヒーローと名乗るのはひんしゅくを買いそうだったので、13歳の中学生ヒーローとしてデビューした。

デビューから1年がたち、迎えた分水嶺。
この戦争に身を投じた彼女が見たものは地獄と形容しても生ぬるいほどの絶望だった。
守るべき市民は嬲られ、ヒーローたちは自分の身を守ることすらままならず、欲望にのまれた者たちはともに肩を並べて戦った彼女に襲い掛かってくる。
その場の全ての赫を使い潰して壊した諸悪の根源には、その意図を問える機会はなかった。
ここで発生した死の意味も、戦いの理由も何もかもわからなかったが、幼い自分にも最低限分かることがひとつだけあった。

みんなきっと怖い思いをしている。

彼女は決戦後自ら矢面に立ち、ヒーローの代表として名乗り出た。
当然、多大な被害を出した戦争後、ヒーローたちへの風当たりは強かったが彼女は常に笑って不安を払拭して見せた。
その時、彼女の心は初めて英雄にふさわしいものとなった。