こんな子でも、元は下層階級出身の人間だったそうだね。

そう、記者の家系生まれの貧乏記者。
ただほかの記者とは違っててね。新聞の一面を飾るためなんかじゃなくて、ただ真実を皆に伝えるためにそのカメラを握っていた。


不平等に悩まされ、ただ生きるために道端の雑草を貪る日々。
大変そうだけど、これも鈴鳴村のスラム街なら良くあること。
無謀な開発により一部地域に生まれた巨大なビル群、だけどそれによって生まれた『ギャップ』は小さいものではなかったんだね。


...そんなある日、オーヴァード同士の戦いに巻き込まれ顔の右半分を失い死亡した、が。


────拾われたんだ。ある組織の人間に。



吹き飛んだ顔を治すためには色々なものが必要だったけど、何故か拾った人間は全てを持っていた。
顔を治すための皮膚、血まみれの右眼、そして蘇生のためのエフェクトもね。
我ながらすごい！

きっとその子は驚いただろうね。
死んだはずなのに、不思議な力を持って生き返っていたのだから。


見事に生き返った彼女は、勿論その組織に尽くした。
最初は馴染めなかったみたいだけど、その『目』のおかげですぐ馴染めたみたいだ。


そして────気付いたら私なんて追い越してボスの座に立っていた。
この頃の協会は今みたいな活動ばっかりじゃなくって、得た情報をすごい高値で売ってたんだよね。

もしかしたら…そんな姿勢が気に食わなかったのかな？記者の彼女にはきっと、私たちがとんでもない悪の組織に見えていたのかもしれないね。

だから彼女がボスになってすぐに、この協会は情報を安価に提供するようになった。
名前もエントリヒ協会なんかに変えちゃってね。


私はすぐに失敗すると思っていたんだけど────ビジネスのセンスだけは私や、ごく普通のそれを軽く上回っていた。
ま、ちょっとうっかりは多かったけど...優秀な部下が多かったみたいで安心したよ。


果たして、その強い熱意でその『目』が根腐れしてしまわないか───




────それだけが、心残りだね。