生まれは、とある貧乏な農村でありました。
　私たちは、苦しみながらも支え合いながら生きておりましたが、ある日飢饉が起きまして。
　周りの兄弟姉妹、近所の者皆が飢えて死にました。

　残された者たちも私含めておりましたが、それでも、生きていくには食べ物が足りませんでした。
　すると大人たちは、私を縄で縛り、村近くにある森、その奥にある祠へ置きました。
　神様へ私を捧げることで、神の怒りを鎮め、飢饉を治めようと言うのです。
　
　その時の私は子供ではありました。
　しかし、それは体よく私を捨て、食い扶持を減らす為の妄言であることは、子供ながらに理解しておりました。

　祠に“祀られ”、幾日が経過したころでしょうか。
　私の元に、素性の知れぬ者たちがぞろぞろと集まって参りました。
　今思えば、あれは不破衆の妖術師共だったのでしょう。
　訳の分からぬ祝詞を唱えたと思うと、私の体が突然熱くなり、次第に全身に割れるような痛みが走りました。

　痛みが引いた後、不破衆の者共は嘯きました。
「われらの元に下れ。その力、存分に人の世を壊すために使うのだ。貴様を捨てた者共、貴様の恨みつらみ、晴らさでおくべきか」

　私は、確かに村人達を恨んではいたでしょう。
　しかし、それは私たちの手に及ばない天災、自然による理不尽から来たもの。
　この化け物の身に堕ちてなお、私は村人たちに復讐をしようなどとは思いませんでした。

　そして私はただ一言、妖術師共に囁きました。
「死ね」
　それを聞いた者共は、一瞬呆けた後、その場に倒れ伏せました。
　……この時から、私の声は呪となり、囁きは刃となり申した。

　ぴくりとも動かぬその姿を見て、私はただ。
「嗚呼、死んだのか」
　そうつぶやき、哀れな死体を足蹴りにして、その場を去りました。

　……それからのことはよく、覚えておりませぬ。
　色々な場所を転々とし、放浪しておりました故。
　覚えているのは、偶然立ち寄った町に、有事組が居を構えていたこと。
　私の妖術を悪事に使わぬこと、有事組に手を貸すことを条件に、仕事と家を提供することを約束することでありました。
　
　私は全てがどうでもよくなっておりましたから、何も考えず首を縦に振り、今に至るのでございます。
　まあ、今思えば、この選択は私にとって良いものだったのでしょう。

　おかげで人を好きになり、人に手を貸すことを生きがいに出来ましたから。
　ええ、私は……いや、妾は今、よい思いをさせてもらっておるよ。ははは。

「おきく、だよっ。わたちになんでも、頼ってね！」

「おお、お主、息災であったか」

「妾、びっくり」

「……あの日から、妾の声は呪となり、囁きは刃となった」

「なればこそ、今は人を助けるために声を用いる。……皮肉なことじゃな」

「酒に酔わねば、こんな話はとてもできぬ。さぁ、盃をもう一献……」

【対・人の敵（権力者や悪党）】

「声は刃、言の葉は呪。妾が囁けば、心は砕け、血潮は凍りつく。
妾の名は――山田菊乃。人に仇なす悪党よ、恐怖と共に眠るがよい」


【対・妖や怪物】

「小さき身に惑うなかれ。妾が囁くは死の言霊。
妾の名は――山田菊乃。妖しきものよ、恐れ、呻き、絶えよ」

昨日と同じ今日。
今日と同じ明日。
世界は繰り返し時を刻み、変わらないように見えた。
だが、人々の知らないところで、
世界は大きく変貌していた。

時は天下泰平の江戸末期、所は将軍のお膝元江戸の街。
かような時代のかような場所にも、超常の力の影があり。
妖、物の怪、魑魅魍魎、彼らを狩るも化物か。

されど歴史は彼らを語らず、全ては闇に秘匿されり。
これはかような歴史の断片、嘘か真かの謎物語。

DoubleCross The 3rd Edition Campaign
大江戸ダブルクロス
「御垣月光伝」

大江戸ダブルクロス、それは歴史に語られぬ物語。

PC1
カヴァー/ワークス:江戸有事組新人隊員/UGNチルドレンorエージェント
君は江戸の人々を超常の力を持つ勢力から守る有事組、その若き新人隊員だ。
己の力を江戸の人々の平和に役立てるため、今日も江戸の町を奔走する。

PC2
カバー/ワークス:江戸有事組幹部隊員/UGNエージェントor支部長
君は江戸有事組の幹部隊員として組織を取り仕切るベテラン隊員だ。
新しく有事組に加入したPC1の指導をしつつ、各種地域勢力と協力して江戸の町の治安を守れ。

PC3
カヴァー/ワークス:情報通の有事組協力者/自由
君は江戸の情報に詳しい情報通で、その腕前を買われて有事組に協力している。
そして時折そのついでに有事組と協力して問題解決にも協力する間柄でもある。
火のない所に煙は立たぬ、さて今日はどのような噂が君の元に舞い込むのだろうか。

PC4
カヴァー/ワークス:旅人/自由
君は遠方から遥々江戸までやってきた旅の者だ。
立ち寄った飲食店で腹ごなしをしていると、どうやら江戸の町に何か不穏な気配がする。
いてもたってもいられなくなった君は、その問題を独自に調べ始めるのであった。

昨日と同じ今日。
今日と同じ明日。
世界は繰り返し時を刻み、変わらないように見えた。
だが、人々の知らないところで、
世界は大きく変貌していた。

江戸の町を騒がす不審火騒動。
火のない所に煙は立たぬとは言うものの、どうにも怪しい煙の気配。
声がかかるは江戸有事組、超常の力から江戸を守る秘密部隊。
火消専門というわけではないが、江戸の危機となれば彼らの出番。
正義の旗印を掲げ、いざ参らん超常の炎。

DoubleCross The 3rd Edition Campaign
大江戸ダブルクロス
第一話　江戸の大火を防げ

大江戸ダブルクロス、それは歴史に語られぬ物語。

PC1
ロイス:御垣瑠璃　推奨感情:同情/不安　
カヴァー/ワークス:江戸有事組新人隊員/UGNチルドレンorエージェント

君は江戸の人々を超常の力を持つ勢力から守る有事組、その若き新人隊員だ。
古くからの友人であるお瑠璃の姉、翡翠が行方不明となったことがきっかけで有事組に入ることを決意した君だが、未だその手掛かりはつかめていない。
そして、そんなことはどこ吹く風といった風に、江戸に不審火騒動が巻き起こる。

PC2
ロイス:霧谷雄十郎　推奨感情:尊敬/劣等感
カヴァー/ワークス:江戸有事組幹部隊員/UGNエージェントor支部長

君は江戸有事組の幹部隊員として組織を取り仕切るベテラン隊員だ。
有事組の元締である霧谷雄十郎から江戸の町に不審火騒動が起こっていることを知らされた君は、早速その調査に乗り出す。

PC3
ロイス:御垣月長　推奨感情:同情/疎外感
カヴァー/ワークス:情報通の有事組協力者/自由

君は江戸では知る人ぞ知る情報通で、その腕前を買われて有事組に協力している。
そんな君を頼って鍛冶屋の御垣月長氏が訪ねてきて早二年になるが、未だに彼の娘の足跡はたどれない。
彼の娘のことも気になるが、今は江戸を騒がせている不審火の噂の方が重要だ。

PC4
ロイス:立ち寄った飲食屋の主人　推奨感情:幸福感/猜疑心
カヴァー/ロイス:旅人/自由

君は遠方から遥々江戸までやってきた旅の者だ。
立ち寄った飲食店で腹ごなしをしていると、どうやら最近江戸の街にて不審火騒動が広がっているらしい。
いてもたってもいられなくなった君は、その問題を独自に調べ始めるのであった。