容姿・経歴・その他メモ

御門学園に通う非オーヴァードの高校一年生
かつては警察官であった父親を尊敬していた優しい子供だった
しかし彼が小学生の時、そんな父親が殺人事件を起こしたことをきっかけに彼と彼を取り巻く環境は変わってしまう
学校は学業や普段の素行は真面目なものだったが、悪を徹底的に憎むあまり町の不良生徒などに暴行を働くなどの荒れた生活を過ごす
その頃と比べると今はだいぶ落ち着いたが、今でもたまにその片鱗が見えることがあるという
高校からこっちに引っ越してきたので、過去の彼を知るものはいない
なので一見するだけなら、普通の優しい好青年といった出で立ちである

戦闘スタイルはレネゲイドによって変貌した右腕で力任せに殴りつけ攻撃する
その右腕からは憎しみの炎が揺らぎ、対象の表面を焼き尽くし侵蝕していく

履歴

杭升 満(くいます みつる)は警察官だった。
悪を憎み正義を貫き、警察の模範と呼べてしまうような人間だった。
少なくとも、彼を知るものは皆彼をそう評価した。
それはもちろん、息子である徠佳も同じであることは言うまでもない。
徠佳はそんな父を心から尊敬し、幼いながらも人生の目標に定めてしまうほど心酔していた。
全ては父親のような”正義を貫く人”になるために。


「お父さんね…逮捕されちゃったの…」。
母からのそんな言葉で、徠佳の世界の全てが崩壊した。
それはクッキーのように脆く儚く、実に呆気なく。

事件は実に簡単なものだった。
その日の午前中、町でひったくり事件が発生した。
彼の父はちょうど現場に居合わせていたため、現行犯で犯人を取り押さえた。
ここまでは実に普遍的で、当たり前で、至極真っ当な結果だった。
それが、”正義を貫く人”である杭升満であると言うならば、誰もが疑うことはなかった。
だが事件はそれでは終わらなかった。
なぜなら彼は”悪を憎む人”でもあったのだ。
犯人を取り押さえた杭升満は犯人に馬乗りになり、犯人を殴った。
殴って、殴って、殴り続けた。
犯人の顔からは鮮血が吹き出し、誰なのかの判別ができないほど変形した。
鼻は醜く曲がり、歯はいくつもへし折れ、頭蓋骨が割れた影響で脳漿を撒き散らしていった。
周囲には血溜まりができ、鈍く不快な打撃音が響き渡る。
犯人がピクリとも動かなくなっても杭升満は殴り続けた。
その手が砕けグシャグシャになり、その手を赤く染めているのがどちらの血なのかも判別ができなくなっても。
彼は殴り続けた。
通報を受け駆けつけた警官に取り押さえられるまで、何度も。
その目は狂気に満ちていた。

事件はすぐに世間に広まった。
現役警官の事件だからと隠蔽するにも、この事件はあまりに多くの人の目に晒されすぎた。
その異常さと残虐さは、ワイドショーでも何度も取り上げられ世間を震撼させた。
もちろんマスコミは連日連夜徠佳の家に押しかけ、インターホンはけたたましく鳴り続けた。
近隣住民は彼ら家族に心無い言葉を投げつけた。
「出ていけ犯罪者」、「死ね」、「殺人一家」…
幼い少年が受け止めるにはあまりに残酷な言葉の暴力の数々。
それは徠佳の心を黒く染めるのには充分すぎるものだった。

中学校にあがる頃には、徠佳は荒れた学校生活を送っていた。
授業にこそ出れど、放課後になれば町中では暴力沙汰を起こして停学になり停学が開けても校内でもクラスメイトを殴り謹慎を言い渡される。
理由はいつも同じ「アイツが悪だったから」。
いじめや万引き、ポイ捨てすらも彼にとっては悪の対象だった。
そんな彼を、なぜか母は叱りはしなかった。
保護者として学校に呼ばれ教員たちに採算注意をされども、徠佳に辛辣な言葉を吐き捨てることはなかった。
ただ静かに、徠佳を見守るだけだった。
徠佳もそのことをずっと不気味に思ってはいた。
あの日から、少しも笑うことがなくなった母親。
その母親が今何を考えているか、実の息子であるにも関わらずまったく予想もつかないことに一抹の不安を抱えていた。
そんなある日、停学中の徠佳が乾いた喉を潤すために自室を出たその時にリビングから何かが聞こえてきた。
静かに聞き耳を立てるとそれは彼の脳を震わせた。
母のすすり泣く声だった。
徠佳は母のそんな声を今まで聞いたことはなかった。
母が何を思い泣き、何を考え声を上げていたのか。
本人が口にしないのだから知る由もない。
ただ、徠佳にはわかった。
「自分だ」と。
その時徠佳は、初めて気がついた。
自分が、”悪を憎む人”になっていたことを。
今までにも気付ける機会はあったはずだった。
感じる時間はあったはずだった。
だが、気づかなかった。
気づけなかった。

その時、徠佳は虚空に堕ちた。

母の涙を見て以来、徠佳は人を憎むことをやめた。
憎しみは正義とは違う。
そのことに気づいたからだ。
「人には優しくしよう」「誰も傷つけないようにしよう」「みんなと仲良くしよう」。

「”正義を貫く”のはやめよう」。
徠佳は、世界の理不尽も知った。

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