玖珂家は、奈良時代以前より連綿と続く陰陽師の家系である。
武家の台頭に伴い歴史の影に埋もれた陰陽師であるが、玖珂家は地元では強い影響力を持ち続けた。その一因が、玖珂家当主が代々継承してきた『式神』である。
かの有名な安倍晴明がオーヴァードであった、というのはレネゲイド史研究家の間では通説であるが、玖珂家の陰陽師もまた同様にオーヴァードであったとされる。
それも、人為的な儀式によって、意図しての継承が可能という特殊性を持つ、現代では古代種に分類されるレネゲイドである。
それを継承した瞬間から、玖珂の当主は人であることを辞め、不老の存在と化すという。
そうして古よりオーヴァードの力を振るってた玖珂家が、他より抜きん出た権力を所持・維持出来たのは、当然のことであった。

しかして、不老であるはずのその歴代当主は、皆長らくその座に座ることはなかった。家系図を紐解けば、通常の人間と変わらない年齢で──当時の人間にしてはかなり長生きではあるが──没していることが分かる。
その理由は推測にはなるが、『式神』と呼ばれる古代種レネゲイドの意思であろう。式神は代々玖珂の当主に取り付くが、気まぐれであり、宿主への好みもあるともされている。宗家だけでなく、分家や庶流も含めた一族の中で、その世代で式神に最も好かれた者が継承先として選ばれ、当主になるのだ。
また、式神の加護が抜けた瞬間……すなわち、古代種のレネゲイドが離れた瞬間、不老であった当主は反動のように急激に老衰するという。

そのようにして古くから玖珂家はレネゲイドに触れてきており、そのためFHとも繋がりが深い。とはいえ特異な能力を確保しているという自らの権力基盤が揺らぐのを恐れているのか、レネゲイドの拡散には否定的な立場であるようで、表立って事件に関与することは避けており、FHへ協力する事は少ない。

（追記事項）3年前に継承した現当主はUGN寄りの方針を取っており、あちらからも積極的に我々との交流を図っている。とはいえ一族の中では意見が割れており、若過ぎる当主への反発も多いようだ。