彼はとある家で長男として生まれた。そして、後に双子の妹と弟ができた。
　彼は田舎に生まれ、普通の公立学校に通い、普遍的な学生時代を過ごした。彼は周りと違ったのは、自分が他よりも賢いということだった。後に都市の有名医学大学に通うことになり、彼は貧しい親や妹などに満足のいく生活をしてほしくて、医者を目指した。そこまでは、よかった。しかし、医師として大事なオペ中に、とある患者に触ったことで、彼は日常から強制的に離脱した。彼は、患者からレネゲイドウイルスに感染し、オーヴァードとして覚醒した。上手くいくはずだった、人生の道は、唐突にレールから外れた。自分の意思も関係なく、ワーディングが発動し、患者は死亡。医者として、致命的なアクシデント。彼は逃げるようにして、病院から抜け出し、人気が無くなった路地裏に迷い込んだ。──そこで、出会ったのは、“ディアボロス”春日　恭二だった。

　“ディアボロス”春日恭二と出会い、導かれるまま、ファルスハーツの一員となったのはどうしようもない自分には必然のことだったのかもしれない。ファルスハーツに入り、春日恭二とペアを組むようになったのも今となっては運命的だった。春日恭二は狂人だが、一緒に行動していろんな任務に取り込んでいくうちに意外と悪い奴ではないのだと分かった。いや、間違いなく悪い奴の分類には入るのだが。いや──僕だって、悪人に染まってしまっているのだ。春日とのコンビは、ファルスハーツの中で名が上がるほどに戦果を出し、UGNに甚大な被害を出したこともある。正直言って、悪い日々ではなかった。やっていることは悪事だが、それで人を救えたこともある。時には手を悪に染めてでも、成すべきことはあるのだと、そう思いながら。【見えざる手(インビジブル・ハンド)】と呼ばれ、そんな日だった──ファルスハーツとして名が上がっていく自分に腹を立てたファルスハーツの中の誰か。ファルスハーツも一枚岩ではないということだろう。僕の、弟と妹を人質に取ったという男の言葉を聞いた。人質に危害を加えない代わりに、男が出した命令はこうだった。『ファルスハーツを裏切り、UGNにスパイとして入り込め。そして、組織の情報を私に横流しろ』というものだった。
　僕は、ファルスハーツを抜け出した。親友、最高のバディ、春日を裏切って。

　春日を裏切り、ファルスハーツを抜けて、UGNに拾ってくれたのは女性のUGN幹部だった。彼女はファルスハーツとして活動してきた僕の名を知りながら、UGNに幹部としての力を駆使して、組織に入れてくれた。優しい人だ。厳しいが、威厳のある人だ。──僕が、裏切りの犬だと知らずに。こうして僕は、ファルスハーツを裏切り、UGNの内側に溶け込んだ。

　基本的に支援をし、裏切るだけ。情報パートでは俺つえーものになる。

　裏切り者というコードネームは、ファルスハーツを裏切り、友を裏切ったから。ブルータス、お前もか。からとっている。