平成の切り裂きジャック

…俺の親父は殺人鬼だったんだ。

4年前の誕生日、ケーキを切るためにと親父が台所からケーキナイフを持ちだして、そのケーキを母親の血で染めた。

13年ぶりに刃物を持って衝動に駆られた親父
気付いたら俺は切りつけられていた。

3等分だと大きいよね6等分だと物足りない9等分だと分けにくい。12等分、15等分、30等分、90等分…
もう一人だから好きに切り刻んでいいか

逃げ出せないように腱を切られ
叫べないようされど声は漏れるように声帯を切られ
痛みで意識が飛ばないよう浅く切り刻まれ続けた。

どれだけ時間が経ったのかもわからない
どれだけ刻まれたのかもわからない

親父は満足したのか
深く抉るかのように
最後に心臓を突き刺し、嗤った。

最後に親父の嗤い声が
ぶつぎれにこだまのように
響いて聞こえたように感じ俺は意識を失った。

誰かのささやくような歌声が聞こえた。
その歌声に耳を傾け、目を開けると俺は病室に居た。

4年前の誕生日、父親に俺と母親は切り刻まれ死んだと思った。

だけど、ささやくような歌声を聞き
俺はなぜか病室で目を覚ました。

ささやくような歌声の主は幼馴染のアリスだった。
声を掛けようとしたが、喉も切られていた為、声を出せずにいたが
アリスは俺が目を覚ますのに気付くと目に涙を浮かべ慌てて医者を呼びに行った。

医者の話を聞くと、4日間も眠りっぱなしだったという。
切り刻まれた外傷のことを確認しても
どこにも外傷はないと言われ
ショックによる記憶の混濁だと言われた。

俺は確かに切り刻まれていた。
それははっきり覚えている。
他の医者にアリスに確認しても、ショックだったんだねと慰めるだけだった。

目覚めた数日後、UGN日本支部の長を名乗る少々疲れた表情のした男性が世界の真理を教えてくれた。

あの時起きた惨劇は現実であること。
俺は異能の力を得て命をつないだこと。
されどそれは持たざる者に知られてはならないと。
そしてその力で世界を護ってほしいと。

未だに声が出ず、あの日から立ち直れない俺は返事が出来なかった。

気持ちの整理がついた後でいいとその男性は連絡先を残し立ち去った。

あまりに多くのことがあった俺は
どうすればよいのか、何も見つけれずに日々を過ごしていたが、そんな俺を癒してくれたのは友人のアリスの音楽であった。

彼女のスコアが辛さを癒してくれた
彼女のリリックが心に勇気をくれた
彼女の気持ちに応えたいと前へ進んだ

ラスサビに入ったとき
一緒に声を発せられた


その日の夜、何をしたいか、何を護りたいか、何を叶えたいか見つけた俺は連絡先に応えたのであった。