腰まで伸びる艶やかな髪と、健康的な足が特徴的な女子。少女でも女性でもないような年齢に見えるが、実年齢は19。見た目よりは少し幼く見える。
　どこかぼーっとしていることが多く、隙だらけに見えることと、男子にも女子にも変わらず興味なさげに接することから勘違い男子を量産している。告白されることもあるような綺麗な外見だが振っている。

　元々、そんな予感はしていた。
　UGNエージェントの両親の元に生まれたのが五月雨或透。いつから気づいたのか、両親が危険な仕事をしているというのは。両親の表情から、仕事の結果を読み取れるようになったのは。2人がどれだけ疲れているのかを読み取れるようになったのは。それと同時に、学校で疎外感を、退屈を感じるようになったのは。
　相手の心を読むことも、そのまま相手を支配することも。言葉という力を使えば、私はなんでもできる。いや……それは言葉だけじゃない。最適解が分かってしまうようなその力は、またその力によって両親と同じような力であると理解した。結果として事実そうであったのだが。
　全てが理解できる。それが「ノイマン」というオーヴァードの力によるものだと知った。両親とは違う、日常生活に直に影響するその力を疎ましく思っていて。そして使おうとも思わなかった。
　けれど両親は否定しなかったし、むしろ彼女を愛してくれた、喜んでくれた。そんな中で、彼女にも変化が現れてきて。賢いからこそ、両親の凄さを理解して、そして尊敬の念を強めていった。賢いからこそ、この能力がなくても知能とは別の人間的なところで尊敬すべき相手には、きちんと敬意を払っていた。そう、過去形で。

　そんな予感は、昔からあった。母親が殉職した。それに父は敵討ちをしようとしなかった。知能が高いからこそ、初めてこんな制御できない感情にかられた。死にたくなった。それ以上に殺したくなった。──｜もう一つの力《モルフェウス》に、目覚めた。

　仇討ちをしたいと思った。力は｜元々の力《ノイマン》の力によってすぐに制御できた。力の相性は良かったらしい。けれど……その必要もなかった。
　E市の生ける伝説”赤い霧”獅子戸 切籠によって仇討ちは成された。私も、父も関係のないところで。

　だから……”赤い霧”に、師事することにした。
　対オーヴァード武装探偵事務所『血塗れの路地』。そこに、所属することにした。人を知ってしまう力で、彼女の力で。少なくとも、彼女の母は、そうすることを望んでいたと、思い込みたかったから。

別に自分で名乗ったわけじゃない。ある戦闘スタイルから生まれた二つ名。本当は母か師に連なる二つ名が欲しいと思っている