"父"という人物はUGNの研究員だった。彼は研究に行き詰っていた。成果を出さなければ出世できず、踏み込んだ研究もできないため彼は悩んだ。
　彼には恋人がいた。同じ研究所で働く研究員の彼女は、彼の部下でもあった。そして、彼女は美人だった。沢山の男が寄ってくるくらいの美女であったが、勝気な性格故に全てをあしらい、彼だけを愛した。

　ある日、彼は新たに研究テーマを設け、研究を進めていた。その研究でもし成果を出せなければ破門という状況であった彼は一所懸命に研究に打ち込んでいた。ある程度の成果を出し始めた時、よくない噂を耳にした。それは恋人が浮気をしているというものであった。彼女に限ってそんなことはない、と思考を正した彼は更に研究に打ち込むも、彼は目撃してしまった。恋人が研究所長と不埒なことをしているところを見てしまったのだ。彼は絶望した。信じていた恋人を失った彼は、失意のままに研究を進めた。
　精神を病み、人相も性格も変わってしまった彼は禁断の研究に手を出した。それは「人体錬成」と呼ばれるものだった。「人体錬成」がなぜ禁忌とされているかは、「取り込ませるDNA情報が多ければ多い程精巧な人間ができあがる」ところにあった。彼はそのことを知っており、自身の手で恋人を殺し、「人体錬成」の素体とした。ある夜の出来事である。
　実験が身を結び、成果を出せた彼は「人体錬成」の実験に精を出す様になった。彼は恋人を素体に、新たな人間を作り出した。表向きには恋人との「子供」だが、彼は彼だけの「妻」を作り上げたのだ。

　「妻」は純粋に彼だけを見つめ、彼だけを信じ、彼だけを愛した。しかし、禁忌に手を出した彼はUGNの研究所から追い出され、身柄を拘束されてしまう。その時に「妻」は「彼の子供である」と周囲に説明し、拘束を逃れるも彼とは離れ離れになった。それに耐えられなかった「妻」は彼の下へ行き、彼と共に生きるためUGNから脱走しようとした。それを阻止したのが玉野椿である。その後玉野椿は彼女の監視役として傍にいることになる。
　「妻」にもレネゲイドウィルスが宿っていることに気が付いたUGNは彼女の了承を取り、UGNエージェントとして活動を始める。同時期、彼が研究していた部屋の調査が終わり、彼女が正式に「人体錬成で生まれた人工生命」だと確定した。「夫」に会えない深い悲しみと、腐った周りの目に絶望した「妻」は「自分は生物兵器だ」と自他に言い聞かせることで感情を表に出さない様にしている。

絶世独立（ぜっせいどくりつ）：この世で並ぶものがないほど独りすぐれている意で、美人やすぐれた人についての形容。「絶世」は世の中に並ぶものなくすぐれていること。「独立」は他から離れて独りそびえ立っていること。
沈魚落雁（ちんぎょらくがん）：魚や雁も恥じらって、身を隠すほどの美人。
羞花閉月（しゅうかへいげつ）：美人の容姿のすぐれてうるわしいこと。あまりの美しさに花を恥じらわせ、月も恥じらい隠れる意。
花顔柳腰（かがんりゅうよう）：美人を言い表す言葉。「花顔」は花のように美しい顔。「柳腰」は柳のように細く、しなやかな腰。
花顔雪膚（かがんせっぷ）：顔は花のように美しく、肌は雪のように白くてきれいだという意味。女性の容姿が美しいというたとえ。
傾国美女（けいこくのびじょ）：絶世の美女のこと。