元FHチルドレン。
両親がFH関係者であり、物心ついたときには既にFHチルドレンとして英才教育を施されていた。
歳が二桁に達するよりも早いうちから各地の戦闘に駆り出され、その度に成長と勝利を積んできた。
当然、先述した能力を一切躊躇せず使い続けていたため、生命はどんどんとすり減っていた。

しかし年齢を重ね様々な人物と接するにつれ、上に言われるまま戦うこと以外に何もない自分に疑問を持ち始め、更に能力の副作用で身体も思うように動かなくなってきていた。
そうは考えつつも相も変わらず戦い続けていたある日、所属していたセルがUGNに急襲をかけられる。
結果、セルを襲ってきた部隊は全滅させたものの、セルメンバーも珊瑚を残して全員死んだ。現場にいた人間で、生きていたのは珊瑚だけだった。
『今なら逃げられる』と、ふと脳裏をよぎった。

セルが消滅し珊瑚自身も死亡したかのように簡単な偽装工作を施したのち、珊瑚は遠くの街のUGN支部に『突如覚醒した野良オーヴァード』を装って転がり込んだ。
そうしてイリーガルとして登録され、今に至る。

力を引き出す能力。
引き出す力の方向性は珊瑚の思うままであり、理論上は無限に強くなることができる。また、自身に使うよりは効果が薄いが、他人の力を引き出すことも可能。
ただし、能力を使えば使うほど生命が削られていく。言ってしまえばこの能力は、寿命の前借りに過ぎない。珊瑚はFH時代、この能力を求められるまま使い続けてきており、寿命も相応に削られている。
医師の診断曰く、二十歳を迎えられる可能性は限りなく低いとのこと。

珊瑚が在りたい自らの形をコードネームにしている。
FH時代の能力の過剰使用によって先が短いことは分かりきっているが、その残りの人生を怯えながら慎ましく暮らすのではなく、皆の記憶に残るくらい鮮烈に生きてやるという意志表明を、少しの間だけ咲き誇って散っていく桜の花に例えたコードネーム。