ワラキア公国の公権を持つ、ドラクレシュティ家の分家の生まれ。
優しい両親と6人の妹弟、多くはないが仕事のできる使用人たちに囲まれ、穏やかな毎日を過ごしていた。
黒い聖母と天使｢アルシエル｣の加護を受けたドラクレシュティの一族は、時折その奇跡の1部を扱える人間が生まれた。(後の世に言うオーヴァード)

ヴァシリッサは一族の中でも特に強い加護を受けており、本家の人間、当主からも覚えがめでたかった。
8歳の誕生日、聖母と天使アルシエルを讃える｢黒い聖母の祭典｣が行われる。当主の代替わりを兼ねた儀式も行われるということで、いつもよりも盛大に催された。
だが祭りは表面上の形式に過ぎず、その裏には残酷な儀式があった。
そのことによってヴァシリッサは家族を失い、一族を滅ぼすことになる。



【真実】
ドラクレシュティ家は輪廻の獣｢アルシエル｣と契約し、栄えた家。当主が代替わりを行うとき、公権とともに輪廻の獣を継承してきた。
輪廻の獣の継承時、残忍な殺戮を好むアルシエルのために｢黒い聖母の祭典｣というおぞましい儀式が行われる。新当主の家族全員を惨殺し、最後に旧当主の首を切って流れた血を新当主が飲むことで儀式は完了する。この儀式の詳細は代々のドラクレシュティ家当主しか知らず、分家の人間に至っては、普通の祭りとして儀式の存在も知らずに楽しんでいる。

ヴァシリッサは分家の人間だったが、生誕時からオーヴァードの能力を有しており、一族の中で最も次期当主に相応しいとして特例で当主候補となる。彼女はアルシエルの器として理想的であり、当時の当主が老齢であったこともあって、ヴァシリッサが齢8歳の若さで｢黒い聖母の祭典｣が行われることになった。
祭典の日、何も知らないヴァシリッサと家族は宗家の屋敷の中庭に連れていかれる。宗家での特別な催しに呼ばれたことに胸躍らせていたが、目の前で家族が惨殺されたことによって真実を知った。
その後場にいた一族を皆殺しにし、身体を乗っ取ろうとしてきたアルシエルも殺そうとしたが、逃げられてしまう。

身体を乗っ取られることはなかったが、非常に適合率の高かったヴァシリッサは、輪廻の獣の不死性の一部を受けてしまう。結果、途方もなく長い寿命と老いることのない身体を得た。




【UGN所属までの流れ】
ただ1人となったヴァシリッサは、一族の名を捨て、シリッサ･クレシュティを名乗るようになる。
そして、シリッサから全てを奪ったアルシエルに復讐するため、世界を探し回った。
手がかりはかの獣の残虐性と、宿主の身体に尾を食む龍の刻印が現れることだけ。
探せど見つけることはできず、行先で様々な体験をしては、領地に帰ることを繰り返していた。
公権や一族に興味も未練もないが、家族の眠る城だけは、ワラキアが他国の手に渡っても絶対に手放さなかった。
いつしかその城は吸血鬼の住む城と恐れられるようになった。
時が経ち、UGNがレネゲイド関連の噂としてシリッサの住む城を調査する。シリッサはこれを排除。それをきっかけにUGNはシリッサの過去を徹底的に調べあげ、交渉を行う。
｢アルシエルの調査、消滅させるための方法の研究に協力する｣ことと、｢シリッサを殺しきれるオーヴァードを探すこと｣を条件に、シリッサはUGNに所属することとなる。
契約が有効なうちは、シリッサは矜恃にかけてUGNを裏切らない。
UGNは扱いの難しい劇薬のような彼女に支部長の地位を与え、首輪をつけた。




【外見】
8歳程度の姿の少女。実際は600歳を超えている。紫の髪、赤と紫の特徴的な瞳をもち、古風なドレスを身に纏う。
育ちの良さを感じさせる気品のある振る舞いをし、いつも薄く笑みを浮かべる。その所作は幼い外見とはちぐはぐに映るだろう。
オーヴァードの能力によって見た目は可変だが、身体の機能は8歳の時のまま固定されている。そのため生殖機能も未発達であり、子供を産むことができない。




【性格】
気分屋で面倒くさがり。他人をからかったり誘惑したりと意地が悪い。
部下の扱いが荒く、さっそく暴君。しかしその分報酬は多く、よく働く人間にはそれに見合うだけのものを与える。

生まれのこともあって気位が高い。UGNに下り、仕える立場であることに屈辱を感じないわけではないが、自らが誓ったことであるため覆す気は微塵も無い。

人というよりは化け物に近い精神性。人としての柔らかい心を当人はずっと昔に捨てた気でいるが、隠すのが上手くなっただけである。
自分の障害を容赦なく消す冷酷さを持つ反面、子どもや素直な人間に少し弱い。

詩的な表現を好み、人や物をよく何かにたとえる。